第14話 新たな旅立ちに向けて・・・ 沙優回想 その1

私はあさみと久しぶりにカラオケに来ていた。

そしてここ最近の事の経緯を話した。


あさみは静かに聞いて、抱きしめてくれた。

「沙優チャソ…辛かったね…怖かったね…」


沙優も涙を流しながら

「うん。うん。…怖かった。

 何より吉田さんがどうにかなっちゃうかと思って…とっても怖かった」


・・・


「それから…おめでとう!吉田っちから告白されて…良かったね」


「うん…ありがとう。正直私なんかで良いのかな?って…未だに思っているんだけど…」


「…でも吉田っちが沙優チャソと一緒にいたいと言ったんでしょ?

 吉田っちは芯の強い男だよ?

 その吉田っちが覚悟を決めて一緒にいて欲しいって泣きついたんだから…

 沙優チャソも勇気を出して、吉田っちの気持ち…尊重してあげて。」


「うん…そうだね…」


・・・


一息ついてあさみが話始めた。

「しっかし…何処にも行かないでくれ~、一緒にいてくれ~って…

 吉田っちは沙優チャソにべた惚れじゃん!

 ちょー受けるんだけど(笑)そんなタイプだった?」


「…うん♪

 凄く嬉しかった♪」


「もう2年も待って相思相愛だから…愛し合いまくりか~?」

あさみはおちゃらけて言った。


沙優は顔を真っ赤にして

「…うん…結ばれた…」


あさみは自分で聞いておいて真っ赤になってしまった。


一息おいて冷静に・・・

「沙優チャソは…いつから吉田っちが好きだったの?」


私は… 沙優回想


最初会った時、優しそうなおじさんだなって思った。

いつもと同じようにエッチを条件に泊まらせてもらおうとしたら

ガキに興味ないって言われた。

私…結構奇麗だって言われるのに…

かっこつけているけどちょっと誘ったらエッチ望むくせに…

あ…寝ちゃった…お味噌汁飲みたいの?…エッチよりも?

後藤さん?振られたんだ…ちょっと可哀そう。

仕方ないから朝、お味噌汁作ってあげよう。


布団はないけど…眠ろう…

朝だ…下着は大丈夫…本当に襲わないんだ…まだ寝てる…

お味噌汁作ってあげよう…


自分で味噌汁作って欲しい言ったのに…何で怒るのよ。

振られて機嫌が悪い?仕方ない。私もおっぱい大きいから慰めてあげるよ。

あれ?この人何で拒否するんだろう?


説教が始まった…言葉はぶっきらぼうだけど…

あっ、私の目をきちんと見てくれている…

私を物扱いじゃなく…人間として見てくれている…

優しい…目…


名前聞かれた…

「沙優!」あっ…思わず本名言っちゃった…本名バレちゃった…


私…何で本名言っちゃったんだろう…何で?…

真面目そうだし…警察呼ばれて…もう逃避行も…終わりかな…


ここ出て行ったら?いつものように上手くやって宿探すだけだよ…

そんなに追及しないでよ…聞かなくても…分かるでしょ?


バカバカって言われた…そんな事…私が一番分かってるよ…


え?根性を叩き直す??え?私…居てもいいの?家事だけで??

…でもそんな事ないよ。そのうち…身体を求めるに決まってる…


あれ?何日か経ったけど…全然身体を求められない…


あ、料理褒められた…掃除も洗濯も褒められた…

当たり前の仕事なのに、物であるはずの私に「ありがとう」って…

煙草も外で吸ってくれる…今までの人は私が居ようと構わず吸ったのに…

そんなに気を使ってくれなくても良いのに…そう言ったら怒られた。

基準を低く持つなって…


優しい…本当に…何でこんなに優しいの?


服?布団?携帯?何で?私…何も返せないのに…どうしたら良いの?

布団…気持ち良い。

ちょっとからかっちゃおう。


「吉田さん、一緒に布団で寝よ?」

「お前、誘ったら追い出すって言っただろう!」

「別に一緒に寝るだけでエッチするなんて言ってないじゃん!

吉田さんのエッチ~♪」

「抱き枕にどう?私柔らかいよ?」

ふふっ、楽しい♪吉田さん本当に優しいな~♪


「お前さ、笑っている方が可愛いぞ。」

え?可愛いって言われたことは何度もある…

でもこの可愛いはこれまでとは全然違う…

何だろう…恥ずかしい…嬉しい…

「何、口説いているのよ!」

私は恥ずかしさや嬉しさのあまり憎まれ口を叩くのがやっとだった…


信じられないくらい穏やかな日々…

私の中でどんどん吉田さんが大きくなっている気がする…


本当に優しい…今までの人とは全然違う…

でも何だか逆にちょっと不安…


吉田さん毎日毎日ご飯美味しいって食べてくれる…嬉しい♪


後藤さんと…食事か…

吉田さん…早く…帰ってこないかな…


あれ?ご飯を一人で食べるなんて何でもなかったのに…味気ない…


帰ってきた♪嬉しい♪あれ?後藤さんと食事したのに元気ない…

よし。ハグしてあげよう♪えい♪

「女子高生のハグで元気出た?お風呂入ってさっぱりして嫌な事忘れなよ♪」

吉田さん…少し気が紛れたかな…


・・・


家事も慣れてきて…暇だな…私いつまでここにいれるのかな…

デメリットが大きくなったら私追い出されちゃうよね…いつものように…

例えば恋人…吉田さん優しいから恋人なんてすぐできるに決まってる…

そしてら吉田さん…その人とエッチするのかな…

私とはしないくせに…

あれ?何かモヤモヤする…何で?


同僚と映画?

同僚って後藤さんじゃないよね…女の人?

肉じゃが美味しくできたのにな…


味気ない…

「沙優ちゃん…」ゆ、結子!

はぁはぁ…また思い出しちゃった…一人だと考えたくない事考えちゃう…

はぁはぁ…吉田さん何で早く帰ってきてくれないの?


吉田さん!吉田さん!何処?吉田さん!

あ…見つけた、吉田さん!

あ…可愛い女の人…吉田さんに抱きついている?

何?あの顔…何、あの顔!!…私にはあんな顔見せたことない!!


…何動揺しているだろう…私…

別に吉田さんが誰と抱き合おうと…私にはどうでも良いじゃん…


あれ?…何で涙が?あれ?…あれ??…嘘でしょ?

私嫉妬しているんだ…何も知らないあの人に…

こんなに薄汚れた身体のくせに…

生意気にも吉田さんを独占したい、好かれたいって思ってるんだ…


もう出て行かないといけないのかな…

こんな居心地の良い場所…ないよ…

これから…どうしよう?…


あ、この女の人…さっきの。

「無条件に優しい人たまにいるよね。

 何で優しいの?って考えるんだけど全然わからなくて

 気づいたらその人に夢中になっちゃうの」


吉田さんの事だ…この人…やっぱり、吉田さんの事好きなんだ…

そっか…優しいもんね…気持ち…分かるよ…


「全てさらけ出せばよいよ。私はこんな人間です。

 それでも一緒に居てくれますか?って

 きっとその人、沙優ちゃんを信じてるんだよ」

この人も…優しいな。みずしらない女子高生になんでこんな…

でも、本当にそうだ…帰ろう…そして…吉田さんに話してみよう。


「吉田さん…あのね…その…私、一応女の子なんだ。

 私…高校生にしては…胸大きいと思うんだ。

 他の男の人はね!皆…私とエッチしたがったよ?

 吉田さんは私とエッチしたくない?

 そういう事少しも考えないの?何も興奮しないの?」


ああ嫌だ!!…こんなこと言いたいんじゃない!!

捨てないで…私を捨てないで…私を…見て!!


「家事なんて誰でもできるよ。

 吉田さんが優しすぎて…どうしたら良いかわかんなくなっちゃった…

 吉田さんさえ良かったら…私を抱いてよ!!そうすれば少しは…」


「お前は可愛いし、高校生にしては肉付きも良い。料理もできて最高だ!

 でも俺はお前に恋してない!お前は吉田さんが良ければって言ったな!

 だから答えてやる。嫌だ!拒否する!分かったか!」


うん…でも…私はどうしたら良いの?…


「お前は何も与えてないって言ったけど…

 毎日ご飯作ってもらって、二人で他愛のない会話して…

 それだけで俺はこの家が居心地が良くなった。

 お前が来てくれて、俺の生活は楽しくなったよ。

 だからただ居てくれるだけで良いよ。

 俺はみじめで寂しいおっさんだから(笑)」


…そんな事で良いの?…私はここに居て良いの?

…何の見返りもなく?…

何でこんなに優しいんだろう?

何でこんなに暖かいんだろう?

とっても安心する…


お父さんが居たら…こんな感じなのかな?

恋人が居たら…こんな感じなのかな?


「無欲で寂しいおっさんだ…」

私は吉田さんの優しさに触れたくて…

縋りつくように吉田さんの腕を掴んだな…

「…ありがとう…」

「お互い…みじめだね…可哀そうだから…一緒に居てあげる♪」


ありがとう…ありがとう…吉田さん…

私、吉田さんが…大好きだよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る