第414話 女商人は、いよいよ遺跡へ
「ホント、ひどいよぉ!おかげで俺は何時間も山の中を彷徨ったじゃないか!」
「それについては、悪かったと思ってる。ごめんなさい。でもね……元を辿れば、すべてレオのセクハラが原因でしょ?それを棚に上げて、そんなに怒らなくてもいいんじゃない?」
「そ、それは……そうかもしれないけどさ……」
だけど、レオは言いたい。そのセクハラの原因は、そもそも「非常事態だから」といって、夜の営みをずっとお預けにされていることにあるということを。
(しかも……カミラの奴まで、アリアに遠慮して相手をしてくれないし……)
先日、ついに我慢できなくなって、エデンのカミラの下に行ったものの……
『ごめんね、レオ。わたし、恩のある女王陛下に……もう不義理なことはしたくないのよ。あなたのことは嫌いじゃないけど……わかってくれる?』
そう一方的に告げられて、泣く泣く家に帰ったのだ。
だから、目の前にプルンプルンと揺れるおっぱいを見れば、反応してしまうのは無理からぬことだとレオナルドはアリアに言いたかった。もちろん、そんなことは怖くて言えないが。
「まあ、アリアちゃんももうその辺にしましょ。別に触られても、犬のようになめられても減るもんじゃないんだから」
「えっ!?なめられたの!」
「ち、違う!さ、さすがにそこまでしていない!」
そう言いながら、レオナルドは疑惑を否定した。……が、一方でシンディの大きな胸に自然と目線が向く。
(減るもんじゃないのなら……)
本音で言えば、なめたり吸ったりとやってみたい気持ちが沸き上がってきた。そして、そのあとは流れに身を任せて……
「いて!」
「……今、よからぬ考えをしたでしょ。言っとくけど、部下の奥さん寝取ったら、ぐちゃぐちゃに潰して離婚だからね。その辺、わかってる?」
思いっきり足を踏みつけたアリアがレオナルドに耳元でそう囁いた。表面上は穏やかではあるが、目は笑っていない。レオナルドは勇者の末路を思い出して震えあがった。
だが、そんな二人の遣り取りにシンディはうんざりしたようにため息を吐く。
「はぁ……それでもういいかい?そろそろ、先に進みたいのだけど」
「あ……ごめんなさい。どうぞ、お願いします」
ここは、遺跡の入り口だ。そして、シンディは中に入るにあたって注意事項を告げる。
「いいかい?壁には不用意に触らないこと。どんな罠があるかわからないからね。あと、脇道には絶対に入らないこと。例えそこに宝があってもだ」
「宝箱があってもですか!?」
「そうだ。絶対には言えないが、罠である可能性は否定できない以上は触れるべきではないと思う。まずは、目的を果たすことを優先すべきだろう」
アリアはちょっぴり残念そうな顔をしたが、それでも言っていることは間違っていないと思い、従うことにした。
「あと、レオナルド君。中では攻撃魔法は使わないでね」
「え……?」
まさかそのようなことを言われるとは思っていなかったのだろう。レオナルドはどういうことなのかと説明を求めた。
「簡単な話よ。この遺跡ができてから、長い月日が経っているのよ。そこで、遠慮なく魔法なんかぶっ放して見なさい。下手すれば天井が崩れて生き埋めよ。まあ……アンタは転移魔法で逃げれるかもしれないけどね……」
自分や場合によってはアリアも、逃れることはできないかもしれないのだ。
「だから、約束してもらうわよ。中で使う呪文は、探索魔法や照明魔法、緊急時の脱出魔法といった補助魔法のみにしてね」
「もし、中にゴーレムとかがいて、攻撃してきたら?」
「そのときは、脱出魔法でここに戻る。手間だけど、命を失うよりかはいいわ」
一切のためらいもなく、シンディはそう言い切った。そこまでいうならばと、レオナルドも承知する。
「それじゃ、早速中に入りましょう。レオナルド君、全員に防御魔法をかけて、それから照明魔法と探索魔法を展開してくれる?先頭はわたし、二番目はあなた、三番目はアリアちゃん。この順番で行きましょう」
そして、逸れないようにと腰に紐を巻いて、さっき言った順番で繋げた。いざという時は、レオナルドが二人を引き寄せて、転移魔法を発動する。そういう算段だ。
「それじゃ、早速中に入りましょう」
いつまでもここで時間を潰していても、得るものは何もないのだ。シンディは二人に声を掛けて、一歩、二歩と入口から中に入っていく。その先に何があるのかは、まだわからない。
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