第45話 突然の遠距離恋愛 その3

沙優視点:


新幹線に乗り、仙台→大阪へ


ふぅ…大阪は仙台よりは暖かいと思ったけど…そこまで変わらないな…

ここが今吉田さんが暮らしているアパートか…

毎日終電って行っていたから…0時30分くらいにここで待ってれば良いよね…

それまでは寒いし、暖かい所で時間潰そう…

また体調悪くなったら心配かけちゃうし…


・・・


あ、雪だ…寒いわけだ…吉田さん…大丈夫かな?

早く…会いたいな♡


ドアの前でドキドキしながら待つ…


あ、きっと吉田さんの足音だ♪

また同じ態勢で待って居よう♪


「沙…優…?」


私はまたあの魔法の言葉を言った。

「帰る場所はあるんだけど…とっても遠いの♪

 だから…おじさん…泊め…」


「え?」


全ての言葉を言い切る前に、吉田さんが泣いて抱きついてきた…

「沙…優…うっ…ううっ…くっ…うううっ…」


いつも余裕があると思っていた吉田さん…

仕事が遅れて出張が伸びて…私に怒られて…申し訳なさそうに謝っていて…

何とか私の機嫌を取ろうと和ませていて…

そんな吉田さんが…今…泣いている…


私は…バカだ…

私だってこんなに辛いのに…辛くないわけ…ないじゃない…

仕事で精神的にも体力的にも疲れ切っていて…私にも気を使っていて…

吉田さんはそれでも余裕があると勝手に思い込んで甘えてた…

大丈夫なわけ…ないじゃない…

苦しさ…辛さ…寂しさ…全て呑み込んでたんだ…私に心配させないために…


私は久しぶりに会えた嬉しさと自分の浅はかな考えの自己嫌悪と…

色々な感情が交じり合って…泣いてしまった…


・・・


「す、すまない。兎に角寒いから中に入ろう!」


「…うん…ごめんなさい…

 ちゃんと連絡して来るべきだった…

 心配かけて…本当にごめんなさい…」


・・・


「ぐすん!帰り寒かったでしょう?お湯沸かすね…ご飯は?何か食べたいのある?」


「…もし良ければ…沙優の味噌汁が飲みたい…」


「…うん。うん!作るよ!」


・・・


吉田さんは本当に嬉しそうに味噌汁を啜っていた。

「あ~~~、旨い…本当に旨い…」

少し泣きそうになっている。


私は背中越しに吉田さんを抱きしめた。


「寂しかった…会いたかった…

 でもそれは吉田さんも同じなんだよね…

 ごめんね。傍にいれなくて…

 心配かけてごめんね…」


「沙優…俺も寂しかった…会いたかった…

 来てくれてありがとう…本当に嬉しいよ…」


吉田さんは正面から改めて私を強く抱きしめた。


暫く抱きしめた後、吉田さんは眠そうにしている。


「吉田さん…もう寝て…」


「ああ…ただ…沙優の匂いを感じていたんだ…」


「うん。じゃあ膝枕してあげるから…寝て?」


ほっとしたような顔をして吉田さんは私の膝の上で寝てしまった。


吉田さんの頬に涙が零れている…


「吉田さん…大好きだよ♪」


私も目に涙をためながら、吉田さんの頬にキスをして

ずっと髪を撫でながら、いつの間にか寝ていた。


・・・


吉田視点:


ん…懐かしいほっとする匂い…

沙優は、何かを作っているらしく、台所に立っていた。

 

「あっ、おはよう♪吉田さん♪

 明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします♡」


「おはよう、明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします。」


「これから会社でしょ?胃に優しい雑炊を作ったので食べていって♪」


俺は沙優はを抱きしめながら

「ありがとうな…沙優…」


沙優の作ってくれた雑炊は本当に美味しく、体が元気になった。


・・・


「じゃあ仙台に帰るね…

 離れているけど…ずっとずっと吉田さんの事だけを考えてます。

 体に気を付けてね…」

沙優は涙を堪えているようだった。


「ありがとう…沙優…おかげで元気になった。

 絶対に3ヶ月後に帰るから…待っててくれ…」


「うん♡」

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