第63話 パパ

あれ?朝から沙優の様子がおかしい…


「ごめん…あなた…ちょっと具合が悪くて…」

「大丈夫か?熱は?」

「37.5度でそれほど高くはないんだけど…気持ち悪くて…だるいの…」


こんなに弱音を吐く沙優は珍しい。


「俺会社休むよ。一緒に病院に行こう。」

「ありがとう。大したことないから大丈夫。

 少し休んだら自分で行くから平気よ。」


「でも…」

「良いから、お仕事頑張って。」


「分かった。必ずタクシー使って病院行くんだぞ?

 今日はなるべく早帰りするから。」

「うん。ありがとう。行ってらっしゃい。

 朝もお昼のお弁当もごめんね。」

「そんなの適当に済ますから、沙優も気を付けてね。」


・・・


本当に大丈夫だろうか?

あんまり風邪ひかないから心配だ。


俺は沙優を心配しつつも本日の仕事を順調にこなして

目途をつけて早帰りした。


・・・


「ただいま、大丈夫か?沙優!」

俺は急いでリビングに向かうと


「お帰り♪パパ♡」

「え?」

なぜか学生服を着た沙優が夕飯の仕込みをしつつ出迎えてくれた。


「何してるんだよ。大丈夫なのか?」

「うん。もう全然大丈夫。」


「で、体調悪いのに何のプレイだ?パパって…これは?」

「ふふっ、懐かしいでしょ?」


「いや懐かしいけどさ…心配してたから…」

俺は少しムッとして言った。

「ごめんね。心配かけて…。

 この格好したのは…初心に返るというか…その…」


何だが少しモジモジしている。

まあ…何か意味はあるようだ…


「まあ何でもないなら良かったよ。」

「とりあえずさ…急いで帰ってきてくれたんでしょ?

 汗かいているようだし、シャワーでも浴びて来て。

 その間にご飯の用意するから…

 それに…ちょっと話もあるの…」


何だろう?まあ朝と違って顔色は悪くなさそうだし。

とりあえず急いで帰ってきたから汗かいているのはその通りだし…

シャワーですっきりしてから話を聞こう。


・・・


シャワーを浴びてさっぱりして出てくると

食卓には野菜炒めとお味噌汁が用意されていた。


「頂きます。」

「どうぞ♪」


俺はいつものように味噌汁を啜る。

「どう?」

「ん?…相変らず旨い味噌汁だ。」


けど…少し今日は味が濃いかな?…


「良かった。…実は少し味が分からなくなっちゃって…」

「え?…何か病気なのか?

 病院で何て言われたんだ?

 薬は貰ったのか?」


「薬はないよ。

 病気でもないから。」


「え?じゃあ…どうして味が?」


沙優は少し顔を赤らめていて小声で言った。

「…3ヶ月だって…」


「え?」


「多分…新婚旅行の時に…

 私たちの…赤ちゃんだよ?

 その…喜んで…くれる?」


ああ…そうか…そうなのか…


「も、勿論だ!やったぁ~~~!

 あ、ありがとう…沙優!!」

俺は沙優を優しく抱きしめた。


「うん…良かった喜んでくれて…」


「当然じゃないか!計画しようって言ったのは俺なんだし!

 何ですぐに言ってくれなかったんだよ!」


「ヒントは出してたよ。だから パパ って…」


「いや、分からないよ。それじゃ。(笑)

 学生服だったし!何かのプレイかと思った!」


「うん。私にとって学生服は…あなたと出会った原点だったから…

 何か…報告はこの格好で直接が良いかなって…」


「そっか~…どっちかな?男の子かな?女の子かな?

 あ、ミルクとかおむつとか哺乳瓶とか…

 色々と用意しなくちゃいけないな…」


「ふふっ、慌てないで。これからゆっくり調べて揃えていきましょう?パパ♡」


「そうだな…暫くつわりが辛いだろうけど…一生懸命支えるから

 一緒に頑張ろうな…ママ!」










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