第4話
〈水曜日〉
ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。
レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。
ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。
レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。
ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。ハ。
レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。
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レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。
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レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。レ。
躁鬱病状態の天候下、毎朝活動する陸上部の部員達は昨夜の雨の残り香を感じて校庭から引き返し、別棟階下のピロティへと移動を始めていた。途中、見慣れた女性がその中の一人に向かって声を掛け、何か指示を受けたのか彼女が足を向けたのは元居た棟の教員室。貸出表に記名して得た鍵と共に、今度は校庭奥に建つ体育倉庫へと向かう。
無事着いて開錠し中へ身を乗り出した途端、巨大な鉄塊のようなものが彼女の頭上に降り注いだ。恐らく広範囲に重低音が轟いただろうが校舎からは距離があるので心配は無い。彼女の動作停止を確認したわたしは直ぐに倉庫内へ降下し、落下を遂げた物品の数々を抱え込みながら復帰した。寂しくなった雨天世界に資源が帰って来たけれど、活気を取り戻すには無残な格好となり、崩壊と名付ければ馬鹿にでも価値が伝わりそうだなと思った。
作戦は以下のような思考を経た。まず昨夜校内が無人になった頃、二人で先輩の拠点の素材に触れながら倉庫へ降下した。今にも崩れそうだった建築を参考に、柱を突っ張り棒として上手く組合せ、その上に人体を潰すには十分な重さの台座を二人の力で設置し、開扉して入る者に鉄槌が下るように仕掛けた。
校内の他の場所や晴天下の校外は監視カメラ含めて目撃リスクが高く、校外は場所により事件化しない可能性があり、陸上部員の日比谷が赴いて不思議の無い体育倉庫は目撃リスクが低く協力者の監視も及ばないような室内かつ、一日通して一度は人が訪れるので事件化リスクが高い施設という条件を満たしていた。問題は殺す時間帯だったので早々と誘導出来て良かったけれど、校庭での朝練が中止にならない場合は別の時間に仕向けるか、体育教師等が現れれば回収して後日似たようなことをしただろう。
わたし達はそのまま復帰し、日比谷を口から出任せで倉庫へと誘う為に、元配達員でわたしの協力者と特定されない先輩が地表世界に降りる必要があった。日比谷はわたしが雨女になったことを知らず、仮に先輩を警戒するにしても翌日は晴天で第一身分化すれば日比谷の油断を突けると確信していた。それさえ警戒していたとして、肝心の脅威が頭上から降ってくるとは思い付くはずがなかった。敢えて正面から日比谷と戦う別案として、雨天時第二身分のわたしが第一身分化した先輩と手を繋いで晴天日に繰り越し、日比谷を挑発して人気の無い所へ連れ込み、第一身分と勘違いしたわたしに飛び掛かった瞬間手を離し、先輩が日比谷を殺して事件化するという流れを考えたが、物体に頼るよりは殺害可能性が高い代わりに、目撃リスクが比較的高く却下となった。
先輩も痛いのは趣味ではないだろうから説得に努めるつもりだったけど「別に良いけどビジョンを聞かせて?」とまたも乗り気なのでプレゼンすると「やる価値あるね」顎に手を当てアニマルスピリットな採用を貰った。ここまでわたしに味方するのは同じ気質のシンパシーか第二身分特有の行動力か。
「じゃあ殺して頂戴な」共同作業を終えた先輩は一汗拭って包丁を差し出す。実際に舌を噛む勇気は溢れず、事件化したわたしの家は立ち寄れないので死に方を勘案していた所、「何かに使えるかと思って」先輩はわたしの所有していた包丁をポケットから出して見せた。
「わたしの手を汚した方が良いですか?」
「君が殺してくれたら楽に転生出来る気がする」新手の嫌がらせとも取れる台詞で渋々急須を構える。これで三人全員刺す側と刺される側の気持ちに寄り添えるね。
「誘導した後はどうします?暫く第一身分で隠居生活するのも乙だと思いますよ」
「いや自殺するよ。日比谷ちゃん達に暗殺されるなら自刃した方が心臓に優しい」
二時間後、体育倉庫には人集りが形成されていた。先輩は学校を出て公園とは反対の方向へ歩き続ける。久し振りの青空散歩に雨女とは言え足が弾んでいたりするのだろうか。自殺を決行すべき夜まで先輩は歩みを止めず、事件現場の多い街で死に場所選びも一苦労ながら、遂に適当な空き地のトイレを見つけた。わたしの方へ手を振りながら宣言通り自身に手を下す。
はぁ、これでやっと血生臭い物語に終止符を打った。明日何処に転生するのか賭けて時間を潰そうかな。兎に角わたしは雨天世界でゆっくり過ごすとするよ。
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