昼飯

「私が作る!」


「は?」


「私がシンジのお昼を作ってあげるって言ってんの!!」


「いや、よくわからんし...。お昼を作るとか

意味不明だし」


「んもー、分からず屋だなぁ!

私が!シンジのお昼ご飯を作ってきてあげるって言ってんの。つまり、お弁当を作って来てあげるから明日はシンジママに

お弁当作らなくてもいいよ、って言ってくれたらそれでいいっ!」


「いや、でも...母さんはもう明日の俺の昼飯のための食材をスーパーで買ってしまったと思うし...仕込みをしてしまった感じはある。

母さん、何かにつけて前倒しして早いから。てか、そもそもが何故、おまえが俺に昼飯を作る必要があるのか理解できんし...」


「それは...その...!!」


シンヤの顔をチラリと見たら、

俺と同じ、やはり困った顔をしていた。


そんなところで昼休みが終わり、

橘ヒナタは、


「ほ、本当はまだ喋っていなきゃいけないことあるけど、放課後でいいわ!」と

一組の教室に帰って行った。


「なぁ、シンヤ。俺にお弁当を作ってくるとか、あいつは一体、どうしちまったんだろうな...?」


「いやー、益々わからんですわ。

で、おまえはどうすんの。明日の昼飯...」


「取り敢えず、母さんの作る昼飯をいつも通り、持って来ておまえと食べるよ。ヒナタのやつ、

ただ俺に、作ってくる!って言ってみただけかもしれないし。あいつ、女子力そんな高くないんだ。小学生のときから家庭科苦手だったからな...幼馴染である俺はよく知っている。あいつ、林檎の皮剥きとかできなくて

俺にやらせたんだからな」


「そうなると、そうだな。口から出まかせかもしんないな...。

おまえに作ってきてあげる!ってのが

そもそも変だ...。あれかな、藤島とセットで作って、そのうちのひとつをおまえにあげるのかなぁ...?」


「さぁな...。おっと、シンヤ、

次は音楽。そろそろ、音楽室に移動しないとやべぇぞ」


「お、おう...」


俺たちは慌てて教科書やら楽譜のファイルやら纏めて、急ぎ足で音楽室に向かったのだった。

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