第2話 再開 その2
「朝に…なっちゃったね…
色々と話したかったんだけど…胸がいっぱいで…
中々話せないものだね。」
「…そうだな…今日が休みで良かった。
そういえば会社は札幌勤務か?」
「うん。20歳になって大人になって…
吉田さんに一刻も早く会いたかったから、週末を利用して東京に来たの♪」
「そうだ。久しぶりに、朝食作ろうか?何が良い?」
「味噌汁…沙優の味噌汁が飲みたい…」
「うん。中身はどうする?」
「ん~~、ネギが良いな。」
「ネギ、ネギか。了解♪」
トントントントン・・・「ふ~んふんふん♪」
旨そうな匂いが・・・懐かしい雰囲気が・・・部屋を包む。
「ああ~…この空気…本当に懐かしい…落ち着くな~」
心の中で吉田は呟いた。
「できたよ。吉田さん♪久しぶりに朝食一緒に食べるね♪」
「ああ。お前の飯は…旨かったからな…嬉しいよ。ありがとう。」
沙優は頬を赤らめながらお皿を並べた。
「あ~~~染みわたる…本当に旨いな~、お前の味噌汁は…」
吉田は少し泣きそうになった。
「今日は何処か行きたい所があるか?付き合うぞ?」
「本当?嬉しい!でも場所は何処でも良いの。
そうだな~…静かな場所で吉田さんと…手を繋いで…歩きたいな♪
あの花火大会の時の土手でも良いかも♪簡単なお弁当も作るよ♪」
「え?そんなんで良いのか?買い物とか…東京名所とか…色々あると思うが?」
「私は買い物や東京見物がしたかったんじゃなくて…
吉田さんに会いに来たから…
吉田さんの温もりを…感じたいの♪2年分のね♪」
沙優のまっすぐな気持ちに吉田の顔も赤らむ。
ジューーー、「ふ~んふんふん♪」
お弁当の準備ができた。
「じゃあ行くか!」
「うん!吉田さん…手…繋いで?」
吉田は恥ずかしながら手を繋いだ。
「ちょっと違うかな?」
沙優は覗き込むように吉田を見ながら、恋人繋ぎに手を繋ぎ変えた。
沙優の柔らかい手の感触が吉田を優しく包み込む。
吉田は頬を赤くしながらも沙優の手を受け入れて、土手までゆっくり歩く。
「そろそろお昼だね。お弁当食べようか。おにぎりの具は鮭だよ♪」
沙優はにっこり笑っておにぎりを吉田に渡した。
「ありがとう。」
沙優は卵焼きを箸にとり
「はい。吉田さん。あーーーん♪」
「え?流石にそれは…自分で」
「ダメ?私がしたいの…」
吉田は顔を真っ赤にして黙って受け入れた。
「う、うまっ、お前…本当に料理上手いな!家事力高っ!」
沙優は恥ずかしそうに答えた。
「ありがとう♪」
お弁当を食べ終えてから歩いた。
「あの時の花火奇麗だったね♪楽しかったね♪」
「そう…だな…」
カツカツカツカツ・・・そしてあの場所で足を止めた。
「あの時…この場所で…吉田さんは言ったよね?
『『お前…本当に…帰るのか?』』って…
私が、吉田さんは私に帰って欲しくないの?って聞いたら
その後…やっぱりお前は帰るべきだって…
あの時…本当は…どう思ってたの?」
サーーー風が舞う。
吉田は目を閉じて答えた。
「帰るべきだと思ったのは本当だ。それがあるべき正しい姿だと思ったし…
ただ…お前がいなくなったら寂しいな…とも思っていた…
離れたく…ない…って気持ちも…あったかもしれない…
でもそれは完全に俺のエゴだったから…
…今日は…何時に帰るんだ?」
「吉田さんは…私が帰っても…大丈夫?…私はもう…大人だよ?」
「分からない…また寂しいって思うかもしれない…
でも、まだ考えが纏まっていない…
そんな状況で、以前と同じ同居はできないよ。」
「…そっか…うん。21時の飛行機かな」
「じゃあ、そろそろ帰るか…」
「…うん…」
吉田のアパートに戻ってきた。
「そういえば吉田さん?
私、料理のレシピノートと一緒に
私の匂いを込めたシャツを置いていったんだけど…有効活用してくれた?」
沙優は小悪魔的な笑顔で尋ねた。
「いや普通に着たよ。
だって…私の匂いって言っても…うちの洗剤の匂いだったじゃねーか」
沙優はきょっとんとして
「それもそうだね♪…じゃあ代わりに今回はこれを置いておくね♪」
吉田にハンカチを差し出した。
「離れている間も私の匂い…感じていてね♪」
「あ…でも…ハンカチよりも…ブラジャーやパンティの方が良い?」
「何に使うのかは…聞かないけれども♪」
沙優はいたずっらっ子のように舌を出して笑った。
「こ、これでで十分だ!」
俺は顔を赤くしてハンカチを受け取った。
バタン。アパートのドアを閉め、歩き、
ガタンガタン・・・俺たちは電車に乗って空港に向かった。
「なるべく早く…返事ができるようにするよ…」
「うん…でも返事がなくても…また来ても良いかな?」
「もちろん、来てくれたら嬉しいよ」
沙優は顔を赤らめながら
「次いつ来たら嬉しい?私としては毎週来たいんだけど…」
「え?流石にそれは金銭的に…」
「うん。でも1ヵ月に1回だと…私が寂しいし…真ん中とって隔週に1回でどう?」
「俺が…隔週で行っても良いぞ?」
「ううん。私が会いに行きたいの♪」
「…わかった…」
飛行機搭乗の時間になった。
「…あの時と…反対の立場だね…」
「ああ…」
沙優は目を潤ませながら真剣な表情で
「吉田さん!もう一回言います。
私…吉田さんが好きです!!
あの時よりももっともっと好きになりました。
これだけは…分かってね…」
吉田も真剣な表情で
「わかった。もうお前をガキ扱いはしない。ちゃんと考える」
沙優は少し涙ぐみながら嬉しそうに
「うん。ありがと。」
涙を拭きとり、そっと吉田の耳に顔を近づけ
「さっき内緒で、パンティも置いてきたからね♪有効活用してね♪」
沙優はいたずらっぽく囁いた。
「なっ、お、お前な~、そーいうところはガキのままじゃねーか!」
「またね~♪」
「ったく…ああ、またな」
飛行機が去るのをずっと眺め、アパートに着いた。
またガランと寂しい雰囲気・・・
「やっぱりあいつがいなくなると…寂しいな…」
あの時と同じ涙が流れた。
/////////////////////////////////////////////////////////////
タイトル再会では?という読者様いらっしゃると思いますが
あえて再開にしてます。
再び会うだけではなく、やり直したいという想いを込めての言葉です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます