故意

俺達は呑気にそんな会話をしていたんだが、

まず初めに俺らの前に現れたのは学園のマドンナ、氷室さんだった。

Aクラスからわざわざやって来たようだった。


「おはよう山吹シンジくんと、山野シンヤくん」


「あ...」


俺たち二人は驚いて顔をあげた。

俺はシンヤの苗字とかここでみんなに伝えた覚えはないが、俺たちふたりの名前はよく似てた。だから先生もたまに名前がごっちゃになるが、俺らを見分けるのはまぁ、眼鏡のある無しってところか。眼鏡をかけてるのが山吹シンジで、かけてない方が山野シンヤ。俺は眼鏡でシンヤは裸眼でもいける。

顔の区別は簡単だが、名前はちょいややこしい。


「な、名前...!!!覚えてくれたんだね!」


シンヤは素直に感動してた。


「うん。男子に聞いたら教えてくれたの。

山吹シンジくんとよく一緒にいる男子の名前なんていうのって?って聞いたの」


「そ、そっかそっか!!」


シンヤの奴は明らかに浮き足立っているようだった。


さて、俺の方はと言えば、なんだか、

マドンナの氷室さんに凄まれていた。



「ねぇ、山吹シンジくん。

昨日、何か道端で拾ったんじゃない?」


「へ?拾った??」


「しらばっくれないでよ。ピンク色のなにか、、落ちてたんじゃないの??

あの喧嘩騒動の後よ...」


「ピンク色の何か...??」


俺はしばししらばっくれ、


演技力を駆使して、


「あ、

ああ、あれかー!」と机にかけた鞄に視線を落とした。


徐に鞄のなかから取り出し、例のものを渡した。

やっぱりこれ、氷室さんのハンカチだったらしい。


「ちょっと、なんで連絡してこなかったわけ?」


御礼を言われるかと思ったらちょっとした叱責だった。


「あなたから電話かかってくるのずっと待ってたんだけど?」


アイロンもかけて、洗濯もしてある。


叱責のあとには

ありがとうの言葉が聞けたが、なんなん、

俺、電話しなかったこと怒られてるし。

しかも、もしかして、

ハンカチを落としたのはもしかして意図的とか??



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