第3話 酒の追加が出来ない理由

 魔界にある大魔王城


 数日前、勇者リゾットとの戦いに勝利した魔王軍は、玉座の間で祝賀会をしている様子。


「そうなんだよ、そこで大魔王様があーやってこーやって・・・」

「そりゃースカッとしたさ、姉様デュエルさまがブレスを吐いてとどめを・・・」

「しかしあの憎っき勇者を再起不能にした大魔王様は・・・」

ザワザワザワザワ


 何処に耳を傾けても大魔王ゲルディとハーピーのデュエルの活躍話で持ちきりであった。


 ゲルディとデュエルも勿論祝賀会に参加しており、魔王軍VIPに位置付けられている3獣士達と飲んでいる様子。


「ンモォーーーー!やはり格別に美味い!大魔王様、勇者討伐149人達成おめでとうございます!この石牛のスドム、心の底から嬉しく思います!」


「あと1人で150人でございますねぇ、私マンティコアのディボルテはそんな大魔王様を誇りに思う所存でございます。」


「なんの!3獣士リーダであるこのバシリスクのドロークもこの先にある暗黒の世が出来上がるのが非常に楽しみでございます!」


 3人の重役達は酒を飲み、酒に呑まれそうになる寸前であった


「うむ、お前達の祝いの義、素直に受け取る事にする。これからもこのゲルディと共に平和を全て打ち砕き、闇に包まれた暗黒の世を築こうぞ!」


「仰せのままに!」

「ハハア!!」

「御意に!」


 ゲルディや3獣士を見ていたデュエルも笑みが溢れ、コクコクとお酒を控えめに飲んでいた。


 しかし


 飲み始めて3時間が経過した頃、デュエルの逆鱗に触れる事件が起きるのだ。



「ンモォ?酒が?酒が無くなったか、おい!コウモリモンキーよ、酒だ、酒を持って来い!」


 スドムは酒樽を片手に持ってブラブラさせて空っぽをアピールした。


「ありゃ?俺達も酒が無くなったなぁ。」

「あ、ワシらもだ、追加だ追加だ」

「おい〜、コウモリモンキーいるかー?」


 どうやらあらゆる場所で酒が無くなった様だ。しかしコウモリモンキーの姿がない。


「おや?コウモリモンキー、いないのか?追加だ、酒の追加だ!」


 ドロークも辺りを見渡しながらコウモリモンキーに酒追加のアピールをした。

しかしコウモリモンキーの姿は何処にもいなかった。


 しかし大魔王ゲルディはそんな事に全く興味を示さず、注がれていた酒を飲み、リラックスしている。


 デュエルはふと異変に気づいた。それはコウモリモンキーをこの数日見ていない事だ。

デュエルは翼を羽ばたかせ宙を舞う。


「お、姉様デュエルさまが余興を始めるぞ!?」

「お、姉さん、待ってました!」

「いや〜それにしても舞っているだけでも美しい」

ザワザワザワザワ


 酔っている皆の上を見渡すデュエル、しかしコウモリモンキーの姿は見当たらない。


「ねぇ、皆んな?モンちゃん知らない?」

ザワザワザワザワ


「ねぇってばぁ!」

ザワザワザワザワ


「・・・・・」

ザワザワザワザワ


「だまらんかい!!」


 デュエルの一言で楽しい祝賀会が一気に凍りついた。玉座の間が静まり返った。



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