-Winter 後編-タイムリミット、温もり、本当の気持ち-10

 -数週間後


 付き合ってから初めて、2人きりでjubeatの筐体に身体を向ける俺たち。


「…ここから始まったんだね…俺たち…」


「…そうだね…傑、ここにマフラーを忘れていなかったら…出会いは、もう少し遅かったのかもしれない…」


 jubeatを通して俺らは出会い、楽しい時間を過ごしてきた反面…

 抱えきれないほどの苦しみや悲しみを、心に秘めながら、ここまで来たんだ…


「jubeat?…翼や親友に出会わせてくれて、本当にありがとう…」


「どんな時も、変わらず傑や親友たちを…ここで待っていてくれて…」


 そう俺たちは、jubeatに感謝をしながらそっと…銀色に煌めく100円玉を投入したんだ。


 今日は、新曲の解禁日。

 どうしても翼と戦いたかったんだ。


 1年経とうが何年経とうが、俺にとってはに変わりはないけれど、そろそろ勝ててもいいのでは…?


 そんな事を思いながら俺は、翼に挑戦状を叩きつけた。


「…恋人になろうが、手加減はしない」

「…翼こそ、負けても知らないからな!」


 まだまだ翼には勝てない曲の方が多い中で俺たちは、新曲の【アルストロメリア】で、一発勝負をする事になったんだ。


 どんな風にパネルが光るかなんて、お互い分からない…お互い対等な状態での戦いになる…


 ''Ready…''


(…勝ちたい…いや、なんだろう、普通に…翼と楽しみたい…!!)


 ''Go!!!''


 …………


「はぁ、はぁっ…」


 jubeatがグレードアップされる度に、難しさを増していく譜面に息が上がる俺は、その場で疲れのあまり、項垂れてしまった。


「…えっ…嘘だ…」


 ''result''


 Full combo!!!

 おめでとうの掛け声が、あ、あれ…?俺の筐体からしか聞こえない…


「…ま、負けた…」


 翼の声が…驚きを隠せていない…

 その声に俺は、項垂れた頭をグイッと持ち上げスコアを確認してみたんだ…


 988250(full combo) 987520


「っえっ…?!えええぇっ?!…う、嘘?!え!!っ?えええっ?!」


 驚きのあまり、自分でも何が起こってるのか分からなかった…そ、そう…!初めて翼に勝った瞬間だったんだ…!


 やっとここまで追いつけた…1年もかかったけど…やっとの背中に手が届いた瞬間だったんだ…


「…これは傑にやられたなぁ…!」


「ん〜っ!!!!やった〜!!!」


 俺は、拳を天高く突き上げて喜びを表出し、それに対して翼も「ほんとに。上手くなったよ♪」と返してくれて…


 そのまま「…はいっ♪」と俺に手のひらを差し出し「傑…?これからも…良きライバルとしてよろしくねっ?」


 と…とても嬉しそうに俺に微笑んでくれたんだ…俺も差し出された手のひらを、ぎゅっと握りしめて


「…もちろん!もっと追いついてみせる!」


 その言葉と共に、へニコッと微笑み返したんだ。


 ◇ ◇


 帰りの道中


「ねぇ、翼〜?アルストロメリアの花言葉って知ってる?」


「…え、しらないなぁ…」


 新曲のアルストロメリアという花は【持続】【未来への憧れ】という花言葉が存在する。

 その他にも色によっては【気配り】や【友情】など色んな意味を持つ花なんだ。


「…へぇ…翼、詳しいね?」


「…ふふっ!利用者さんに、お花屋さんがいてさ〜!教えてもらったんだよね!…ねぇ…翼?」


「うん?」


「…俺たちの恋も、アルストロメリアの花言葉のように、ずっとずっと…続いていくといいね?」


「どうしたんだよ、急に。約束しだだろ?…俺が引き取ったからには、絶対に離さないって♪」


 自分で話を振っておいて、顔が真っ赤になる俺に、ほんっと、可愛いな♪と笑う翼…

 俺が求めていた空間は、この他愛もない温かい空間だったんだよ…??


「…ねぇ?翼?」


「…うん?次は何??」


「…今日さ…泊まって、行くよね?」


「…っ…いいのかい?///」


「うん、もちろん…///」


 その言葉を残して、俺たちは自宅へと向かっていったんだ…


 言っちゃ〜悪いが、照れる翼も…可愛いんだからねっ…!!!

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