第21話 生霊

短い話だ。


あるサイトで

「自分の生霊戻ってこい」

そう寝る前などに念じると、日中に無意識で色んな人に

飛ばしている恨みや妬み、愛欲の渇望などの念のこもった自らの生霊が

自分の魂の中に帰ってきて

外に設置された生霊が本体から吸い出しているパワーが

魂に再び戻ることにより、本来もつ活力が回復すると書かれていた。

当時すでにいい大人だった自分(バカ)はさっそく

試してみることにした。


そして律儀にも、毎日、寝る前に試してみたのだが

なんとなく、日ごろの恨みつらみが浄化された気がして

いつの間にか日課のようになっていた。


そんなある日、先に書いてしまうと「自分の」の部分を忘れて

「生霊戻ってこい」

と飲み過ぎて酔っ払った自分は呟いてそのまま寝入った。


その夜の夢は未だに覚えているが

老若男女のあらゆる知らない人たちが

あけっぱなしにしている寝ている自分の口を

無理やり押し広げて入ってこようとしているという内容だった。

嫌な汗を大量にかいて、目覚めると、その瞬間に

「チッ」「チッ」「チッ」「チッ」

何重にも重なった別人たちのものであろう舌打ちが

聞こえたことを覚えている。


くれぐれも皆さんは同じことを試すときに

「俺の」とか「私の」をつけ忘れないように

していただきたい。

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