それ
それは地の底から現れた。あるいは天から降ってきた。それははじめ、英雄を作り出した。神を語った。天地の始まりを歌った。
それはさまざまな姿で人々の前に現れた。
人々はそれを見たり聞いたりしては、新たな世界を築き上げ、壊した。新たな世界を知り、時に希望を抱き、時に絶望を弄んだ。死を思い、生を感じた。
それはいつまでも飽きられることがなかった。いつも新しいそれが生み出された。それはどこから来るのだろう? その疑問は尽きることはなく、何のためにそれが存在しているのか、わからないまま、それは今日も産声を上げている。
時に人を束ねるため、時に人を導くためにそれは使われた。国の都合のためにそれが変えられることもあった。殺されることもあった。それは大きな光であり、そして闇でもあった。
それは時に人を慰めた。心の傷を癒す一助となった。それがもたらすエネルギーは、人の考えや人生を変えてしまうほどのものだった。それに魅せられて、それを作り出そうとするものは大勢いる。今この瞬間にもそれを人は生み出しているのだ。
それは学びにもなった。それを通し、いろんな感情に出会い、いろんな人に出会うことができた。行ったことのない国に行き、知らなかった歴史に触れることができた。それは教科書以上に真実を語ることもあった。それを研究するものは大勢いる。果てることのない宇宙よりも深遠なそれは、どこまでも深く、しかし身近な存在である。
それを通して、人は成長した。あるいは退行した。それでもそれの力を信じ続けた。それを生み出し、受け継いだ。それは化け物のように、自ら動きだし、人々の間を駆け巡った。地球を一巡するそれもいた。それは死ぬことがなかった。
それはいつまでも、おそらく千年先までも、生き続けるのだろう。
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