第22話 家族との会話

今日は久しぶりに一颯が家に来たので、沙優は夕飯の準備をしていた。

「お帰りなさい。兄さん

 今日は兄さんの好きな料理を沢山作ったのでいっぱい食べてね。」

「ただいま、沙優、ありがとう。」

「お母さん、夕飯できたよ~」


・・・


「うわぁ…僕は、結構有名なレストラン行くんだけど、遜色ないくらいだよ。

 本当に美味しいね~、沙優の料理は。」

「…ありがとう。兄さん…」

「学校生活はどうなんだい?」

「うん。最初は少し距離があったんだけど、

 今ではすっかりクラスメートと仲良くなったよ。

 楽しいって感じてるよ。」

「そうか…それは良かったね。吉田さんにも感謝だね。」

「…うん…」


・・・


「それでね。体育際の時に学級員が盛り上げるために

 『『 行くぞ、皆 気合入れろ! 1・2・3 ・・・ ダーーー(信者)』』

 って言うものだからてっきり皆言うものだと思って

 私も『『 ダーーー 』』って思わず言っちゃったんだけど・・・

 誰もやらなくて・・・本当恥ずかしかったよ。酷いと思わない?」


「ブブーーー」

沙優がそんな一面を持っていると思わなかった一颯は思わず噴き出した。


「ぷっ…クク…」

更に信じられない事に沙優の母親も笑いを堪えていた。


『『 え?? 』』

初めて見る光景に一颯と沙優は思わず目を見合ってしまった。


すぐに母は笑いを隠すかのように冷静な顔を装ったので、一颯は誤魔化すように話題を変えて聞いた。


「アルバイトの方はどうなんだい?」


「うん。気の優しいおじいさんがマスターでね。

 最初はあんまりお客さんが来なかったんだけど、最近お客さんが増えてね。

 私のお陰だって言われて…今度少し時給を上げてくれるみたいなの。」


「へー、凄いじゃないか。」

沙優のウエイトレス姿目当ての男性客じゃないか?

…とは思ったが母さんの前では黙っておこう。

一颯はジトーと沙優を見た。


流石に兄さんにはバレてるか…沙優は目を逸らした。


「ところでもう少ししたら修学旅行じゃないのかい?」


「お金もかかるし…(ちらっと母に視線を向け)何日も家を空けることになるし…私は辞めようかなって思ってる。」


「一生に一度なんだよ?クラスメートとも仲良くなれたようだし、

 お金は僕が出すから行っておいで。良いよね?母さん。」


「好きにしなさい。私は大丈夫だから…」


「…うん。ありがとう…お母さん、兄さん」


「修学旅行何処なんだい?今時だと…海外だったりするのかな?」


「ごめん。行く気がなかったからちゃんと聞いてなかった。

 今度聞いておきます。」

(後に…行き先が重要な事になるのだが…それは先の話…)


・・・


特に他愛無い会話だったが、荻原家のこれまでを考えると十分な進歩だった。

一颯は満足して家を出て行った。


・・・


その夜沙優は、あさみとライン通話した。

「ありがとう。あさみ。あさみの言う通りに困っている人助けていたら

 クラスメートが皆私を助けてくれるようになったよ。」

「そうなんだ!やったね。沙優チャソ!学校生活楽しい?」

「うん。予想よりも随分雰囲気良くなってきたし、楽しくなってきたよ。」

「この間もね…」


「アハハハハハハ!ダーーーって…沙優チャソが?(爆笑)

 超うける~!でも良かった。十分楽しそうだね♪」

「うん。あさみのアドバイスのお陰だよ。」


「今日久しぶりに家族で夕食を食べたんだけど、その話したら

 あのお母さんが笑いを堪えてるの!初めて見たよ!」

「うん。うん。家族関係も悪くはなさそうだし…そこは吉田っちに感謝だね。」


「うん…吉田さんに会いたいな…」

「だから電話して声だけでも聴けば良いじゃん!」

「だからそれはダメだって!」


「あっ、そうだ。今度また小説感想会があるからその時に

 うっかり私がライン通話切り忘れちゃって、偶然にも声聴こえちゃった…

 って言うのはどうよ?」

「え?…そ、それなら仕方ないよね…そんな偶然があるならお願いしたいかも♪」

「アハハハハハハ!じゃあ今度ね(笑)」

「ありがとう~~、あさみ♪」

「まあ私と沙優チャソとの仲だしね♪」


吉田さんの声が聞こえるかもしれない…沙優幸せな気分で眠った。




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