-Winter 後編-タイムリミット、温もり、本当の気持ち-3
俺は押入れから、誰でも泊まれるようにと用意していた布団を、俺の布団の横に敷いて…翼さんが眠れるように用意してあげたんだ。
「…翼さん、良ければ俺の服…貸しましょうか?」
「…えっ、いいのかい?」
「ちょっと大きいかもしれませんが…私服よりはいいですよね?」
そう言い残して、俺は翼さんが着れそうな家着を渡してあげたんだ。
「…ありがとう、着替えてくるね…///」
その言葉と共に、脱衣場へ向かう翼さん…べ、別に…ここで着替えれば…いいのにさ…?///
そんな事を思いながらも、俺は先に布団に入り、翼さんが着替え終わるのをじっと待っていたんだ。
◇ ◇
お互い別々の布団に入り、俺はそっと部屋の電気を消した。
でもなんだろう、気持ちが落ち着かない…
隣には憧れの人…ずっと俺が好きだった人が横になっていて…
でも…今の俺たちは、お互いがゲイと分かっていても、それ以上は越えてはいけない…
俺には、タイムリミットの彼がいて…その事実を知らない翼さんが隣にいて…
何もかも気持ちが曖昧で、複雑だったんだ…
でも、翼さんのある願いで…俺の心の全てが、翼さんを求めてしまう…じっと堪え続けていた、心の鎖が解けてしまったんだ…
「ねぇ、傑くん…?」
「はい…?」
「俺の…一生で1度のお願い、聞いてくれないかな…?」
「…えぇっ…?」
「…傑くんに、彼がいることは知っている…もう…今後は絶対に、求めないから…1度だけ…後ろから、ギュッとさせて欲しいんだ…」
「1度だけでいいから…君の温もりに触れてみたくて…」
どこか、翼さんの言葉が、寂しそうに聞こえてしまったんだ…
翼さんは、俺が教えた掲示板も使っていなかったし、出会いも求めようとしなかった…
ゲイであっても、これからも1人でいいと…
それでも、翼さんのは俺に…温もりを求めてくれて…
ずっと…憧れの人だった翼さんが、俺に初めて…何かを求めてくれてんだ…1度だけなら、きっと大丈夫…
「…分かりました、じゃあ…///」
「…傑くん、ありがとう…」
俺は、翼さんに言われた通り、翼さんに背中を向けて…寝転がった。
隣の布団からゆっくりと翼さんが近づいてきて…俺は緊張のあまり、ギュッと目を閉じてしまい、そのまま…翼さんからの暖かい抱擁を受け止めていたんだ…
(…あっ…あ、温かい…///)
目は、ギュッと閉じられたまま…後ろから、翼さんの左手が伸びてきて、そのままギュッと…抱きしめてくれて…
今度は、俺の背中に翼さんの右手が当たるのを感じて…俺は…ゆっくりと、そして少しだけ身体を浮かせてあげた。
少しだけ開いた隙間から、少し震えた右手が伸びて…そのまま、両手を組みあわせて、しっかりと俺に抱きついてきたんだ…
恥ずかしくて、どうしようも無い…
そして、ずっとずっと、この温もりが恋しかった…
好きという気持ちを誤魔化したくて…好きにはなってはいけないとずっと自分に言い聞かせて…
でも、本当はずっと…翼さんの事が恋しくて仕方なかった…ずっとずっと、こうしたいと心から願っていたんだ…
俺は…翼さんの両手に自分の両手を重ねて…そのままギュッと、握り返してあげたんだ…
俺の背中にくっついた、翼さんから伝わってきたのは、翼さんの温もりと…今にも、はち切れそうな早い鼓動、そして切ない息遣いがひしひしと伝わっていた…
俺も心臓が、はち切れてしまいそうだ…
だって、ずっと…こうして欲しかったから…
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