その後一応念の為ということでローブの人たちに鑑定?を受けたが特筆すべき魔法は持っていないと言われました。

魔法がある世界と聞いてちょっぴり期待しただけにツライ。ちなみに巫女になる子は祝福と祈りの聖魔法が使えるのだとか。流石。


巫女として召喚されたあの子は俺と同じ男で高校一年生らしい。天城玲くん。儚げ美人って感じだがちょっと思い込み激しくて突っ走っちゃうタイプ。王子が腰を抱くようにエスコートしてるからなかなか話せなかったが鑑定は玲くんも受けると言って抜け出してくれたお陰で、隙を見て話せてよかった。お互いに謝りあって苦笑したんだ。玲くんは勘違いでかえって事態を悪化させたと頭を下げたけど、俺は勘違いさせるような行動をしたんだし。


鑑定が終わるとすぐ王子が巫女玲くんを腕の中に納める。いいのかなと思って玲くんをうかがうが、目が合うと恥ずかしそうに微笑まれ王子に睨まれた。うんいらぬ世話っぽい。お幸せにー。


宰相さんが詳しく説明してくれたんだけど。ここはリザインという王国で、この国は前回魔物による侵攻で巫女を失って長いのだと。そのため新たな巫女を探したけれど見つからずついに伝承を調べて成功するかわからない伝説の儀式にすがった次第だという。異世界からの巫女は特に能力が強いと伝承にはあるらしく期待されていたようだ。玲くんのはただの魔法でなく聖魔法だから期待以上みたいでしかも二つだからローブの人たち、魔道士のじーさんたちに喜ばれていた。普通の魔法でもできる人で一種類一つなんだって。まあ一般市民つーか庶民なら使えなくてもおかしくはないようだ。そういう人は何でも人力だから大変らしいけど、お金があれば魔石を消費して使える魔道具なるもので多少生活が楽になるそうだ。


で、王宮で何の役目もない俺は。

「ではこれを。庶民が2か月は暮らせる金額が入っています」

「ありがとうございます。えっと、宰相さま」

「ええ、お気をつけて」

一晩泊まっただけでお金を受け取り出ていくのであった。地位とか権力?あんまキョーミねっす。

優しい玲くんは僕の話し相手や付き人としてはどうかって引き止めてくれたけど、それだと俺は本当にただのおまけになっちゃいそうで。どこかで仕事を見つけて落ち着いたら連絡するよと断った。


王宮から門まで結構長いなあ。さすが王宮?広々としたポーチに青々した低木が植わっている。ところどころ小さなマゼンタピンクの花が咲いていて可愛い。王さまの趣味で植えられてんのかなあ。

丁度いいバイトなんかあればいいなあ。宰相さんにはまずは広場を見てみるといいって言われたけど。

考えながら門をくぐると両脇に剣を下げた人が二人立ってる。宰相さんに聞いたのか俺に目を向けて広場はあっちだと教えてくれた。

「ありがとうございます」

軽くお辞儀して前を失礼。その人が驚いて目を見張っていたのには気づかなかった。門の人、目元が隠れる兜をしてたから。


きれいに整えられた石畳の道を教えられた方に辿っていく。この辺は大きな屋敷が立ってるけど数は多くない。高い壁に伝う蔓薔薇を横目に見ながら歩き、ついた広場は閑静で馬車止めがありその奥にお店の窓が。うん高級そうな…俺みたいな一般人にはハードルが高いっす。宰相さんはここらの店で働くのを勧めてくれてんだろうけど。

悩むうちに期間だけが過ぎて、腹の虫の方が音を上げた。

「うぐ…」

ぎゅーろぎゅーろと鳴く腹をなでてなだめ、とりあえず今日の宿を決めることにした。

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