第22話 招かれたのは……「!!??」
「こ、ここが明日香の暮らししてるマンションなのか?」
門の前に立った俺ははるか頭上を見上げながら、呟き声のような小さな声で隣にいる明日香に恐る恐る問いかけた。
「そうよ」
俺とは対照的に明日香は特に気負った様子もなくさらりと答える。
「こ、ここが……?」
「そうよ?」
「明日香はここで一人暮らしをしているんだよな? 家族と同居じゃなくて。リビング・アローン?」
「心配性のパパを説得するのにすごく骨が折れたわ」
「ってことは? つまりここが明日香の一人暮らししてるハウスってことなんだよな……?」
「だからさっきからそう言ってるじゃないの。同じことばっかり聞いてきて、へんなリョータくん」
「つまり――」
「つまり?」
「つまりオートロックだけじゃなくて入り口に警備員まで常駐してて、監視カメラがいくつも見張ってて、一階だけじゃなくて上層階にまで空中庭園っぽいのがついている、どう見ても一般人お断りの超高そうな高級賃貸マンションに明日香は暮らしてるってことなのか!?」
あまりの衝撃のでかさに、俺は明日香の方に振り向くと勢いそのまま早口でがなり立ててしまった。
月の家賃がいくらとか聞いてみたいけど、怖くてとても聞けない小心者の自分がいるんだが!?
普通に100万円とか越えてくるんじゃないかな!?
「このマンションのオーナーがパパなのよね。そういう経緯もあってここにしたの」
「ぶふぉあぁっっ!? まさかの個人所有物件だっただと!」
もはや家賃が3ケタ万円オーバーとか、そういうレベルの話ですらないのな!
「今時マンションのオーナーなんて、珍しくもなんともないでしょう?」
「いいや、物には限度ってもんがあると俺は思う」
こんな超高級賃貸マンションに一般投資家が手を出すのが不可能なことくらい、投資なんてしたこともない俺にだって簡単に分かっちゃうからな?
「まあそれでね? 最上階は1フロア全部まるまる一物件扱いで、そこを私が一人で使っているから、人一人くらいなら受け入れても全然余裕あるのよ。リビングとダイニングの他に6部屋あるから。トイレも2つあるわよ?」
「……は? ……え? なんだって?」
今なんとおっしゃいましたか?
おかしいなぁ、なんか最上階を明日香一人で使っているとか聞こえてきたんだけど?
最上階って普通、一番いい部屋だよな?
泊まったことなんてないからふんわりとしか知らないけど、ホテルだとどこもスーパースイートルームとかになってるんだろ?
あれれ、おかしいなぁ~。
この人さっきから何言ってるんだろ?
ここは日本なんだから、ちゃんと日本語で話して欲しいなぁ。
ドゥ・ユー・スピーク・ジャパニーズ?
「最上階は1フロア全部まるまる私が一人で使っているから、人一人くらいなら受け入れても全然余裕あるって言ったんだけど?」
「最上階を全部使ってる……あなた様はいったい何様であられますか?」
「だからお嬢さまだって言ってるじゃない。お嬢さまならこれくらい普通よ普通。これでもだいぶん妥協したんだから」
なぜか困り顔で言いやがる明日香。
「ぜんぜん妥協できてねぇよ、これっぽっちも妥協できてねぇよ! どんだけスタートラインが高望みだったんだよこの超上級国民め! 俺は今それを問い詰めたい気分でいっぱいだわ!」
「そう? お手伝いさんとガードマン付きの庭付き一戸建てを、通学しやすいように大学の目の前に用意してあげるねって言って聞かないパパを説得するのに、本当に大変だったんだからね?」
「おふう、妥協の方向性が俺の思っていたのと完全に真逆だった件!!」
ランクを「下げる」方向でお願いしてたのかーい。
やばいぞ。
お嬢さまはお嬢さまでも、俺は想像以上の上級お嬢さまを相手にしていたようだ……!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます