第10話 平面
うちの愚弟は、中高のころは軽いヤンキー……つまり不良だった。
とは言えあくまで"軽い"ので暴力的な行為や重い違法行為はやらないが
それ以外の全てをやっていた感じである。
煙草、酒、女、サボり、ついでに不良行為ではないがバンドもしていた。
いや、訂正しよう。
ヤンキーというか、メンタリティ的には
ロッカーとかパンクスに近いのかもしれない。とくに女関係は、彼は異様にモテたので色々と生々しい話がなんと小学校高学年からある。
あまりに生々しい上に、子供同士の性愛の話を書くのはさすがに躊躇うので割愛するが。
そんな感じで若年のころからヤンチャし続けていた彼が中三の時に見た幽霊の話である。
いつものように団地の坂を上がって
友達と別れ、一人で実家へと帰っている時だった。遠くに彼は異様な人影を見かけた。
人影はモノクロなのである。
そして、それはゆっくりとこちらへと近づいてくる。近づいてくる人影がはっきりしてくると彼は戦慄して動けなくなった。
百八十弱の痩せた長身、広い額と堀の深い顔
見慣れた紺のカーディガン姿、二年前に亡くなった、母方の祖父だったのである。
そして祖父は、モノクロなだけでなく、ペラペラだった。
つまり人型の厚紙パネルのように
平面がそのまま立っている感じだったのである。ペラペラでモノクロの祖父は、弟の三メートル手前まで来ると動けない彼をジッと睨みつけて、そして消えたそうである。その時の気持ちを
「全身が泡立った感じだった」
という風に弟は、後日語っていたのをよく覚えている。
なぜ、平面の祖父が出てきたのか
後年、母がヒントのようなものを与えてくれた。女関係で、親同士の真剣な話し合いが行われるような問題を起こしていたらしい。
詳しくは教えてくれなかったが、親として冷や汗をかいたとのことだ。
平面の祖父は、弟へ人としての道を踏み外さないように警告しにきたのかもしれないな
などと、なんとなく思う。
少なくとも、その後少しだけ彼は大人しくなったので、多少は効果があったのかもしれない。
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