第4話 それぞれの反応(三島柚葉)

次の日後藤さんは会社を休んでいた。

三島はその状況にピンときた。

お昼休みに直接吉田の元に行き

「先輩、今日定時上がりにして映画見に行きません?」

「お前大事なプロジェクト任されたばかりだろ?

 定時上がりなんて大丈夫なのか?」

「い・い・か・ら 行きましょうよ~。こっちはそれどころじゃないんです!」


三島の剣幕に押されて

「わ、わかった」

吉田は狼狽えて返事をした。

「では後で~」


定時が終了し、三島と一緒に映画館まで歩いた。

「これこれ。この映画先輩と見たかったんですよね~」

「そう…なのか?恋愛…ものか?」

「まあまあ深く考えずにとりあえず見ましょう~♪」


ひょんなことから同居した男女が、お互いを好きあっているのにも関わらず

事情があり、最後別れる。再開の約束はしないで。

ちょっと違う所もあるけど、俺と沙優みたいな・・・そんな内容の映画だった。


「うぅ~、何で~、そんなに好きなら一緒にいれば良いじゃん~…

 運命の人だったのに~うぇーん」

映画の内容に三島は号泣である。


俺は映画を見ながら…沙優のことを思い出していた…

あの当時…本当は…色々と言いたい事があったんだけど…結構飲み込んでいたな…

帰って欲しくなかったこととか…

それに…あいつ可愛かったし…たまに色気も凄くて…

何回欲情しそうになったことか…

今にして思えば…本当色々とよく耐えた…当時の俺ナイス!


「そういえばこの映画…何となく先輩と沙優ちゃんの関係に似てません?」

「まあ…多少は似てたかもな…」

そんなことを言いながら・・・レストランに着いた。


「あ~美味しい♪ここのパスタ食べたかったんですよ。」

「まあ…旨いな」(沙優のパスタの方が旨いけど。と思いつつ)

「ふぅ~、お腹も膨れたし…じゃあ戦おうかな♪」


三島はキリっとした顔で直球で聞いてきた。

「今日後藤さんが休みましたよね?

 それって…先輩は、後藤さんを振ったんですか?」

「え?…いや…まあ…後藤さんの想いに応える事はできないって言ったよ…」

「そうですか…それはやっぱり…沙優ちゃんですか?」

「…正直まだ自分でも分かってないんだ…ただ、後藤さんに告白された時に

 沙優の言葉が浮かんだのは確かだ」


三島は呆れて

「はぁ~…そこまでわかっていながら自覚がないって…」


少し頬を赤らめながら自信なさげに

「そこまで聞くと…無理なのかなとも思いますが…

 私自分でチャレンジしないうちに負けるの嫌なんで聞きます。

 私も先輩が好きです。先輩を運命の人って思ってます。

 私は…チャンスありますか?」


吉田は申し訳なさそうに

「お前の好意は嬉しいと思うけど…(自然と沙優の顔が思い浮かんだ)」


三島は急に大声で

「はい。今その瞬間に誰を思い浮かべましたか?」


吉田はビクッとした。

「誰か思い浮かんだならばその人が先輩の運命の人です!」

「!?」

「やっと自覚しました?沙優ちゃんが思い浮かんだでしょう?

 全く何が悲しくて恋のキューピットなんて!

 いい加減しっかり自覚して下さい!

 今日は先輩にとことん付き合ってもらいますからね!」


やれやれと思いつつも、三島の純粋な想いに応えられない申し訳なさと

自分の沙優への想いの自覚させててくれた感謝と共に

深夜まで三島に付き合うのだった。

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