第11話 懺悔

吉田さんはぐっすりと寝てしまった。

それはそうだ…あんなに殴られて…全部…私のせい…

本当嫌になる…自分が自分で嫌になる…


私が…私自身が最愛の人を苦しめている…


私が自分の気持ちを飲み込み、会いに来なければ…

吉田さんは…後藤さん、神田さん、ユズハさん…

いずれかの方と上手くいっていたかもしれない…


皆素敵な女性…私なんかじゃなくても…

むしろ私よりも吉田さんを幸せにできたかもしれない…


でも私は自分の気持ちに嘘はつけなかった…


今最愛の吉田さんを苦しめているのは…結局…私…


私は少し大人になった。

大人になったからこそ…あの頃の無責任さが理解できるようになってきた…


私は…何てことを…


あの頃は逃げたくて…ただ逃げたくて…生きるのに必死だった。

行為そのものはほとんど覚えていない…

一応最低限のマナーを守る人を狙ったし…妊娠の可能性は低いように過ごした。


「さ、沙優…」吉田はうっすら涙を浮かべてうめき声をあげた。

…苦しい?苦しいよね…


…ごめんなさい…本当にごめんなさい…

最愛の貴方を苦しめて本当にごめんなさい…

私なんかが貴方を好きになってしまってごめんなさい…


貴方の傍は…とても眩しくて…暖かくて…居心地が良くて…

まるで太陽みたい…


本当に…本当に…大好きなの!…どうしようもなく…大好きなの!

だから…私はどうしても諦められなかった…


私は…身勝手な女…そこはあの時から変わってないのかも…

私は年齢的には大人になった…だから…良いんだよ?

好きにしてくれて良いんだよ?

でも…貴方は相変わらず感情に任せて私を抱いたりはしない…


「うぅ~…切ないよ~…離れたくないよ~

 この2年間ずっとずっと…想っていたの…

 貴方のことだけをずっと考えていたの!

 貴方の吐息…匂い…温もり…どんなに待ち望んだことか…

 貴方のことがどんなに好きか…分かる?」

沙優は静かに泣いた。


でも貴方を苦しめるのはもっと嫌!絶対に嫌!

貴方が苦しむくらいならば…私は…


私は便箋に

「さようなら。私なんかを恋人にしてくれて・・・ありがとう」

そう書いて・・・吉田の頬にそっとキスをした。


そして、名残惜しそうに吉田をじっと見て・・・

静かにアパートのドアを閉めて出て行った。


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