第109話 悪総督は、成敗される
「ぐひひひ……待たせたな。それでは、楽しませてもらおうか」
ジュリオが部屋に入ると、すでに女は縛られてベッドの上に転がされていた。
「いや……来ないで……」
アリアは必死に逃れようと体を動かそうとする。……が、手足を縛られた状態では幾ばくも動くことはできなかった。
「抵抗しても無駄だよ。どれどれ、まずはそのシャツの中身の果実を見せてもらおうか?」
ジュリオは鼻息を荒くしながら、アリアに近づき、覆いかぶさろうとした。すると、拘束されていたはずの縄が突然ほどけた。
「臭い息を吹きかけるんじゃないわよ!!」
バギっ!!
「!!!!!!!!!」
アリアに股間を思いっきり蹴られて、ジュリオは声にならない唸り声を上げながら、ベッドから転げ落ちた。
バン!!
そして、ほぼ同時に扉が開かれて、クリスとレオナルドが部屋に入ってきた。
「ジュリオ・リヴァルタ侯爵。国家調査官のクリス・アズナーヴル大佐です。人身売買並びに婦女暴行未遂の現行犯で逮捕します!!」
悶絶して脂汗を流すジュリオに、クリスはそう宣告する。
「ばかな……。なぜ、ここが……」
息も絶え絶えに、ジュリオは絞り出すように言葉を吐いた。
「なぜって、わたくしどもがあなたたちを嵌めたからですよ、閣下」
「は、はめた?」
「そう。そもそも、ニーノの人攫いは失敗に終わったんですよ。わたくしどもはそれを利用して……って、聞いていないか」
見れば、ジュリオは気を失っていた。痛さに耐え切れなくなったのか、それとも、嵌められたことを悟り、ショックを受けた結果なのかはわからないが。
「それじゃ、総督を拘束して運び出して」
「はっ!!」
手際よく、男たちが入ってきて、総督の捕縛と搬送を手配していく。但し、女物の服を身に着けたままだ。
「レオ……。これは一体?」
乱れた衣服を整えながらアリアが訊ねると、レオナルドは少し遠い目をしながら言った。
「いやぁ……逮捕する際に、もしも戦闘が発生しては……と思って、女体化魔法を解除したんだけどね、思った以上の地獄絵図が……」
確かに、女性の姿のままだと筋肉が落ちていたから、戦闘になった時には不利になるだろう。その気持ちはわかる。わかるのだが……。
「美女が……一瞬で、マッチョな男に……ははは、これは夢だ。きっとそうに違いない……」
「すみませんでしたぁ!!すべて話します!!話しますから、その筋肉、離して!!」
「詐欺だぁ!!こんなん詐欺だぁ!!やり直しを要求するぅ!!」
(きっと、獄中でも夢に見るだろうな……)
連行される紳士たちの姿を見て、いくら悪人相手とはいえ、アリアは気の毒に思った。
「ところで、あの司会をしていたアルバネーゼは?」
「あれ、そう言えば……」
アリアの言葉に、連行されていく連中の中にカストの姿がないことにレオナルドも気づいた。
「おい、司会の男……カスト・アルバネーゼはどこに行った!!」
レオナルドが近くにいたクリスの部下を捕まえて訊ねるが、彼も知らないようで、トンと要領を得ない。
「レオ……」
「わかっている。ニーノの話では、アイツがブラス亡き今、事実上の首謀者だ。逃がすわけにはいかない!!」
そう言って、魔力を発動させると目を瞑った。
(……ここから、約300m北を……ん?曲がった?今は西に向いて……)
「アリア、クリスさんに言って、この辺りの地図を貰ってきてくれないか?」
「ええ、わかったわ」
アリアは足早に行動に移した。その間も、レオナルドの探索は続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます