-Winter 前編- 彼氏、告白、心の膿-4
-駅に着き
「それじゃあ2人とも、またね?…それと、傑くん、ちゃんと話してくれてありがとね?」
翼さんは、この言葉だけを俺らに残して、その場から去っていったんだ…
愛を家に送る途中「傑、話せてよかったね?」と助手席に乗り換えた愛は、俺に声をかけてくれたんだけれど…
「うん…受け止めてくれてよかった…」
「翼さんなら大丈夫だと思ってたけどねぇ〜?」
「でもさ…愛…」
「うん???」
「…翼さんさ、俺がゲイって分かった瞬間…悲しい顔してたの…俺、見逃さなかったんだよね…」
「ええっ?!後ろからじゃ見えないもんっ!」
「俺の…勘違いなのかな…?本当は、聞きたくなかったのかな…?」
「傑…それは、翼さんに失礼かもよ〜?」
「…な、なんでだよ!」
「…翼さんが、あんたがゲイだって事を受け入れてくれただけでも、幸せだと思わないと…」
そう…俺の周りの友達は、俺がゲイであるとカミングアウトしても、拒否をする人なんて誰1人も居なくて…いつの間にか、その環境に慣れすぎてしまっていた自分がいたのは確かだ…
決して当たり前なんかじゃないんだ…
まだまだ普通と考えすぎてはいけない…
もっともっと、気持ちを受け入れて貰えない環境で、苦しんでいる人もいるはずなんだ…
そして、俺の事を受け入れて欲しいと思っているのに、悲しい顔をした翼さんは、本当は受け入れてくれてないんじゃないの…?
そんな…他人の気持ちもしっかりと考えずに、翼さんに対して酷いことを考えていたのではないのか…
俺…しっかりしろって、ばかっ…
「翼さんはあんたの事、受け入れてくれてるよ?大丈夫、あたし達はそんな浅い関係じゃない…あたしは、そう思っているよ…?」
愛がそっと慰めてくれて…俺も運転しながら…涙をポロポロと零していたんだ…翼さん…本当にごめんなさい…
理解して欲しい人に、理解をしてもらえてるのかと不安になって一方で…
翼さんが帰りの電車の中で、泣いて帰っていたことを知るのは…もう少し、先の話になるんだ…
◇ ◇
-数日後
翼さんにカミングアウトをしてからも、俺たちの関係性は何一つ、ブレてはいなかった。
みんなとのやり取りも変わらないし、次の週末には、またみんなで拠点に集まる話とか…何一つ変わっていないはずだった…
《傑!今すぐ、翼さんのSNS見てみて!!》
愛からのメールに言われるがまま俺は、SNSを開いてみた。
そこには翼さんのひとことメモが残されていて…
''…やっと俺にも心に溜まっていた膿が吐き出せる時が来たのかもしれません…''
その一言だけが…綴られていたんだ…
い、一体これは…ど、どういう事なんだろう…?ひとことメモを見ていた時、ちょうど翼さんからもメールが届いて…
《傑くん?今週の拠点集合の時、駅まで俺を迎えに来てくれないかな?君に…話したいことがあるんだ…》
《分かりました!いつもの駅に、迎えに行きます!そこでゆっくり、話を聞きますね?》
なんなんだ、この感覚…
一気にもどかしくなって、何かが迫ってくる感覚だ…翼さん、話って一体なんなの…?
俺らの中で何かが、繋がり始める音が、奏で始められたんだ…
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