第3話 ゴールドラッシュ
翌日、エレナは家の横を歩く人間の足音で、目を覚ました。
壁の布を押して外をみると、大勢の人間がゴミ島に向かって歩いている。
「エレナ、何やってんんだ、早く起きな」
ヨナに腕を引っ張られ、外に出されるエレナ。
「お宝だよ。昨日、金持ちの家から宝石箱が盗まれたんだ。それがゴミ島に落ちてんだ。探してきな。見つけて持ってきな」
パレモ、ヨナはゴミ島に向かい、エレナもスラム街を歩く人混みと一緒に交じり、進んでいく。
そしてゲートに来ると、ゴミ島に向かう道に、何百何千という人間が向かって歩いているを知った。
人がゴミ島のゲートを通り、『関係者、職員以外、立ち入り禁止』の看板を無視して、ドンドンと侵入していく。
その絵をバックにTV局のリポーターのジュリアがカメラの前で実況する。
「今、町中の人間が、このゴミ山に集まって来ています。ヴォレオー財閥宅のお屋敷から盗まれた貴金属が10数点、それがこのゴミ山の何処かに埋もれてしまったのです。その中に特別高価な宝石『ペルセウス』があり、それは時価3億するというブルーダイヤのネックレス。それがなんとこのゴミ山に眠っているのです。見つければ一挙に宝の山。人々は夢を求めて、今ここに大挙して押し寄せているのです」
ごみ島一帯をヘリコプターが飛び、各テレビ局が取材に続々と集まってきている。
各ゴミ山や谷底に、探索の人達で溢れかえっており、スコップやヤスで掘り返し宝箱を探している。
今やゴミ島はゴールドラッシュ状態になって、人間が溢れている。
そこの中の一つのゴミ山では、化粧ハコを見つけて騒ぐ女たちがいる。
「私がみつけた」
「私が先よ」
取り合いになり、相手からむしり取り奪った女が箱を開けると、中はカラ。空箱を怒って投げすてる。
それを見ているテレビクルーのジュリアたち、発見を待って待機しているが、あまりの臭さに苛立っている。
「もういい加減に何か出てよ。臭くて死にそう」
ジュリア、ハンカチで鼻を抑えて耐え、カメラマンのピーターはバンダナで鼻から下を覆い、覆面にして匂いを防いでいる。
時間つぶしに風景の実景の撮影を始めるピーター、子供たちが遊んでいるいるのを発見して映す。
「やだ、こんなところで遊んで危ない。なにやってんよ」
ジュリア、子供を注意しに行こうかとしていると、ここら辺に詳しいクルーがいて説明してくれる。
「あ、あの子らはラットですよ。ここに住んでるガキたち」
「こんな所に住んでる人間がいるの?」
「ゴミ拾って、それを売って生活しているから、ラットです」
ピーターが映しているモニターを見つめているジュリア。
「親がこんなところに住んだら、子供がかわいそうね」
「いえ、彼らもゴミ拾って働いていますよ。逆に子供を働かせて遊んでいる親もいます」
「児童虐待じゃない」
「それがここの生活です」
嫌な話を聞いたな。と顔を顰めるジュリア。
人が多く、いつもと違うゴミ島の状況に興奮しているのか、子供たちは、はしゃぐ。
やはり走り回る子供は可愛い。
ジュリア、見ていると腰に縫いぐるみをつけてたエレナが、笑ってはしゃいで走っている姿に目を奪われる。
「あらあの子、可愛い。腰にぬいぐるみつけて」
「どれ?」
カメラマンのピーターは、三脚についたカメラで子供達にズームアップしていく。モニターにアップになるエレナ。
「うん、ここの中では可愛い子だな」
エレナ、走っているうちに、カメラが自分の方に向いているのに気がついて手を振る。
「いいじゃない。・・・ちょっと、追わない?」
「物好きだな。・・・そうだな。ここで臭いの耐えながらじっとしているよりは、ましかな・・・」
待機している各社のテレビクルーたちから外れ、ジュリアとピーターは2人、子供たちを追う。
人のいるごみ山。どこもかしこもゴールドラッシュでゴミを掘り返している。
その隙間を縫って、子供を追うカピーターとジュリア。
それに気が付いて、笑って逃げる子供たち。
「ありゃ、別れちゃった。どうする?」
ジュリア、エレナをターゲットにし、
「あの子だけでいい。あの子を追いましょ」
エレナについていくピーターのカメラ。
進んでいくエレナ。お尻の熊のぬいぐるみが揺れて可愛い。
生ゴミの集積場所に入っていく。しかし進んでいく方向が生ゴミため、生ごみの腐敗ガスが噴出している辺りからドンドンと臭くなっていく。
「匂いがすごいな。これはきつい」
カメラマンのピーターはカメラを担いでいるので手が使えず、鼻の穴にティシュをねじ込み、マスクしていたバンダナを鼻に回して、きつく縛る。
ジュリアもピーターからもらったティシュを鼻につめて、ハンカチで鼻と口にあてがい。少しでも匂いを止めようと努力する。
生ゴミが腐敗して強力な悪臭を放っている中をエレナは、棒でゴミをひっくり返しながら平気で歩く。
奥に進むにつれて、あまりの臭さに宝探しの人間もいなくなり、エレナ1人歩いていく。
しかしそんな臭気地獄の生ごみ廃棄の谷底には、まだ数人の老人が、座っていて、ゴミが落ちて来るのを待っている。
「ここ何?凄い。さっきの数倍強烈」
「これ以上は進むのは無理だ」
うなずくジュリア。
そんな中をエレナ、谷底から少し登り、壁面に転がって落ちているゴミくず・腐っている林檎の芯を拾って、口に入れる
ジュリア、絶句
「今・・・食べたわよね?」
「ああ」
衝撃を受けている2人。
カメラを向けてズームすると、エレナ、ハエが飛ぶ中、そのまま移動しながら、腐った人参切れ端、カップ麺に媚びついた具材、それらを拾っては食べていく。
「・・・・」
ジュリア、言葉がでず、カメラマン・ピーター必死に撮影する。
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