104.挨拶に来ました

 リリンとニャリスがラーゼリオンを離れ、魔王が復活した数日後のこと。


 ハーミット・フィル・ラーゼリオンはその日もまた、王城の地下深くへと続く階段を降りていった。

 国王の身でありながら、従者も伴わずただ一人。

 いつもならそうだったのだが、この日は違った。


「……どこまで降りてく気だ、ハーミット」

「もうすぐだよ、シロウ」


 目の周りに隈を作り、国王の後を力なくついていく男は、転生勇者のシロウ・モチヅキだ。

七人いた彼の仲間。奴隷ハーレムの女たちは、今はもう誰一人としてシロウの側にいない。

 一人、二人と連絡が取れなくなっていき、いつの間にか当たり前のような顔で、反射の魔術師の仲間になった。

 また、ある者は反射の魔術師との戦いに敗れ姿を消し、ある者は身勝手に裏切り者を庇い、命を無為に散らした。


「どいつも、こいつも……」


 唯一シルヴィアだけは、時折蝙蝠の姿で「見守っているのじゃ」と告げにきていた。

 だがハーミットを警戒しているのか、普段は決して姿を見せようとしなかった。

 シロウが何度もハーミットは敵ではないと説得し、姿を現すよう命令しても無駄だった。


「なんで……誰もオレを信じねえ……違うだろう。ヒロインどもは、主人公のオレを、ずっと側で、守って、信じてなきゃあ……」

「その通りだ。主人公は君だよ、シロウ」


 シロウが欲する言葉を、ハーミットは的確に伝える。


「恐ろしい、非道な男だね。反射の魔術師は。君と仲間たちの繋がりを破壊して奪い去る。王家承継魔導図書群に、そんな魔法があったんだろう。強大な力を手に入れ、他者の絆を壊してその間隙に付け入り、強引に仲間にする……さすがはあのレオニング家の血を引く者だ」


 コツコツとシロウの前で階段を降りながら、ハーミットは淡々と言葉を紡ぐ。

 それは呪文でもなんでもない、ただの言葉。


「あの男の悪辣な手法がなかったら、彼女たちはこの物語の主人公である君の元から、逃げ出すことはなかった。……すべてはあの反射の魔術師が元凶だよ、シロウ」

「わかってる」


 だからこそ、その言葉は呪詛のようにシロウの精神を蝕み支配する。

 リリンが、死したテレサが望んだ逆の方向へと、シロウを誘導する。


「エフォート・フィン・レオニングを殺すんだ、シロウ。そうすれば仲間たちは帰ってくる。すべては元通りだよ」

「……ああ! 野郎は必ず、オレが殺す!」


 そして転生勇者は気づくはずもない。

 国王ハーミットが、「魔王を倒せ」とは言わなくなっていたことに。


「……ここは?」

「ライト・ハイドの中枢だよ。ラーゼリオン建国の当初からね」

「こんな辛気臭い場所に、今更何の用だ」

「君に会わせたい男がいてね」


 そこはリリンとテレサが戦った広い地下空間。

 所々崩れたままの壁や床が、二人の激闘を物語っていた。


「……誰もいねえじゃねーか」

『おや? 転生チート勇者様はこの程度の隠行も見破れないのか。期待外れだな』

「なっ!?」


 突如、声ならぬ声が響いた。

 異様に冷たい、死神の声と言われても誰もが納得するであろう、闇に倦んだ声。


「ハアッ!」


 シロウは魔力を八方に解き放った。

 無限に等しい膨大な魔力が、巧妙に隠された魔術構築式スクリプトを薙ぎ払う。


「こいつはっ……!?」


 シロウが目にしたものは、まるで様変わりした地下空間。

 壁面の紋様は禍々しい、生物の腸を想像させるグロテスクな彫刻が施され、石畳と思われた地面は人族のものとも魔物のものとも思える骨と腐肉が敷き詰められている。


「ほう……そんなゴリ押しで偽装空間ごと吹き飛ばすとは、凄まじい力だ。前言を撤回しよう、さすがは女神の玩具だ」


 ドーム上の空間、その中央に浮かんでいたのは一人の男。

 何もないはずの中空に、胡座をかいている。


「なんだ、テメエ……?」


 灰色のボロ布を纏い、フードを目深に被り、整えられていない髭は生え放題で素顔は見えない。

 だが異様に鋭い眼光が、フードの奥で爛々と輝いていた。


「人に名を聞くときは、まず自分から名乗るものだ。礼儀も知らぬのだな。ゲンダイニホンでは家に引きこもり、この世界に来てからは女を囲ってお山の大将をしていたのでは、無理もないか」


 男の嘲笑を受け、シロウから殺気が迸る。


「……死ね! 〈カラミティ・ボルト〉ォォ!!」


 地下深くの閉鎖空間での戦略級魔法など、自殺行為だ。

 だがもっとも触れられたくない過去を鷲掴みされたシロウは、躊躇わずに全力の魔法を解き放った。


「ふむ。これは陛下もさぞかし、扱いやすかろう」


 怪しげな男がボソリと呟いた次の瞬間。災厄の雷は何の前触れもなく消失した。


「なあっ!?」

「——実験は成功。精霊術の保存と再現に問題はない、な」


 男はフードの下から伸びた手に、円筒状の物体を握っていた。

 中が中空になっていたそれを、満足そうに眺めた後に蓋をする。


「……相変わらず恐ろしい方ですね。隷属魔法の改竄に引き続き、また新たな術式ですか」


 自慢の戦略級魔法を容易く無効化され呆気に取られているシロウの傍ら、ハーミットはフードの男に向かって感嘆の声を投げかけた。


「なんのなんの。それもこれも、宝物庫の封印が解かれたお陰でな。いろいろと思い出せた成果だ」


 ヒヒヒ、と薄気味悪く笑う男。


「古代に眠らせた力が蘇ったのは、エリオット殿下だけではないということだ」

「……訳の分からねえことを言ってんじゃねえ!」


 我に返ったシロウは、憎しみを込めて叫ぶ。

そしてマスター・ソードを抜き、男に斬りかかった。


 ギィン!


「どけぇ! ハーミット!」

「落ち着くんだ、シロウ」


 神速の一撃は、ハーミットのラーゼリオンの宝剣によって受け止められていた。


「彼は敵ではない、反射の魔術師を倒すのに必要な人材だ」

「るせえ! そんな得体の知れねえジジィの力なんざいるか! オレの前世を馬鹿にする奴ぁみんな敵だ! 殺す!」


 ギリギリと剣を押し込んでくるシロウだったが、ハーミットはそれを抑え続ける。


「ククク……」


 ハーミットの後ろでそれを眺めながら、男は嗤う。


「本当に、見事に手懐けられておられますな。さすがの陛下でも、転生勇者が本気を出せば止められぬでしょう。さすがは前世でのご兄弟、ですな」

「ッ! テメエまで、リリンのほざいたホラ話をっ……!!」


 なおもシロウに揺さぶりをかけてくる男に、ハーミットはため息をついた。


「いいかげん、揶揄うのはお止め下さい。レオニング卿」

「!? な、なに!?」


 ハーミットの言葉を聞いて、シロウの剣を押す力が止まる。


「……いま、なんつった?」

「女神の飼い犬よ。陛下に免じてこちらから、自己紹介をして差し上げよう」


 空間に浮いたままの男は、すうっとシロウの前まで降りてくる。


「我こそは光の隠伏ライト・ハイド、栄光あるラーゼリオン王国の光を隠す者。その器の名は、クレイム・フィン・レオニングという。シロウ・モチヅキ、そなたが憎む男の父親だ」


 ***


 五歳に満たない幼子の、魔力の使用を禁ずる。

 それはこの大陸の唯一にして絶対である、女神教の教義だった。

 禁忌を破ったものには当然、罰がある。女神の恩恵が与えられなくなるのだ。

 具体的なデメリットとしては、一切の回復魔法が使えなくなること。

 そして強大な権力を持つ宗教団体でありながら医療組織でもある、女神教会の一切のフォローが受けられなくなることだ。

 魔物が蔓延り、街の外では絶えず命の危機が存在するこの大陸において、回復する術を持たないのは生きていく上での大きなハンデだ。

 誰も好き好んで、女神の禁忌を犯そうとする者はいなかった。


「見てっ、父たん! ふぁいやーぼーるっ!」

「……見事だ、エフォート」


 まだ五歳に満たなかったエフォートに魔術を教えたのは、父親であるクレイム・フィン・レオニングだった。

 その事実を知った母親は錯乱し、厳しく父を問い詰めたという。

 だがクレイムは、自分でも何故そんなことをしたのか分からないと言った。


「——お父さん、どうしてリリンを庇ってくれないの!」


 そして、政争に敗れたカレリオン家が一族すべて国民権を奪われ、奴隷に身を落とした時。

 エフォートは王国貴族でも力を持っている父親に当然詰め寄った。


「……なぜだ?」

「えっ?」

「なぜ私が、カレリオン伯を庇わなくてはならない。彼は弱かった。弱かったから利用され、家族もろとも捨てられた。そのような者たちを何故、助けなくてはならない」


 クレイムは冷徹な男ではあったが、冷酷な男ではなかった。

 エフォートはこの父と心温まる親子らしい交流などした記憶はなかったが、それでもこの時の父の態度には違和感があった。


「だって……リリンなんだよ! どうしてリリンが、奴隷なんかにならなきゃいけないんだ!」

「知らぬ。そういう運命だったのだろう」

「そんな!」

「そう……運命なのだ」


 そう呟いた父を、当時の幼いエフォートはなんて冷酷非道な男だと見限った。

 もし今の成長したエフォートであれば。そんな父自身に疑念を抱いただろう。

 エフォートに禁忌を破らせ、また旧友であったカレリオン家が奴隷に身を落とすことを見過ごした父が、純粋な意味での父ではなかったことに。


 ***


「〈ライト・ハイド〉とは、ラーゼリオン王国の文字通り地下組織だ。いや、正確にいえば組織ではないね。何しろその本体は、ここにいるレオニング卿ただ一人なのだから」


 ハーミットの説明を、どうにか剣を納めたシロウは苦々しい顔で聞いている。


「……妙だと思ったぜ。反射ヤロウは貴族だって聞いてたが、クーデターまで起こしたくせにその家のことがまったく話題に上がらねえからよ」

「レオニング家は触れることを禁じられた家、アンタッチャブルなんだ。息子は女神の禁忌に触れながら、都市連合との戦争で王国の危機を救ってしまった英雄。その父は、存在を口にしただけで不審死を呼ぶと言われる闇組織に身をやつした者としてね」


 ハーミットは中空に浮かぶクレイムに視線を向ける。

 ボロボロのフードを纏った髭面の男は、ニヤニヤと笑ったままだ。


「そいつは有名な話なのか? 反射ヤロウ自身も知ってる事なのか」


 シロウの問いに、ハーミットは首を横に振る。


「いいや。そもそも〈ライト・ハイド〉の名は王国のごく一部しか知らない。だが、不穏な組織が王国の地下に潜み、暗躍している事実は多くの人々が感じていただろうね」

「……その正体がジジイ、反射ヤロウの親だってことか」


 シロウに睨まれたクレイムは、あからさまに嘲るような笑い声を漏らした。


「ゲンダイニホン人は、皆こうもバカなのか?」

「なっ……!」

「我は、クレイムは器だと名乗ったではないか。〈ライト・ハイド〉の正体はと問われれば、その答えは実にシンプルだ」


 クレイムはばさり、と顔を隠していたフードを外した。

 露わになる、その風貌。


「っ……!?」


 シロウは、僅かにエフォートに似たその壮年の男の両眼が、異様な魔力と気配に充ち満ちていることに気づいた。

 黒目は存在せず、眼窩には黄金の光が液体のように揺蕩っている。


「我は千年を超える過去に神と魔王と戦い、この国を興した者。国父ラーゼリオンである。そしてこれより神と魔王と真に決着をつけ、この大陸をすべて支配する者だ」


 クレイムの中に満ちた存在は、転生勇者シロウに向かって朗々と宣言する。


「そうだな、シロウ・モチヅキよ。貴様流に言うのであれば、我は……この世界の真の勇者である」


 ***


「あいつが……俺の父親が、〈ライト・ハイド〉……?」


 エリオットが告げた言葉に、エフォートは小さくない衝撃を受けていた。


「ま、待ってくれ、エリオット王子。俺はそんなことは聞いてない」

「えっ……エフォートが、話せることはすべて話せって言ったから」


 事の重大さを分かっていないかのような表情で、エリオットは頬をポリポリと掻く。 


「いや、それはこの戦いの発端が、王子の中にいる国父ラーゼリオンだという説明を」

「ああ、でも……」


 エリオットは困った顔で、妹のサフィーネを見る。


「兄貴……フォート」

「サフィ、君は知っていたのか? 俺の父親が」


 表情を曇らせているサフィーネの肩を、エフォートは掴んだ。

 王女は小さく頷く。


「薄々だけど、ね。フォート、お父さんのことはわざと考えないようにしていたでしょう?」

「……それは」

「ごめんなさい。私にも確証があったわけじゃなくて、〈ライト・ハイド〉については詳しく調べる時間もなくて……」

「いや……すまない、責めているわけじゃない。サフィにそんな余裕なかったことは、俺が一番分かっている」


 エフォートは詫びて、頭を下げた。


「だけど、エリオット王子」


 そして改めてエリオットに向き直る。


「俺の父親が〈ライト・ハイド〉だったことと、この戦いの発端が国父ラーゼリオンであることに、なんの関係があるんだ?」

「〈ライト・ハイド〉は、ラーゼリオンだからだよ」

「……はっ?」


 シンプルに答えるエリオットだったが、一同は首を捻る。


「なあなあ、国父さんよ」


 ダグラスが代表して口を開いた。


「まだ信じられねえが、千年前のラーゼリオンはエリオット王子、アンタなんだろ?」

「そうだよ。そしてラーゼリオンは、俺だけじゃないんだ」


 まだ意味が分からない一同に対して、エリオットが更に言葉を継ごうとした時だった。


『——続きは吾が、喋ってやろうじゃねえかァ』

「——ッ!!??」


 部屋にいたすべての者たちの脳内に、直接その声が響いた。


「フォートッ!!」

「サフィ! みんな下がれ!! ……幾重にも紡げ! 反駁の命は永遠を旨とする! 〈アルティメット・リフレクト〉!!」


 エフォートが最大魔力で、反射魔法の魔術構築式スクリプトを展開した。

 部屋の中央に、物理、魔力、あらゆるものを跳ね返す正八面体が出現する。

 光すら跳ね返している為、外側からは立方体は漆黒に映った。


『おいおい、今日は挨拶だけだって。無粋な真似をすんなっつーのォ』


 キィィン……!


 反射魔法による檻に次々とヒビが入り、そして内側から容易く粉々に砕かれた。


「くっ!」

『お前まさか、転生勇者ごときに破られた反射が吾に通じるとか、思ってたのかよォ』


 その中から姿を現したのは、黒き肌、黒き髪、黒き瞳、黒き角、黒き爪、黒き牙、黒き翼。

中性的な見目麗しいその存在は、ヒト型をしているがヒトなどでは断じてありえない。


「ひぃっ……!」

「ぐぅっ!?」


 ミンミンが、ガラフが、突如出現したその存在から吹き荒れる膨大な魔力と瘴気、プレッシャーに当てられて、意識を失いかける。


「……アルティメット・リフレクトォォ!!」


 キンキンキン!!


 再び、エフォートの全力の反射魔法が展開された。

 今度は対象を包囲する形ではなく、仲間たちの眼前に盾になるようにだ。


「ま、まずいコレッ……離脱するよ、ダグラス!」


 異常事態にキャロルは、ダグラスの腕を掴んで転移を試みる。


『おっとォ。魔王からは逃げられないんだって』

「ぎぅっ!」


 キャロルは電撃を受けたかのように身を跳ねさせて、床に倒れこんだ。


「キャロッ!? ……貴様ぁ!」

「落ち着きなさいダグラス! 気絶しただけよ!」


 タリアが、激昂しかけたダグラスに飛びついて引き止める。


「……このぉぁ!」


 栗色の髪の少女が、腰の剣を引き抜いた。


「裂空斬・雷破鷲そ——」

「待つニャ! リリン手を出しちゃ駄目ニャ!!」


 レーヴァテインを構え、奥義を放とうとしたリリンの腕に、ニャリスがしがみついた。


「ニャリス!? 放して、コイツは」

「手を出せば死ぬニャ!!」


 必死にしがみついてリリンを止めるニャリスに、黒いその存在は笑いかける。


『賢明だァ、猫ちゃんよ。その剣を相手にすりゃあ、さすがに吾も撫でてやるだけとはいかねえからなァ』

「リリン!」


 ルースが戦斧を構えて、リリンの前に立った。


「ニャリスの言う通りだっ……コイツは、勝つとか負けるとかそういう次元の相手じゃないっ……!」


 滝のように脂汗を流しているルース。

 その体に流れる魔王創造種、オーガ混じりの血が、黒い存在が絶対に敵わない相手であると叫び声を上げていた。


 そしてそれは、同じビスハの者であるギールも同じだった。


「姫様っ! 下がってください!」

「……大丈夫です、ギール」


 サフィーネは黒き存在の前に一歩、歩み出る。

 その前にエフォートが反射壁を展開しているが、さながら竜の顎の前に翻る紙一枚だ。

 物理反射の能力は低減され、王女は黒き存在の姿を視認できた


「久しぶりね……魔王。あの幼女の姿が懐かしいわ」

『こっちが本来の姿だァ。それに久しぶりっつっても、まだひと月ぐらいだろォ? あっという間に、よくここまで力をつけたもんだな、王女様ァ』


 ニィと笑う、〈魔王〉。

 その笑顔は爽やかで、裏がない。


『それに、良かったなァ。想い人とゴールインしたじゃねえかァ。吾は応援してたぜェ』

「冷やかしていただけでしょう。……それで?」

『うん?』


 サフィーネの問いに、首を傾げる魔王。


「兄の代わりに喋ってくれると言ったでしょう? 早く説明して下さい。その為に出てきたのでしょう」


 圧倒的な力の片鱗を見せつける魔王を前にして、サフィーネは動じずに堂々と立つ。

 その後ろには反射の魔術師と、国父を内に宿した兄が控えていた。


『……たまんねえなァ、それでこそ吾の敵だァ』


 魔王はまた、楽しそうに笑う。


『安心しな、エフォート・フィン・レオニング。ここにいる吾は分体だァ。大した力は使えねえ。もっとも完全復活した吾の分体だから、前の魂だけの幼女ガキとはわけが違うけどよォ』

「それで、この力か」


 エフォートはギリッと歯軋りをする。


(……だが)


 一瞬、周囲を見回すエフォート。

 その様子を見て、魔王は高揚を抑えられない。


『いいね、いいねェ! またなんか企んでるねェ! ……さてじゃあ、ラーゼリオンのイケメン小僧の話の続きといこうかァ』


 魔王はその場でぴょんぴょんと飛び跳ねてから一同を見回し、そしてグイとエフォートとサフィーネの前に顔を近づけた。


『……千年前、吾は勇者ラーゼリオンの魂を引き裂いてやったんだよォ。そうしなきゃ……また女神のヤツに、魂を弄ばれそうだったからなァ』

「……ああ。そうだったな」


 魔王に促され、エリオットはまた語り始めた。

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