第64話 耐えた男だ…

ううっ…気持ち悪い…

平均的には8~10ヵ月がつわりのピークだと言われているが

私は12ヵ月…その時はほとんど影響なかったが後から来たって奴だ…


世のお母さん方は本当に凄い。

こんな気持ち悪さと子供を産む苦しみに耐えてお母さんになってるんだ…

尊敬する…


考えてみれば私のお母さんもこんな思いを一人でしてたんだな…

私と違って最愛の人に支えてもらう事もなかったんだろうし…

そう考えると…お母さんは凄かったんだな…偉かったんだな…

こんな思いをした挙げく捨てられたら…

私が強いられていた環境も今にして思えば多少理解できた…


旦那様は本当に良く私を支えてくれている…

私は今がつわりのピークでほとんど動けてない。

それどころか少しイライラしている。

少なからず嫌な思いもしているだろう…

食事・洗濯・掃除・私の話し相手や辛かった時の背中さすり…本当に優しい…


でも掃除だけは酷くてついイライラもあってか文句言っちゃう…

こんなんじゃ嫌われちゃうな…それは嫌だな…

それに…全く夜の生活が出来ていない…辛いよね?…

どうしよう?今の私の状態じゃ全く何もできない…

ちょっと嫌だけど…相談するかな…


・・・


「ただいま、沙優」

「お帰りなさい、あなた」


「ごめんな。遅くなって。お粥とか食べれないか?

 食べるならすぐに食事用意するから。」

「あんまり食欲ないの…」


「りんごとかバナナとか果物だけでも少し食べてくれないか?」

「うん。分かった。頑張る…」


・・・


「ねえ…あなた…」

私は少し戸惑いながら言った。


「どうした?気持ち悪いか?」


「今は大丈夫。…その…ね…私最近イライラしているし…

 仕事している上に色々な事も手伝ってもらっているし…

 あなたもストレスが溜まっていると思うの…

 それなのに…夜の生活が私がこんなだからご無沙汰でしょ?

 それで…その…耐えられないなら…風俗とかも…少しは良いよ…」


「いや…結構だ。」


「え?だって…男の人ってそういうの辛いんじゃないの?」


「はぁ…怒るぞ?

 一番最初に同居した時にも言ったことがあるが、

 他の男はどうだか知らないが、

 俺は好きになった人以外とそういう行為をしたくない!」


「あ…そう…だったね…」


「こんなの沙優の辛さに比べたら、どうという事はない。」


「…うん…ありがとう…」


「そもそもこの程度で耐えられないならば、最初同居した時にとっくに…」


「え?どういう意味?」


「…恥ずかしくて言えるか…」


「教えてくれたら…私気持ち悪いのなくなるかも…」

私は揶揄うように言った。


旦那様は顔を真っ赤にして

「だ・か・ら!最初に沙優と同居した時に…

 最初は保護者目線だったけどドキドキする事は多々あったんだ!

 でも我慢して…

 それでも夏祭り以降からはもう完全に女性として意識しちゃって

 毎日毎日本当は耐えてたんだ!

 何回も布団に入り込まれた時は本当に理性を保つのに大変だったんだ!

 あの時を耐えた男なんだ!俺は!!

 だからこんなの全然大した話じゃない!!」


「へぇ~…じゃあもうその頃から実は私にべた惚れだったんだ?

 吉田さん♡」

私は久しぶりに吉田さんと意地悪に言った。


「吉田さんって…そうだよ!悪かったな!!

 偉そうな事言って女子高生に惚れてたんだよ!!

 俺も糞野郎の一人だったんだよ!」


「そんな事ない!

 あなたは私を無理やり襲わなかったし、抱かなかったじゃん!!

 いつもひねくれていた私を優しく包んでくれて…

 あなたは全然…違うよ?

 …ありがとう…私をずっと大事にしてくれて…今もだけど…」


「とにかく…そういう事だから…俺が辛いとか…そんなつまんない事…聞くな」


「うん。ごめんね。ありがとう…あなた…

 じゃあ安定期に入ったら…楽しみにしててね♡」






 







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