第17話 遊び人は、忘れ物を取りにうちに帰る
ヤンと別れたレオナルドは、それから1時間ほどしてオランジバークへと戻った。
(……今更、かもしれないが……)
それでも、何もしないよりかは、と決意し、レオナルドは再び【透明化】の呪文を唱えると、村長の屋敷に忍び込んだ。
時刻は深夜0時を回っていて、屋敷の中は暗く人の姿は見えない。この家には、村長の妻のマチルダとその二人の息子——レオナルドにとっては母と弟が住んでいるが、どうやら寝ているようで、物音ひとつしない。
そんな中をレオナルドは、昼間見た村長の執務室へまっすぐ進む。扉には念入りに鍵がかけられていたが、難なくこれを【解除】して部屋に入った。書架は開かれており、地下への階段は現れていた。
「ぐへへへ。さあ、そろそろ、入れさせてもらおうかなぁ!」
階段を下りたレオナルドの耳に……悪党にありがちなゲスなセリフが聞こえた。足を速めて檻へ近づくと、ブラスがズボンを脱ぎ飛ばし、その汚いモノをむき出しにして、シスターに見せつけながら迫ろうとしているところだった。
(永遠に使い物にならなくなりやがれ!!【ED】!!)
レオナルドは、無詠唱で魔法を唱えた。
「あれ!?勃たない?なんで?」
急に萎れた自分のモノを見て、ブラスは焦っている。その声を聞きながら、レオナルドは周囲を改めて確認する。幸いなことに、この部屋には村長もその取り巻きもいなかった。
レオナルドは檻を潜り、そっとブラスの頭に手を置くと、最上級の【睡眠魔法】を唱えた。
「はれ!?……ぐぅうう……」
(これで、こいつは朝までぐっすりと眠るだろう)
それは、港で使った物より、1段グレードが高い魔法。ごっそりと魔力を持っていかれるから、いつもは使わないようにしているのだが。
寝台にうずくまるように眠りこけてしまったブラスを脇に寄せて、レオナルドはシスターを見た。修道服は引き裂かれ、乳房はむき出しになっている。ただ、昼間同様に目はうつろで、レオナルドにその『あられもない姿』を見られているというのに、反応はなかった。
(まいったな……この姿、めっちゃそそるわ……)
レオナルドの下半身は全力で反応している。お駄賃代わりにちょっとくらい触ってもいいかなって……誘惑にかられるが、それではこの目の前でだらしなく倒れているエロ親父と同じだと思い、床に落ちているシーツを頭からかぶせた上で抱きかかえた。
正直、もったいないかな……って思いながらも。
「さあ、ここから逃げ出すぞ。おとなしくしててくれよ」
レオナルドは、抱きかかえる彼女に声をかけるが、反応はない。しかし、ためらっている時間はない。こうしている間に村長が現れれば、レオナルドはともかく、彼女の脱出は不可能になるだろう。
ゆえに、レオナルドは駆け出した。地下室から執務室に上がり、そのまま玄関から飛び出し、彼女を抱きかかえたまま馬に跨った。そして、一先ず村の外に向かって駆け出した。
「ひっ!?幽霊!?」
酒場帰りの酔っぱらいが、誰も乗っていない馬が白い何かを宙に浮いてともに通り過ぎていくのを見て叫んだが、レオナルドは気にせずに突き進む。
(ひとまずは、ヤンのところにでも預けるか……)
さっき、貸したばかりの借りを回収するために、村を出たレオナルドは馬を西に進めるのだった。
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