第23話 恋心

お昼時…すっかり女子グループと他愛無い会話でランチを一緒にするのが当たり前になっていた。


「皆…好きな人っている?」

さくらが急に踏み込んできた。


遠くで男子達も興味ないふりをしつつも、聞き耳を立てている…


「実は私…西高の先輩が…」

「実は隣のクラスの佐藤君と付き合ってるの…」


・・・


「美穂ちゃんは?好きな人いるの?」

「え…私?私は…」

美穂は恥ずかしそうに…後藤を見つめた。

『『 え!? マジ? 』』

「そう言えば幼馴染だったっけ?」

「うん…何か昔から…ほっとけないというか…暑苦しいんだけど…たまにそれが良いというか…」

『『 きゃ~~~! 』』


・・・


「沙優ちゃんは?好きな人いるの?」

「え?…う、うん…」


遠くで興味なさそうに聞いていた男子も興味津々である。

沙優はすっかりマドンナ的な存在になっていたからだ。


「え?本当に?」

「どんな人なの?」


「えっと…無条件に優しくて…私をちゃんと見守ってくれて、時には叱ってくれて、励ましてくれて…一緒に居ると…とっても暖かくて…居心地が良くて…まるで太陽みたいな人…かな?」

沙優は頬を赤らめて言った。


『『 きゃ~~~ べた惚れじゃん!! 』』


「沙優ちゃんをそんなにメロメロにさせる人って誰?この学校の人?大学生?」

「ううん…もっと年上…かな…」

『『 え~~~!社会人!? 』』


あ~~~やっぱいるよな~畜生~~

あの荻原にそこまで愛されてるって羨ましい!!

男子の心の声が叫んでいた。


「え?もう付き合ってるの?」

「ううん…私が勝手に憧れているの…

 今は遠くに居て会えないけど…絶対に会いに行くの…」

沙優は更に頬を赤らめた。


「え?遠くって…何処の人なの?」

「東京…」


「あ、じゃあ修学旅行の場所だね~。」

「え!?修学旅行って…東京なの!?」

沙優はびっくりして大声を上げた。


「え?知らなかったの?」

「う、うん…」

ドキドキドキドキ…沙優は鼓動の高鳴りを抑えられなかった。


「沙優ちゃん…会いたい?」

「え?」

「じゃあ私達と同じ班になろ?自由行動の時に内緒で沙優ちゃんだけフリーにさせてあげる。それで会いに行けば?」

色々と察した美穂が魅力的な提案を持ちかけた。


沙優は少し涙ぐんだ顔で美穂の手を握り

「お願い!!」

と言った。

「…本当に好きなんだね…沙優ちゃん…了解!任せて~♪」


・・・


その夜沙優はあさみにライン通話した。

「あさみ!!半年後に修学旅行があるんだけど…東京らしいの!!

 会えないけど、こっそり吉田さんの様子を見たいの!!

 旅行が近づいてきたら色々と協力して欲しい!!

 お願い!!」

「沙優チャソ必死になりすぎ(爆笑)勿論協力するよ!」

・・・

「ところでさ…今日これから吉田っちの家に行って、小説感想会やるんだ。

 …このままライン通話切らないでおく?声だけは多少聞けると思うよ?」

「え…う、うん。お願い。あさみ大好き!」

久しぶりに吉田さんの声が聴けるそう思うと、沙優は緊張で手が震えた。


・・・


ピンポーン。

「おう。待ってたぞ」

「悪いね~吉田っち!」

…懐かしい吉田の声がかすかに聴こえる…沙優は涙が出てきた。


「小説読んでくれた?感動だべ?」

「う~~~ん…そうだな~構成は悪くないし読みやすいんだが…ここの表現はもう少し工夫した方が読者に伝わりやすくないか?」

「どれどれ…」


・・・


「ところでさ、吉田っち…会社の憧れの人とはどうなの?」

「ん?後藤さんの事か?何でお前に教えないといけないんだ?」

吉田はビールをぐびぐび飲みながら答えた。


「いや~…やっぱり気になるじゃん…沙優チャソも吉田っちが待ってなくても、大人になったら会いに行くって言ってたんでしょ?」

「…そうだな…まあ…悪い雰囲気ではないんだが…何か俺がな…

 心がついていかないって言うか…」


「何それ?結局沙優チャソを待ってるって意味?」

沙優もドキドキしながら聞いていた。


「…かもな…」

!?…う、嬉しい♪…


「んじゃ、何で待たないなんて沙優チャソに言ったんよ?」


「なんでそんな事お前に言わなきゃいけないんだ?…

 はぁ…俺も酔ったかな…良いか?これは俺の独り言だからな?

 沙優にはさ…輝かしい未来があると思うんだ。

 学校生活は正直大変だろうが、慣れてきたら楽しいって思えるかもしれない。

 それにあいつ美人で可愛いからな…同級生とかにモテると思うんだ。

 それこそ告白されて同級生と恋をするって事にもなるかもしれない。

 その時に…俺の言葉に縛られて…

 あいつが新しい道を進めなくなってしまうのは嫌なんだ。

 俺は…あいつに普通の女子高生になって欲しい…

 普通に笑って、普通に恋して…そして大人になって欲しいんだ…」


「…その結果吉田っちが、沙優チャソにとって思い出になっちゃったとしても?

 それで良いの?吉田っちは?」


「…寂しくないと言えば嘘になるかもな…だけど…なるようにしかならなねえよ…

 それで沙優が幸せになるなら…俺は嬉しいし…あいつを応援するよ。」


沙優は耐えきれなくなってそっと電話を切った。


あの空港での言葉の本当の意味…それを改めて知って、号泣した。

離れている今でも私を見守ってくれている…

自分の感情を押し殺し…私の事だけを考えてくれている…

何でそんなに優しいの?何で?

相変わらず…私の事ばっかり…


勿論…世の中何が起こるか分からない…


あの色気の塊の後藤さんに積極的に迫られたら…

昔の恋心が再燃して神田さんと…

ユズハさんの純粋な気持ちに惹かれたら…


可能性はキリがない。

吉田さんだって人間だし…

でも…私を…待ってくれているの?…嬉しい…

涙せずにいられなかった。


「…会いたいよ…吉田さん…切ないよ…」


・・・


「…待っててね…吉田さん…」


・・・


余談…

吉田の想いを知ったその次の日から

沙優は吉田の為に何かできる事はないかと思い

毎日お風呂でバストマッサージをするようになった。

「…後藤さんには勝てないだろうけど…バストアップしたら…

 吉田さん喜んでくれるかな~♪

 待っててね♪」



 


 



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