第69話 翌日

翌日早くから俺は病室に向かった。


「本当に可愛いな~…すやすや寝てるな…」

俺はずっと愛娘を見ている。


「沙優は少しは眠れたか?」

「正直ほとんど…(苦笑)

 ちょっとしたら大丈夫かな?って心配になっちゃって…

 まあ3時間おきに泣き出すのもあるんだけど…」


「そうだよな…じゃあ、今は俺が見ておくから少し眠りなよ。」

「うん。そうさせてもらう。

 あなたの顔を見たら少し安心して

 私も眠くなってきたから。」


「ごめんな。沙優ばかり負担かけてしまって…」

「大丈夫だよ…私もう…お母さんだし…

 でもちゃんとお母さんになれるかな…」


「そういう事を考えている時点で立派なお母さんだと思うよ?(笑)」

「そ、そうかな…だったら嬉しいな(苦笑)」


「これから大変だろうけど、一緒に頑張ろう?」

「…うん…そう…だね…」


余程疲れていたのだろう…

沙優はすぐに寝てしまった。

昨日出産して更に寝れてないのだから当然だろう…

しっかりフォローしないとな。


それにしても…優愛は本当に可愛いな…

目元とか口とかパーツパーツが沙優にそっくりだ。

さぞかし将来は美人さんになるだろう。

変な男が近づかないか、今からちょっと心配だな…


そんな事を考えていると数時間があっという間にたったのか

優愛が泣き始めた。

すると、沙優がパッと目を覚ました。


「まだ寝てて良いよ?ごめんな。

 おむつを替えようとしたんだがもたもたしちゃって。」

「ううん。良いの。この泣き方は多分ご飯だから。おっぱいあげないと。」

「そ、そうか…」


「優愛を抱き上げて連れて来てくれる?」

「わ、わかった。」


「あ、首がすわってないからちゃんと首を支えながら抱き上げてね。」

「うん。勿論だ。」


俺は緊張しつつも抱き上げた。

赤ちゃん特有の良い匂いが俺を包んだ。

俺は感動しつつも、泣きわめく優愛を沙優の元に運んだ。


沙優がおっぱいをあげ始めた。

「その…人によっては中々母乳が出にくい人もいるって聞いた事があるんだが…

 沙優はどうなんだ?」

「私は結構出てるね。その辺は心配いらなさそうよ。」


「よしよ~し。優愛ちゃん。沢山飲んだね♪

 もう大丈夫かな?」

背中をトントン優しく叩いてゲップをさせた。


「じゃあ後は…パパの分かな?♡」

「へ!?何言ってるの?パパいらないよ!恐れ多いよ!」


「そ~~う?優愛がおっぱい飲んでいる時に物欲しそうな顔をしてたよ?」

揶揄うような顔をして言った。


久しぶりにこんなやり取りと沙優の少し余裕のある顔を見てほっこりしながらも

「そ、そんな事ないって。」

俺は照れ隠しのように言葉を返した。


「ふ~~~ん…興味ないの?全く?」

「・・・・・・・・・・」


「どうなの?」

首を傾けて可愛く聴く沙優に根負けして


「……いや…興味は…あります…」

俺は心の奥底の絶対に言うまいと思っていた本音をぶちまけてしまった。


沙優は満面の笑顔で

「も~~~う…しょうがない人ね~~~♡

 でもここは病院だから~~~…退院したら…ね♡」





 

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