-Winter 前編- 彼氏、告白、心の膿-5
-週末
俺は、翼さんを迎えに行くために、駅まで向かっていた。
話って…なんなんだろう、週末まで考えてみたけれど…
''膿が吐き出せる時が来たのかも…''
この意味が全く分からないまま…週末を迎え翼さんと会うことになったんだ。
「…あっ!翼さん!」
「傑くん!お待たせ♪」
駅に着くと丁度、翼さんも着いた頃のようで、何も言わずに俺の助手席に乗り込む翼さん。
隣には、理解をしてくれた翼さんが座っているだけなのに、俺はなんだか、いつも以上に変な気持ちになって、緊張していた…
翼さんが話したいことも分からないし、どんな言葉が翼さんから発せられるのかと、考えるだけで緊張してしまっていたのかもしれない…
少し間が開いて…
「つばさ…」「すぐるく…」
お互い、言葉がぶつかってしまった…
「…ご、ごめんなさい…///」
「い、いや…大丈夫…///…傑くん、話してもいいかな…?」
「…もちろんです、聞かせてください…」
俺に話したかった事をこの後、翼さんはきっと、誰にも見せたことのないような表情で、頑張って…心の膿を吐き出してくれたんだ…
「…この間、傑くんがゲイなんですって伝えてくれた時…俺さ、悲しい顔…しちゃってたよね…」
「…はい…」
「やっぱ、バレてたよね…あれね?君の事実を知れた嬉しさの他に…俺自身が憎くなったんだ…」
「…えっ…」
「実は…俺も自分の気持ちがよく分からないまま…今まで生きてきていたんだ…高校時代も大学時代も彼女を作ろうとした…でも、全く女性に興味がなかったんだ…そんな自分がおかしいとも思った…」
「俺の姉さんは、普通に恋をしていたのに…俺は、気付いたら男の人いや、男の人の顔とか服装にどんどん目がいくようになって…その度に、自分はおかしい…間違っている…といつの間にか、心を塞ぎ込むようになっていて…」
「俺は、恋愛なんかしなくても生きていける…好きな人が出来たとしても…それは自分の中だけで留めてしまおう…だって、好きになるのは男なんだし、おかしな事なんだし…そんな風に…自分の気持ちを押し殺して、ここまで来たんだ…」
「…翼さん…」
「でも、そんな俺に傑くんがゲイなんです、彼氏なんですって、懸命に教えてくれて…やっと俺も本当の気持ちを…話してもいい人が現れたんだな…心を開いて話してみたいと思える人に出会えたんだ…それが、君だったんだよ…?」
「もう、自分の気持ちを…隠さなくても、信じてくれる人がいるんだと思ったら…すごく嬉しかったのに、悲しくなった…」
「あの日、電車の中で…人目を憚る事もせずに俺は、泣いたんだ…声を上げて泣きじゃくった…心に縛り付けられていた何かが…解けたんだよ…」
いつもは冷静な翼さんが…声を震わせながら、必死に気持ちを伝えてくれたんだ…
翼さんも…俺と同じようにゲイである事を受け入れられなくて…でも、気持ちには嘘をつけなくて…
冷静に色んなことをこなして来たとしても、その裏側では、すごく孤独で、不安で…自分の気持ちを押し殺すことで、精一杯だったはずなんだ…
翼さん…その気持ち、俺は…痛いほど分かるよ…?
「…翼さんは、もうひとりじゃないです…」
「…えっ…」
「ここにら微力ながらも…あなたの気持ちを理解出来る味方がいます。いや、俺はあなたの味方でありたいです…」
「…傑くん…っ…」
「翼さんは…おかしくなんかないんです…男が男を愛してもいいんですよ…?そして、どんな形であっても…翼さんは、俺の大切な憧れの人ですから…」
俺はこの時、翼さんの事が好きなんです…
そんなこと言える資格なんて…どこにもなかったから…
憧れの人…そう、少しでも翼さんの支えになればと思って声をかけてあげたんだ…
「…ひくっっ…ありがとう…っ…傑くん…」
心の膿をやっと吐き出せた翼さんは、初めて俺の前で…涙を流したんだ。
そう…心の膿がポロポロと剥がれ落ち…とても綺麗な結晶に変わった雫を、何個も何個も…落としていったんだ…
翼さん…?もう、大丈夫ですよ…?
俺が、みんなが傍についてますから…
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