-Summer- 結成、目線、疑念-4

 S軍の結成後

 俺たちは、SNSのコミュニティでS軍への参加を、少しだけ促してみたんだ。


「多くは大変だから、少人数でやれたらいいね♪」


 そんな翼さんの思いとは裏腹に、気付けばS軍は20人前後の軍団になっていた。


 もちろん、結斗もS軍に参加してくれた。

 紬は無所属が好きで、軍にまでは入らなかったけど、いつも陰ながらサポートをしてくれていたんだ。


 何もかもが上手くいきながら、俺たちのjubeat生活は、正に順風満帆だった。

 それでも、その中で俺がと知っているのは、愛と雄介だけだったけれど、俺は、とにかく心から楽しんでいたんだ。


 ◇ ◇


 -とある日


【聖地にS軍で集まろう!】


 俺の提案と翼さんの一声で、聖地に軍のみんなで集まることになったんだ。


 初めましての人も少しいれば、会ったことがある人の集まりになるわけで、みんなに会える嬉しさが、俺の気持ちを彩っていた。


 いつも通り愛と雄介、そして翼さんと聖地へ足を踏み入れていく。

 そこには結斗と紬の姿の他に、S軍に加入してくれたメンバーが待っていてくれて、和気あいあいと楽しい時間を過ごしていった。


「愛〜?タバコ吸いに行こ〜ぜぇ!」


「おう、いいよ〜っ!!」


「あっ!愛、傑、待って〜!私も行く〜ぅ♪」


 ええっ!!意外だったなぁ…!紬もタバコ吸うんだぁ…なんて思ったけど、あれ?俺もこんな事あったよな…??


 ''…タバコってのがなんか似合わねぇ''


 中学時代の友達に言われた言葉を思い出した俺は、イメージってこえぇよなぁ…と、そんな事を考えながらも、3人で喫煙所でタバコを吸うことにしたんだ。


 ◇ ◇


「そういえばさ〜?翼さんってかっこいいよねぇ~」なんて急にこんな言葉を紡ぐ紬に、俺は煙が変なところに入り、むせ込んでしまった。


「え、傑、大丈夫?」


「う、うん、大丈夫…っ!」


 な、なんで俺が動転してんの…?!動転の意味がこの時、よく分からなかったけど…

 紬の問いかけに愛も「わかるぅ!ほんとかっこいいよねぇ〜!」


 なんて話すもんだから…色々考えてしまったじゃんか…何なんだろう、俺は翼さんの事をって気持ちで見てる訳ではないはずなんだよ…いや、考えたくない…


「でもさ〜?絶対、私の事なんか眼中にないよな〜?」

「…それはね、あたしも思う〜」


 ん…?どういうことですか…?この後、紬から発せられた言葉に、俺は硬直してしまったんだ…


「翼さんって、男が好きなのかなぁ?まぁ、そうであっても私は、偏見とか全くないし、寧ろ友達が幸せになれたら、それだけ嬉しいもんねっ?♪」


 う、嘘…こ、ここにもいた…俺の気持ちをきっと、分かってくれる人が…!

 紬のその言葉に、愛はそっと俺に顔を向けてくれて、お互いコクッと頷きあったんだ…


 俺の気持ちを…紬に伝えてみたい…そう俺は、意を決して言葉を紡ぐことにした。


「紬…?」


「んっ?傑、どうしたの?」


「あの、俺ね…?実は…男が好きなんだ…」


 俺の一言に、あわわわ!っと慌てふためく紬に、やばいっ!カミングアウトが急すぎちゃった?!と俺も慌てふためいてしまった。


「傑、ご、ごめん!…わ、私、無神経すぎたよね…!!」


「だ、だだた、大丈夫!俺の方こそ、話の流れで急に話しちゃってごめん…っ!」


 慌てふためく俺たちを見て、愛は、ふふふっと笑いながら「傑、良かったね?」と声をかけてくれた。


「傑?私、偏見とかないし、寧ろ傑の気持ちをちゃんと聞けてよかった!あ、そうだ…っ!もし、傑が嫌じゃなければ、今度、結斗にも教えてあげてっ?あの子もそういう偏見、全くない子だからさっ♪」


 結斗と紬は、本当に仲が良かったんだ。

 まるで、本物の姉弟のように仲が良かったから、この言葉は信じられるんだな…と俺は、そう感じたんだ。


「紬…本当にありがとう…!」


 また1人、俺の心を支えてくれる人が出来た…その度に、自分がだと思っていた気持ちが、徐々に浄化されていくようにも感じていた。


 でも、この後の2人の話に、俺は目が点になるなんて思ってもいなかったんだ…

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