第25話 動く心霊兵器
数年前に居酒屋で名前も知らない中年の男性から聞いた話だ。
サラリーマンである彼の同じ会社の同僚(Aさんとする)が
ある時、お化けの出る呪いのトンネルに
嫌いな別の同僚(Bさんとする)を友人二名とわざと連れて行ったらしい。
傍若無人なそのBさんは、半ばAさんを馬鹿にしながら
ついてきたそうである。
Aさんは実は友人たちと丹念に下調べと
さらに下準備を重ねてきた。
その下準備とは、自分たちが呪いにかからないための防御策と
Bさんを確実に呪うための作戦である。
友人たちもAさんからに聞かされた
Bさんの普段の傍若無人ぶりに憤慨しており
ノリノリだったそうである。
彼らは三名はお札を買い集め、先祖の墓にお参りに行き
数珠や塩を携帯して、身を清め、とにかく呪いから
自分たちを守るありとあらゆる手段を尽くし
まったくノーガードのBさんを
地方最強と恐れられている廃トンネルへと連れて行った。
詳しく状況を書くと長くなりすぎるので
結果を簡潔に述べると、細かい霊障が相当な数起きて
そして、帰りの車にも謎の手形がいくつも
ペタペタと付きまくっていた。
Aさんと友人たちは成功したと思った。
Bさんはケロリとしているが
そのうちに祟られて、弱ると思っていた。
AさんたちはBさんを家まで送った後に
計画通り、お祓いに行き、荒塩などを使って身を清めたそうだ。
数日後、結果が現れ始めた。
Bさんのデスクの上に妙なへこみが出来ていた。
まるで拳で殴ったような。
Aさんはほくそ笑んでいたが、Bさんはまったく気にしない様子で
下敷きを敷いてデスクを使い続けた。
次に、最近Bさんの家に霊障が起こっているのではないかと
同僚の間で噂話が広まった。
Aさんはあと少しで、Bさんが弱ると期待していたのだが
彼はその後、一週間経っても二週間経っても変わる気配は無かった。
その間も霊障は続いた。彼のロッカーの扉に手の形がついていたり
残業しているとBさんのデスクから笑い声が聞こえると噂が出たり
確実にBさんは呪われていた。怪異もエスカレートしだしていた。
しかし、本人は血色もよく、無遅刻無欠勤で会社に出てくる。
しかも以前より傍若無人ぶりも拍車がかかっていった。
そのうち、彼らの上司の課長が胃潰瘍で入院した。
そして直属の部長も胆石と結石のダブルコンボで入院して
さらに、社長が体調不良になり、一時、彼らの勤める会社は業績が傾いた。
そんな中、Bさんはケロリと毎日出社し続けた。
何かがおかしいと気づいた副社長がすったもんだの末にお祓いを呼んで
そして、その後、一見関係ない辞令でBさんは遠い町の支社に転勤になった。
本社は立ち直ったのだが、今度は支社が瞬く間に財政不振になった。
語学が堪能だったBさんはさらにアフリカ大陸の販路開拓に一人で飛ばされた。
当然のように支社は即座に健全に戻った。
Bさんは全く問題なく、アフリカで元気に働いているらしい。
向こうでも、妙なことが起こっていると本社では時折聞くとのことだ。
未だに何かを引き連れているようだ。
「Aたちは、動く心霊兵器を造ったんじゃないかと
今では本社で噂されてますよ」
居酒屋で話の主からそう言われた自分は
笑っていいのか何なのか
曖昧な表情を浮かべ、適当に頷いていたのをよく覚えている。
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