第13話 新たな旅立ちに向けて・・・ 序章

一夜明け・・・二人は気恥ずかしそうに見つめ合った。


「好きな人と結ばれるって…こんなに心が満たされるんだね♪

 2年前から…心から抱かれたいって思っていたから…とっても幸せ♪

 吉田さんの温もりを奥まで感じて…とても良かった♪」

吉田の顔は真っ赤になる。


「沙優も…とても奇麗だった…声も可愛かったし…」

沙優の顔も真っ赤になる。


二人は艶やかな表情でキスを何回も交わす。


「あ、痛つ…」

「あ、ごめん。まだ痛いよね。無理しないようにしようね。

 私今日帰るの辞めて有給とって看病するよ?」

「いや…多少腫れているだけで大したことないから…大丈夫」

二人はシャワーを浴びて、朝食を取った。


「とはいえ、東京は危険かもな…で一つ提案なんだが…

 沙優…一緒に仙台に行ってくれないか?」


「え?会社はどうするの?私のせいで会社を辞めるの?」


「そうじゃないよ。実は仙台支社から神田先輩が来た代わりに、

 東京支社からも仙台支社へ誰か異動することになった。

 優秀な人材を異動することになり、俺の名前が挙がっていたんだ。

 俺はそれを受けようと思う。」


「ごめんね…」


「いや本当に今回の事は偶然なんだ。

 俺にとってもチャンスの話だったから以前から迷っていたんだ。

 良い機会だと思ってさ」


「うん。それで良いならば…私は吉田さんに何処までもついていくよ。」


「仙台支社はうちの会社もあるから、お兄ちゃんに言えば、

 私も会社仙台支社にいけると思う。」


「そうか…良かった。」


「じゃあ、お互いに動こう!」


新天地に希望を抱き、吉田と沙優はそれぞれ準備を進めることにした。


・・・


引っ越しの時期になった。

吉田の部屋を整理していると押し入れの奥から「年上のお姉さまの誘惑」という本が出てきた。


沙優はじっとそれを眺めて考える。

吉田は慌てて

「す、すまん、すぐ捨てるから!」


沙優はじっと吉田を見つめて

「別に怒っているわけじゃないよ?

 ただ…吉田さんが初めてお付き合いしていた…神田さん

 会社で5年間想っていた…後藤さん

 考えてみれば皆年上だよね?そしてこの本も…

 私は10歳近く年下だし…どうしたものかと…」


「い、いや…沙優には沙優の良さがあって…」


「私の過去で…吉田さんには迷惑をかけたし、今でも多分苦しめている…

 それについて吉田さんはもう謝るなって言ってくれた。

 だからもう謝らないし、後ろ向きに考えない。

 で前向きに考えようと思うんだけど…

 吉田さんが望んでいることを私がやるのが一番かなって思ったんだ。

 私にしかできない私の良さで…吉田さんを癒してあげたいの♪」


「でね…私思うんだけど…

 吉田さんが年上の人に惹かれる理由って

 結局包容力を無意識に求めているんじゃないかな?

 ほら、吉田さんって誰に対しても優しいし、頼られてるし、

 でも…たまに甘えたくなるのかな?って…」


「え?…どうだろう??…自分でも良く分からないな…」


「そう考えると、年齢は関係なくって、要は包容力があれば良いのかな~って」

沙優はにっこり笑って、正座して、吉田に言った。


「吉田さん…おいで♪

 私が抱っこしてあげる♪」


吉田は顔を真っ赤にして

「な!!!いやいやいや…」


沙優は大人びた微笑みをしながら

「いいからおいで♪

 私がしてあげたいの♪」


吉田は顔が更に真っ赤になりつつも・・・沙優の色気に負けて

ふらふらっと沙優に抱きついてしまった。


「お、重い…だろう?…」

「全然♪

 重くないよ♪

 良いから体重かけて♪」


吉田は体の力を抜いて体重をかける。

沙優は吉田の背中を優しくトントン叩きながら

まるで赤ちゃんをあやすかのように…

「よしよし。これからは毎日毎日抱っこしてあげる♪

 そしていつも大好きだよって言ってあげる♪

 もう…絶対に寂しい思いさせないよって…何回も何回も言ってあげる♪」


ああ…沙優の匂いだ…良い匂い…暖かい…柔らかい…安らぐ…

そう感じていると、沙優は耳元で優しく


「このまま抱っこでも良いけど…ちょっとムラムラしちゃったら…キスして…」


頬をうっすらと赤くして、艶らしい顔で

「そうすれば…私もそれで分かるから♡」


俺は頭がぼーっとなり…キスをして…沙優の胸に顔埋めて…

それからは覚えていない…

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