-Winter 後編-タイムリミット、温もり、本当の気持ち-4
-次の日
翼さんとは、ギュッと抱きあっただけで、それ以上には、なにも発展はなく…
数分抱き合った後…お互い別々の布団で、一夜を過したんだ。
「…っ…ふぁあ…!…ぁ…朝…」
まだ身体には、翼さんの温もりの余韻が…
そんな事を思いながらも、寝ぼけ眼のまま俺は、翼さんが眠ている布団を目を向けてみたんだけれど…そこには、俺の目覚めとともに涙を流す…翼さんの姿があって……
「…っえっ…!つ、翼さん?!」
一気に目が覚める俺…ど、どうしたんだろう…俺の目の前で、翼さんが流した2回目の涙だったんだ…
「ひくっ…うぅっ…ご、ごめんね…」
「…だ、大丈夫ですか?!」
「…うん、大丈夫…」
(…だ、大丈夫じゃ…ないだろうよ…)
「…ゆっくりで、大丈夫です…俺に話してくれますか…?」
「…っ…」
傑…色々、準備出来てるのか…?
そう…俺らの運命を、大きく変えていく一言が、翼さんの口から…零れることになるなんて、思ってもいなかったんだ…
「…傑くん…?」
「…はいっ…?」
「…もしね、もしだよ…?」
「…はい…」
「…君に…彼がいなかったとしたら…」
「…えっ…」
「…俺が君を好きだと言ったら…俺と付き合ってくれていたのかな…」
な、なにを言われているのか、分かるはずなのに…俺は戸惑いの方が強すぎて、訳が分からなくなってしまった…
自分が憧れていた人から好きと言われたことに、気が動転してしまう…
好きになってはいけないと、自分の気持ちを誤魔化して…傷を増やさないようにと、身勝手な気持ちで彼と付き合って、気持ちを紛らわそうとしていたのに…
憧れから好きに変わっていた自分さえ、偽り通そうとここまで来ていたのに…
好きな人から…好きなんて
言われたら、どうしていいかなんか…分かるわけ、ないじゃんか…
でも、素直に俺の気持ちを伝えてみたい…
もう、自分の気持ちを誤魔化すのは、やめよう…そう思いながら、俺は翼さんに言葉を紡いだんだ…
「…翼さん…俺に彼がいなかったら…俺は、あなたのそばにいたかったです…」
『あなたの事が、ずっと好きでした…』
翼さんに、この思いは伝えられなかった…
彼とのタイムリミットも伝えられなかった…
そんな余裕…この時の俺には、どこにもなかったんだ…タイムリミットの彼がいるのに、翼さんのことが好き…なんにも気持ちの整理が着いていない…
そんな自分に俺はとことん、悔やみまくった…だって、元を正せば弱い自分が撒いた種だ…
結局、周りの気持ちも汲み取れずに…自分で自分を傷つけていただけだと、やっと気付いたんだ…
ほんと、俺ってとことん馬鹿じゃんか…
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