第43話 突然の遠距離恋愛 その1
夏休みが明けて、いよいよ式場準備をと考えていた矢先…
会社では大きな事件が起きていた。
どうやら大阪支店で主力メンバだった1人が大病になってしまい、
急遽主力メンバを募集していて、俺に白羽の矢が立っていた。
期間は3か月以上…断る事もできるが…チャンスでもある。
俺は沙優に自分の気持ちを伝える事にした。
「沙優…相談があるんだ…」
「え?どうしたの?吉田さん?深刻な話?」
「仙台に来てそれほど時間が経ってないんだけど…
大阪支社に短期出張の話が来ているんだ。
期間は最低3ヶ月」
「3ヶ月か…」
「そこに行って結果を出せば、ほぼ確実に昇進できるんだ。
これから沙優と…先走りかもしれないけど…
いずれ産まれるであろう子供ののためにも
経済的にもっと安定したいと思っていて…
急な話で引継ぎもあるから
結婚の準備も厳しいので結婚は延期になってしまうけど…
この話受けようと考えているんだが…どうだろうか?」
「う~~~ん…」
沙優は悩んでいた。
「私が会社を辞めて付いて行くって言う選択肢もあるけど…
今後のために私も貯金しておきたいし…
3ヶ月か…引っ越すには微妙だし…
寂しいけど…また遠距離恋愛再開…かね?…」
「そうだな…俺もちょっと寂しいんだけど…」
「…私も寂しい…でも…頑張ってね!
私もここで頑張るよ。二人の将来の為にも!」
俺は短期出張を受ける事にした。
・・・
出張当日
「荷物はそれだけで大丈夫なの?」
「ああ。着替えだけ持っていき、後は必要なものは向こうで買うよ。」
「後…これも…私の匂いのついたハンカチ♪
私がずっと傍にいるって常に感じていてね♪
それとも…パンティにする?」
「ハンカチで良いです!(苦笑)」
沙優は少し涙ぐんで
「…頑張ってきてね…」
俺も胸が熱くなって
「すぐに帰ってくる。
忙しい3ヶ月になるだろうけど…必ず結果を出して帰ってくるよ。
沙優もくれぐれも体に気を付けてな。」
「毎日…毎日少しの時間だけでも電話するから…
ずっと…ずっと貴方の事だけを考えてます。」
「ああ…俺もだよ。」
俺と沙優はお別れのキスをした。
・・・
出張初日。
事態は想像以上の混乱ぶりだった。
初日から前任者の引継ぎ、人員配置、スケジュール再構築と
息つく暇もない程の仕事量で帰ったのが深夜1:00だった。
沙優からラインの連絡が空しく光っていた。
「初日から深夜残業?」
「何もできないけど体に気を付けてね」
「どんなに遅くなっても一言だけでも良いから電話くれると嬉しいな…」
「我儘だね…無理言ってごめんね…でも…寂しい…」
…沙優…俺はダメ元で電話した。
…無理か…声だけでもと思ったんだがな…
ガチャ
「あ…吉田さん…」
少し泣いているような声にも聞こえた。
「あ…沙優…ごめんな…初日から…」
「吉田さん…ビデオ通話に切り替えて?」
「ああ…」
「お仕事、お疲れ様でした」
「ああ…ありがとう。」
「疲れてそう…大丈夫?…これからずっとこんな感じなの?」
「ああ…想像以上に大変だ…初日だからまだこんなもんだが…
暫くは徹夜も覚悟しないといけない…
沙優?…泣いていたの?」
「ふふっ…そんな事ないよ?」
「目が少し赤く見えるぞ?」
「…そんな事ないよ?
あ、分かった。吉田さんいきなり寂しいんでしょ?
だからそういう風に見えちゃうんじゃないの?」
俺には少し無理しておちゃらけて言っているように見えた。
ただそれは彼女なりの気遣いなのだろうと考えて
「…そうかもしれないな…(苦笑)」
「吉田さん…我儘言って良い?
…どんなに短い時間でも…吉田さんの声が聴きたい…顔が見たい。
どんなに遅くても…待っているから…」
「…分かった…俺も沙優の声や顔が毎日見たいから…そうするよ。」
「疲れているだろうに…ごめんね…ありがとう。
さあ今日はもう寝て?」
「うん。夜遅いのに出てくれてありがとう。
沙優の顔見ると元気が出るよ。」
「あ…吉田さん…そんな暇なさそうだけど…
もしもストレスでムラムラしちゃったら…ちゃんと言ってね♪
ビデオで私の淫らな姿公開するから♡
エッチな店行ったらダメだよ♡」
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