上手に「首を作る」母を見て育ち、その技を受け継いだ女性のお話。
この「首を作る」というのはおよそ文字通りの意味で、人の生首を加工してそのまま置いておけるようにする作業を指します。
現実にはおよそ考えにくい、何か架空の慣習のようなもの。
それがこの作中世界では常識として存在していることの、その描かれよう自体が本作最大の魅力です。
首を作るという行為に対する、主人公やその母の、ものの見方や価値観のようなもの。
それを通じて彼女たちの存在や関係性が描かれているのが、読んでいてもう単純に面白い……!
作品自体は(絵面的にも、全体の展開をとっても)確かにホラーには違いないのですけれど、でもこの点においてはファンタジーやSFのような、「作られた世界の手触りそのものの愉しみ」があるのが本当に大好き。
さりとて決してそればかりでなく、お話の展開にもしっかり惹きつけられます。
ですが、そこに関してはネタバレになるため触れません。是非とも本編で味わってみてください。