-Winter 後編-タイムリミット、温もり、本当の気持ち-7
「…まだ君には、愛する人がいるだろ…?だから…俺は君を愛せない…」
そう…翼さんは、彼とのタイムリミットを知らない…だって、昨日の今日でもあるから…
昨日、素直に伝えられれば良かったのに…なんでかな…弱虫な俺は、いつも大事なことを伝えらない…
とことん自分のことが…嫌いになったんだ…
「…翼さん…自分勝手で、ごめんなさい…本当に……ごめんなさい……」
結局言いたいことだけを告げて、タイムリミットのことも伝えられず、俺は愛に携帯を返してしまった…
翼さんの本当の気持ちなんて聞きもせず…俺は愛の枕に顔を埋めこんでひたすら泣きじゃくっていた…ほんと、最低だわ…俺…
これで、本当に…憧れの人でも好きな人でも無くなってしまうんだと、そんな風に感じ取ってしまったんだ…
それでも、愛と翼さんの話は、何故か終わりを迎えない…
「…はい…………はい…………ってことなんです…………言えなかったんだと思いますよ…?あたしなら………ですし………あたしは…痛いほど傑の気持ち……分かりま…………傑………優しすぎるから………………はい……はいっ…………分かりました…」
要所要所、愛の声が聞こえないところもあった…でも、愛が必死に翼さんへ何かを伝えようとしてくれている事は、俺にもひしひしと伝わってきた。
そして…ずっと泣き続ける俺のもとに愛が来て…もう一度、俺に携帯を差し出してきたんだ…
「…な、なに…?」
「…いいから、ちゃんと話して…」
俺はそっと…愛の携帯をもう一度、手に取り、涙声で翼さんに声をかけた…
「…傑くん…」
「…は…ぃ…」
「なんで、ちゃんと教えてくれなかったの…!?」
「…えっ…な、なにを…」
「…タイムリミット…」
そう…愛は、俺の伝えられなかった気持ちを翼さんに聞かれるがままに…代弁してくれていたんだ…
タイムリミットの彼と付き合って…
苦しみ、もがいていたことを…
そして、翼さんへの好きという気持ちを
必死に紛らわせようとしていたことを…
【あたしは…これ以上、傑が傷付く恋を見届けることは出来ない…ずっと、幸せでいれる人と一緒にいて欲しいんです…!】と…
「…俺は、君がそんな辛い恋をしてるなんて…これっぽっちも知らなかった…そして、君がこんなにも俺に対して、気持ちを押し殺していたことを…俺は…気付いてあげられなかったんだよ…」
「…つ、翼さん…ご、ごめんなさい…」
「…もう、謝んなよっ!俺だって男を…君を好きになってはいけない…ずっとそう思っていた……それでも俺は、君の事がずっと好きだった…君と同じで、俺の中でも君という存在が…心から消えていかなかった…」
翼さんも俺と同じ気持ちだったんだ…
好きなのに、ずっとそばに居たかったのに…
好きにはなってはいけない…だって、普通ではなかったから…その気持ちをずっと…翼さんも、心に秘めてくれていたんだ…
「…ずっと君のことを待とうと思っていた…彼と別れたら、迎えに行こうとも思っていた…でも、もうお互い…気持ちを押し殺すことは必要ない…」
「…タイムリミット…?…ふざけんな、そんな終わりが見えてて、辛い恋をしてるぐらいなら…」
「…俺が君を…傑のことを…今すぐ引き取ってあげるよ…?だから…傑?もう泣かないで…?もう…君を1人にしないから…ずっとそばに居ると誓うから…」
「…ずっとずっと、好きだよ…傑…」
翼さんの本音と温かい告白に、俺の心は優しく包まれていく…
俺の両目からは、今までの悲しみ、苦しみ、そして喜びと嬉しさ全てが流れ落ちていく…
「…翼さ…んっ…あ、ありがとう、ございますっ…俺も…あなたの…事が…ずっと大好きでした……俺のそばに…いてください……」
お互い色んな気持ちを隠しながら…普通じゃない気持ちを抑えながら…心は何度も引き合い、離れ合い、2人の気持ちはずっと繋がらなくて…
それでも…お互いの本当の気持ちは
【ずっと大好きだった】
【心からずっと大好きだった】
そう、やっと…2人の音色が繋がった瞬間だったんだ…
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