-Autumn- 大会、傷、優しさ-5

 実は、俺が自宅に戻ってきた理由は、もう1つあって大会の前の週末に、結斗の18歳の誕生日を早いけど祝ってあげよう!と大人達は、企んでいたんだ。

 しかも…我が家で…はぁ、結斗の誕生日に入院するなんて…結斗…ほんとごめんな…?


 他のみんなも、パーティーどころじゃないと感じ取ってくれていて、まだ誰も触れていなかった…いや、違う…


 みんな、俺が苦しんでいることを知っているから、そっとしておいてくれたのかもしれない……ならっ!!!

 俺は徐に携帯を取り出し、みんなにメールを一斉送信したんだ。


 今の時代と違って、LINEでグループを作って共有出来るなんて出来ない時代だ。

 携帯からメールをみんなに向けて、一斉送信するしか方法はない。


《今、家に戻ってきたよ。心配かけて本当にごめん…!目の痛みは大丈夫!家事も出来るし身体も動くし!jubeatはまだ出来ないけどね?そで、みんながよければ…今週末、変わらず集まりたいけど…どうかな?》


 結斗の誕生日を祝ってあげたい…

 それ以外にも、みんなに会いたい…


 身体の痛みなんかより、その気持ちが遥かに上回っていて、みんなからの返信をドキドキしながら待っていた…


 1番最初に連絡が来たのは、驚く事に忙しいはずの翼さんだったんだ。


《傑くん…無理してないかい?…いつでも会えると思うよ?》


《ち、違うんです…俺、みんなが恋しいんです…みんなに会いたい…わがままなのは分かっています…でも、無理はしませんから…!》


《そうか…そこまで言うなら分かったよ!みんなでなんとかするから、傑くんは、家で待ってなさい!》


《…っ!翼さん…!ありがとうございます!》


 憧れの人から1番最初にメールを貰えるなんて…そして、いつも通り優しい翼さん…


 本当に嬉しかったんだ…


 その後もみんなから、翼さんと同じような内容のメールが来ていて、それでも俺の【会いたい】にみんなも賛同してくれて…


(…自分もできる限りのことをしよう…!…大丈夫…!無理はしない…!!)


 そんな風に、みんなに久々に会えることを楽しみにしながら、あっという間に週末になってくれたんだ。


 ◇ ◇


 -週末


 翼さんの車に全員は乗れなかったから、雄介を乗せて2人で家まで来てくれて、愛は彼氏さんに送って貰い、結斗と紬は、電車で最寄り駅まで来てくれて…


 久しぶりにみんなの顔を、見ることが出来たんだ…


「…みんな、迷惑かけてごめんね…」

 嬉しさのあまり…うるうるしてた俺に


「な〜んも迷惑なんかかけてねぇべ!!」

「傑くんが元気なら、なによりだよ?」

「傑さ…全然、お岩さんじゃないね!」

「愛〜っ!それいっちゃだめじゃん!w」

「傑くん、僕も会いたかったよ〜♪」


 いつもと変わらない5人に…俺は、泣くどころか心がホッコリと温かくなって…なにより嬉しくて自然と笑みが零れていたんだ…


「みんな、ありがとう…!俺、頑張って治すから!」


 俺の言葉にみんなも微笑み返してくれて…俺の心から剥がれ落ちた何かが1つ1つ…元に戻っていく…そんな感覚をこの時、体も心も覚えていたんだ…


 この温もりが俺は、大好きだなんだ…

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