2章 空白の2年間 荻原沙優

第18話 冷たい視線

空港で吉田さんを見送って、私は兄さんに家まで車で送ってもらった。

まずは兄さんのいる前で最初に約束事を決めてしまおう。

吉田さん…私…頑張るからね…


「お母さん…高校卒業まで宜しくお願いします。」


「最初に貴方に言っておくことがあるわ…

 貴方は留年で新学期に2年生から始まるそうよ。

 あの事件から大分日は経ったけど…

 まだまだ世間では忘れられていない…

 学校も貴方を決して良くは思っていない…

 近所の目も…貴方の想像以上よ?

 決して甘い生活にはならないからそれは覚悟しなさい。」


「…はい…」


「お母さん…お願いがあります。

 アルバイトを認めて欲しいです。」


「なぜアルバイトをしたいの?」


「将来の夢のために今から少しでもお金を貯めておきたいんです。」


「…勝手にしなさい。ただ…できるかしらね…

 世間が冷たいっていうのはそういう事も含まれるわよ。簡単ではないわよ?」


「ありがとうございます。そこは何とか自分で頑張ります。

 ご飯はお昼お弁当を作りたいから朝ごはんと昼ごはんは私がやります。

 掃除や洗濯も朝やります。

 夜はアルバイトをしたいからごめんなさい。」


「ふぅ…分かったわ。

 兎に角…学校でトラブルは起こさない!それだけは約束して頂戴!

 言っておくけど…これは貴方の為でもあるのよ?

 どんな理由があるにしろ、貴方が無断で長期休暇したのは事実。

 貴方は弱い立場にあるのが現実よ。

 今度問題を起こしたら学校は貴方を退学にするかもしれない…」


「はい…色々とご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」


昔と違い…私は自分の意思を強く母に伝え、母も強く否定はしない…

それに自分の保身もあるのだろうけど…一応私にも厳しいながらも忠告してくれている…

決して嫌味だけではない。お母さんも少し変わろうとしてくれている?

これだけでも雲泥の違い…吉田さんに感謝ね…


学校が始まるまで時間がある。

まずは、生活用品を整えないと…

お母さんから必要なお金を貰い、沙優は近所で買い物をした。

「ほら…あの子例の…」

「…大丈夫かしらね?…」

ヒソヒソとした小声で、疑うような冷たい視線を色々な方向から感じる。


家に帰り、自分の部屋で

…予想はしていたけど…気分は良くないわね…ずっとこんな目で見られるのか…

お母さんも精神的に参る気持ちもわかる…そこは後で謝らないとな…

きっと学校も…あと2年…か…正直憂鬱だ…

でも…折角吉田さんに色々やってもらったんだ…やれるだけは努力しないと…自分から動かないと…

それに…今の私には希望がある…

楽しい高校生活はあまり期待できないけど…この2年を乗り越えれば…

吉田さん…会いたいな…

不安…孤独…その日は精神的に疲れてしまい、早くに就寝した。


・・・


アルバイトの面接を何回もした。

しかし・・・

「荻原沙優さん?え?君?あの??…申し訳ないけど…うちでは雇えないな」

「申し訳ないが、他を当たってくれ」

「あ、ちょっと求人要求にミスがあったようだ、高校生は雇えない」

どういう経緯か知らないが、悪意ある噂が先行し、何だかんだ理由をつけて私は拒否された…

どんな理由であれ…一度普通の道を外れてしまった私に対して、社会は私を簡単には認めてくれない…

いつしか後藤さんにも言われた言葉だ…

そんなに甘くない…分かっていたことだ…けどはっきり現実を突きつけられるとやっぱり辛いな…

でも…諦めない…吉田さんが待っている!


沙優はショックを受けながらも、強い意志でバイトを探し続けた。

52件目…「いいよ?何か孫が来たみたいだ(笑)」

気の優しそうなおじいさんに面接で合格と言われた。

ちょっと古びた喫茶店…おじいさんが一人で切り盛りしていたが

腰が痛いらしく少し助けを求めていた。

時給は安いが、ちょうど家と学校の中間地点、

私はウエイトレスとしてアルバイトすることにした。


・・・


時は過ぎていよいよ学校が始まる日…

朝早く起きて、掃除、洗濯、朝食、お弁当の準備をテキパキと行った。

「…行ってらっしゃい」

え?お母さんが?沙優は予想外の言葉にびっくりした。

「あ、ありがとう。行ってきます」

…お母さんも変わろうとしてくれてるんだ…

「よし!」

沙優は両頬を叩いて、気合いを入れて登校した。


「…え?あの子…」

「嘘でしょ?学校辞めたんじゃなかったの?」

「関わらない方が良いよ…」

「ちっ…あんなのと同じ学校だとこっちまで悪く見られる…辞めれば良いのに…」

近所と同じく、相変らず・・・悪意ある噂を信じ、ヒソヒソと悪口を言うもの

何も言わず冷たい視線を送るもの・・・


想像通りではあるものの最悪の学校生活が始まった。


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第二章はPVが1000になってから本格的に執筆します。

最初だけは書いてしまったので、執筆中だけではあまりにも読者に失礼だと思い公開します。

この後の話の続きは、PVや応援のご協力お願いします。

自分自身のモチベーションのためにも。

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