第51話 結婚式

「ちゃんとしっかり沙優ちゃんを支えるんだよ!」

母は笑ってそう言って、父と共に式場に向かった。


暫くして…


「先輩おめでとうございます♪」

「吉田おめでとう。」

「吉田君おめでとう。」

「吉田、おめでとう。」


「あ、ありがとうございます。」


後藤さん、神田先輩、三島、橋本が祝いに来てくれた。

皆、沙優と最初に同居した時の話を懐かしがって話した。


正直、招待はしたものの橋本以外は来てくれないとも思っていたが

本当に良い縁に恵まれたなと俺はしみじみと感じていた。


「じゃあ、沙優ちゃんの所にも行ってきます♪」

後藤、神田、三島の3人は沙優の所に行った。


「先輩緊張してましたね♪」

「相変らず吉田フィルター全開って感じだね。」

「再開して1年ちょっとでゴールインか…」

後藤がしみじみと言った。


・・・


沙優控え室:


「うわぁ~~~、沙優チャソ奇麗~~~!」

「ありがとう…あさみ」

「沙優…奇麗だよ。幸せそうで良かった。」

「ありがとう…兄さん…」


少し遅れて沙優の母がやってきた。

沙優は蟠りはあるものの素直な気持ちをぶつけた。

「お母さん…産んでくれてありがとう…」


沙優の母は少し涙ぐんでいるかのように

「沙優…幸せになりなさい… ………い ………う」


最期の言葉は小さくて聞こえなかった…

でも…幸せになりなさいと言ってくれたし…


最期の言葉はきっと…

私が…小さい頃から望んでいた言葉…ではないか?

そう勝手に決めた。


・・・


「うわぁ~…本当に奇麗だね。沙優ちゃん!」

「ありがとうございます。ユズハさん。」


「こりゃ、吉田もびっくりだね~。」

「あははは…(テレ笑)」


「…本当…奇麗ね…おめでとう、沙優ちゃん。」

「ありがとうございます…後藤さん…」


・・・


式が始まった…神父さんの言葉を聞きながら、ふとこれまでの事が浮かんだ…


あの時…もう逃げる事に疲れ切っていた…

投げやりに選んでまた酷い目に遭いそうになったら…

それで選り好んで…野宿…

もういっそ…私なんか…

そんな事を考えていた時…

足音が聞こえ…声を掛けられ…顔を上げた…

酔っぱらってはいるが比較的イケメンで、優しい…目で、無精髭の貴方と出会った…


それは…今にして思えば…運命の出会いだった…

貴方は、まるで父親のように、恋人のように…

誰もが見捨てた私を初めて助け、見守り、導いてくれた…

そして再開を約束し…私達は別れた…


2年後…私達は同じ場所で同じ出会い方をした…

ただ今度はお互いに大人だった…

再開後も貴方は私を助けてくれ、心の支えになってくれた…

貴方も心を開き、私に甘えてくれるようになってくれた…

もう二度と離れるのは嫌…貴方の傍にいない人生なんて…もう考えられない…

だから今日…私達は家族になる…


・・・


披露宴もない内々だけの結婚式。

質素ではあるが、

 俺は一生、沙優を守っていこう…

 私は一生、吉田さんについていこう…

お互いにそう思いながら…誓いの口づけをした。


・・・


〇〇の視点:


もしも…

ちょっとした運命の掛け違いがあったなら…

もう少し素直になれていたならば…

もう少し勇気があったならば…

あの場にいたのは…私だったかもしれない…


今更考えても無意味な事…ボーと私は二人の口づけを眺めていた…


カランカラン!

教会の鐘が鳴り響き


沙優ちゃんの手からブーケが放たれた。

ブーケは私の所に吸い込まれるように届いた。


「あっ…、私も…良い人見つけないとね…」


結婚式が終わる頃…私はこのほろ苦い恋に初めて笑って、さよならをした…


第3章 完


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予告 第四章 結婚生活


一応第4章を書くつもりではいますが、あんまり反響が小さい場合はこのまま寝かせてしまうかもしれません。

いずれにしろ、構想練るために暫くお休みします。

☆や♡マークが増えるとモチベーションアップし、アイデアが浮かびやすくなるので

早く続きを見たいという方、ご協力頂けると幸いです。


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