距離

更に不可解な出来事が生じた。

何故かふたりは、俺の真横にやって来たのだ。特に俺らを気に留めることもなく、

音ゲコーナーに陣取った。

そして、イチャイチャし始めたんだ。


「え、え、え、...」


シンヤのやつが堪らず声をあげたのだが、

大慌て両手で口に蓋をしてた。


二人が始めたのは『シンクロニカ』。


楽曲に合わせてタッチパネルを操作するふたり協力音楽ゲーム。ひとりで遊ぶこともできるのに、のにのに!!

シンクロニカは、

ふたりでの協力プレイに対応していることが特徴で、『太鼓の達人』のDNAを受継いでるゲーム。楽曲の種類は、J-POPやボーカロイド、そしてアニメやゲームなどなど。


「私、ゲーセンって初めてなんだよねー」


ヒナタの声が聞こえて、

更に藤島の声まで俺の耳に届く。


「俺もあんまり来ないからなぁ。

ま、でも、こーゆー音ゲーなんてのは

感覚でできるものっしょ!!」


俺の真横に藤島が腰をかけ、

その向こうにヒナタが座った。


シンヤが俺のフードを引っ張った。

もういいや、行こう。

シンジ、もう出よう!と言いたげだった。

言われずとも。合図されずとも、俺は

帰る気満々だった。

とっととこんなところ、出てってやるぜ!!


席を立ち、といってもまだ座っていなかったのだが、出口へとそそくさと向かった。

くそっ!と思いつつ、振り向くと、ふたりの距離感がやたら近くて、俺はイライラした。

折角の日曜日。ゲーセンで楽しむために来たのに、散々な目にあったぜ、ちくしょうっっ!

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