第9話 告白

すっかり明け方近くまで話込んでしまった女性陣。

仮眠をとって、チェックアウトギリギリの11時にホテルを出た。

そこには沙優を迎えに来た吉田の姿があった。


「吉田君…お幸せに…」

「吉田、沙優ちゃん、凄く良い子じゃない。大事にしなよ。」

「先輩!早く告白して下さいね!!」

それぞれお別れと激励の言葉を残し、後藤、神田、三島は去っていった。


「え?…」吉田はポリポリ頭をかき、3人を見送った。

「さ、沙優…何を話したんだ?」

「それはね…」

沙優は吉田をじっと見つめて

「内緒♪」

沙優はいたずらっぽい表情で笑った。


・・・


吉田のアパートに着いた。

「ふぅ~、楽しかったけど、あんまり寝てないから疲れちゃったな~」

「じゃあ少し寝たらどうだ?俺は夕飯の用意をしておくよ。」

「え~~、私が作りたいよ~~」

「お前のレシピノート見て少しは頑張ったんだ…練習の成果を見てくれよ」

「そーなの?うん。分かった。

 じゃあお言葉に甘えさせていただいて私は少し寝かせてもらうね♪」

「あ、私の可愛い寝顔を見て…ムラムラしちゃったら…

 しょーがないから襲っても良いからね♪」

沙優はちょっと頬を赤らめて言った。


「疲れて寝てるんだからそんなことしねーよ。

 それにまだ返事…ごにょごにょ・・・」

「ふふっ。お休みなさい♪」


・・・


トントントントン、ジューーーー

料理の音で沙優は目が覚めた。

「しまった。寝すぎた!ごめん。ごめんね。」

「いいよ。いいよ。もう少しで料理できるからもう少しくつろいでいてくれ」

「あ…下着が乱れてない…襲わなかったの?」

沙湯はにへらっと笑いながら言った。

「し、しつこい…襲うわけないだろう!!」

吉田は苦笑いを浮かべて言った。


料理が出来た。

「頂きます♪」

「あ…割と美味しい♪凄いね~吉田さん頑張っただね。腕上げたね♪」

「そ、そうか?じゃあ沙優のレシピノートが優秀なんだ(笑)」

「うん。これなら全然後藤さんは当然として、神田さんよりも」

「へ?ホテルで料理したのか?」

「いや~…それがね♪」


沙優は吉田が家庭的な女性が好きであろうという予想の元、

皆で料理勝負をしたことを話した。


「それでね。私一番料理上手かったんだよ♪皆から上手いって認められたの♪

 同棲してた時に私家事なんて誰でもできるって言った事あったけど…

 意外と私の家事はレベルが高かったんだなって自信になったよ♪」


「うん。それは本当にそう思う!沙優は凄い!料理が本当に旨い!

 家に帰ってくる時の1つの楽しみだったよ」


「そ、そうなんだ…嬉しいな♪」


「しかし…後藤さんってそんな料理酷いんだ…」

吉田は苦笑した。


「はは…流石にね…、私を選んで…良かったでしょう♪」

沙優は少し自慢げに話した。


「沙優…あの…さ…今日の夜…付き合ってくれないか?

 例の以前あさみに教えてもらった丘にさ…行かないか?」

吉田は少し緊張気味に言った。


「うん…ご飯食べ終わったら…行こう♪」

沙優はちょっとドキドキして返事をした。


・・・


食事が終わり、あの丘に行った。

静かで少し冷たい風が吉田と沙優を包んだ。

「奇麗な星空だね~」

「本当にな…あさみに感謝だな…」


・・・


風の音が響く。時間が静かに流れる。

不意に吉田は緊張した顔で沙優を眺めた。

沙優はドキッとして、艶やかな表情で吉田を見つめた。


・・・


ドキドキドキドキ、心臓の音が煩かった。

「荻原沙優さん…俺と結婚を前提に付き合ってください!」

時が止まったように感じた。


沙優の頬がすぅーと涙で濡れた。

「あんなことがあったけど…それでも…こんな私で…良いの?」

「過去は…関係ない。お前が良いんだ…」


沙優は顔をぐしゃぐしゃにして

「…はい…私で良ければ…宜しくお願いします」

胸がいっぱいになってそれ以上お互いに何も言えなかった。

「沙優…」

吉田と沙優は初めてキスをした。


・・・


翌日沙優が帰る日

沙優は真剣な表情で

「私…あんなことがあったけど…大丈夫な体だから…」

そっとブライダルチェックの証明書を吉田に差し出した。


沙優は飛行機で帰っていった。


今回の別れも切ないけれども

初めての遠距離恋愛・・・か・・・

確かな繋がりがある分・・・少し心が楽だった・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る