勝敗

「ああああ...」


数分後。

声にならない悲鳴をあげて地に伏したのは不良共だった。


俺はやり過ぎた(本気を出し過ぎた)ことを後悔

し、目撃者がシンヤとマドンナだけであることをあたりをキョロキョロと見渡して確認し


「シンヤ、また明日な!」と

何事もなかったかのようにアスファルトの地面に放り投げた手提げ鞄を掴んで帰ろうとした。


シンヤは俺が実は空手経験者でガチで強いなんてことは知る由もないから(俺は基本的にゲームのことと女の話以外はシンヤとしない)


(それに小学生時代、空手の大会もじいちゃんに反抗してろくに出てないから中学時代のシンヤは俺のガキの頃の名声を知らない)

優勝旗も賞状も俺にとってはなんの意味もないので物置に隠してある。

さて。

事の顛末を受けて直立不動で動かず。

マドンナもマドンナでぽかーんとしてた。

ま、それでいい。

俺は別に周りの連中に自らを深く知ってもらう必要性もなければ、自己承認欲求もないんだからな。キャーッすごーいなんて言われるために空手の稽古に励んでいたわけではない。あくまで嫌々だ。じいちゃんに怒られないように、嫌々。



やがて、シンヤが

「お、おう。また明日な!」


とハッとして俺の背中に言ったときに、

誰かに左手首をぎゅむ、と掴まれたので

俺は硬直した。


「へ?」


見ればやたらに色白の細い指。

そんでもってサクラ色のマニキュア。


どー見てもこれ、女の手ですね...

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