第44話 突然の遠距離恋愛 その2

出張の日々は本当に辛いものだった。

毎日毎日午前様…

仕事は好きな方だが…精神的に参ってくる。

それに体力的にも、もう少ししたら俺も30歳…正直キツい。


ただ唯一俺のオアシスは終電で帰った後の沙優とのビデオ通話…

沙優にもかなりの負担をかけてしまったが、

俺にとっては貴重なリフレッシュ時間だった。


一人だったらきっと耐えられなかった…

会えなくても、お互いのその日の他愛無い出来事を僅かな時間でも共有できる…

ただそれだけでどれだけ心が楽になり、助かっているか…

俺は沙優の存在の大きさと有難さを毎日感じていた…


そんな日々が続いたが、ある日それも限界に近づく。


3ヶ月の出張は終わりに近づきつつあったがどう考えても仕事が終わらない。

出張が+3ヶ月伸びる事が明白となった。


「え~~~~~~!3ヶ月じゃなかったの!

 そんな~~~!

 もうすぐ会えるって楽しみにしてたのに~~~(むっす~)」

「本当に申し訳ない…」


「でももうちょっとだから…お互いに頑張ろう!

 そうだ!お土産何が良い?何でも買ってあげるぞ!(汗)」

「そんなんで誤魔化されないもんね~~~(むっすむっす~)」


後もう少し頑張れば…その気力が削がれてしまい、

遂に沙優の体調が崩れてしまった。


「沙優チャソかなり無理してたみたいだよ!今日病院で点滴したよ。」

「ごめんね…吉田…さん…ハァハァ…」


弱々しい沙優の声が聞こえる。


「無理しないでくれ!

 本当に毎日毎日俺の為に夜遅くまで付き合わせて申し訳なかった。

 今はゆっくり休んでくれ!

 もう十分だ!沙優のおかげで大分助かったよ!

 俺は…大丈夫だから!」


俺は沙優が心配しないようになるべく元気な声で喋った。


「あさみ、すまない。せっかく遊びに来てくれたのに…沙優を宜しく頼む。」

「オッケー、吉田っちも仕事頑張って~」


冬休みという事であさみが偶然にも仙台に遊びに来てくれていて

沙優の面倒を見てもらった。

本当に大事な所であさみにはいつも助けてもらって、感謝している。


もう…クリスマスか…沙優と少しだけでも祝いたかったな…

声だけでも…いや…これ以上沙優に負担をかけるわけにはいかない。

俺は仕事を一区切りつけて何とか正月くらいは帰れるようにと懸命に仕事に励んだ。


・・・


沙優視点:


はぁ…ずっと吉田さんを支えるって思っていたのに

支えるどころか寧ろ私があさみに支えて貰っているなんて…


吉田さん…ごめんね…


「あさみ、ありがとう!」

「沙優チャソ、無理しちゃダメだよ?」

「うん。もう大丈夫。これからは自分の体力考慮して気を付けるよ。」


・・・


具合が大分良くなった頃

吉田さんから正月も帰れそうにないというラインが来ていた。


そっか~…

でも会いたい…吉田さんに会いたいな…


目から涙が零れる…


そうだ!…私が正月だけでも会いに行こう♪

私が会いに行けば吉田さんは負担かからないし…少しでも癒してあげたい…


それに…何より私が吉田さんに会いたい!

吉田さんの匂いを…声を…肌を…身体いっぱいに感じたい…


連絡してから会いに行った方が良い?

でも…大丈夫って言っていたし…急に会いに行ってびっくりさせてあげよう♪


待っててね♪吉田さん…

これから貴方の元に参ります…


・・・


吉田視点:


大晦日…

ダメだった…正月も仕事だ…流石に午前中くらいは休み午後から働くか…

というか午前中は起きれる自信がない…

何か…疲れたな…沙優は元気になっただろうか…

俺は今日も終電で帰った。

雪か…どおりで寒いわけだ…

俺は少しフラフラしつつも現在借りているアパートに急いだ。


・・・


アパートのドアの前に誰かが座っている?

何か見覚えのある場面だ…

「沙…優…?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る