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2022年5月7日 00:00
自主企画「罵倒されたい作品」にご参加くださり、ありがとうございます。 企画の趣旨に則り、「罵倒」させていただきます。 まずタイトルですが、「世界」では漠然としすぎているように思います。キャッチコピーに「多様な世界」、紹介文には「様々な世界を描いた短編集」とありますが、そういうことは星新一のショートショートにも芥川龍之介の全集にもそれ以外の誰かの小説にも言えることです。 言葉を選ばずに申しますと、春雷さんがこの作品をどんな短編集だと捉えているのか、どんな読者にこれを届けたいとお考えなのか、さっぱり分かりません。春雷さんの作風も力量も知らない人が『世界』というタイトルと紹介文を見ても、何の興味も引かれないと思います。たとえばの話、内容は分からないにしても「人間と世界」や「僕と世界」、「いつか来るかもしれない未来」、「隙間時間で読めるブラックユーモア短編集」などのタイトルでも、「世界」だけよりはマシでしょう。短編の中に「これだ!」という自信作があるならそのタイトルを持ってくるという手もあります。とにかく、もう少し具体性のあるイメージ(もっと言えば春雷さんのセンスを感じさせてくれるフレーズ)を提示しないと、もったいないと思います。 で、本作『僕の旅』なのですが、これもタイトルに悩んだのかなという印象です。たしかに本文中にそういう比喩は出てきますが、他にも比喩があってぶつかっている状態ですし、タイトルとしては微妙というのが率直なところです。 身も蓋もないようですが、人生を旅にたとえた場合、ほとんどあらゆる物語について「僕(=主人公)の旅」と言ってしまえるわけで、「世界」というタイトルと同じように、物語を象徴するフレーズとしては決定打に欠けている感じがします。 内容については、まあ楽しく読めたと言って良いでしょうか。 評価を渋りたくなるのは、畳み方がやや唐突な印象だからです。たしかに、物語は緊張感があって退屈しませんし、最後にそれが緩和されて読後感も悪くないのですが、「友達の知り合い」という、近いんだか遠いんだか分からない人間が窮地を救ってくれるという展開は、どうにも評価に迷います。ぜいたくを言えば、彼は主人公が進路に迷って「屈んで」いた間に接点があった人物で、彼に殺されると思っていた主人公は「ああ、たしかに自分は彼に恨まれていても仕方ないことをしたからな……」と思うものの、逆に助けられて驚く、といった具合の展開があれば、主人公の悩みと事件が交差して、よりすっきりしたかもしれません。 文章についてまず申し上げたいのは、自主企画の概要欄に書いた様式は守っていただきたいということです。「やる?何をですか?」「頭が真っ白になった。殺し?その単語の響きはどこまでも恐ろしく、僕の胸を締め上げた」「一度友達でも誘って店に来ないかい?僕を通してくれれば安くするよ」 など、「?」の後に1マス空白を作るべきです。 Web小説では読者が書き手の技量を信用していませんので、様式を守り損ねて「あ、この人は基本も押さえてないな」とネガティブなイメージを抱かれることはあっても、「この人には信念があるんだな」などのポジティブなイメージを持ってもらえることはありません。つまり、様式を守らないでいることには損しかありません。作品を愛しているなら、修正をご検討ください。 文章については全体的にぎこちないと言うほどではないですが、所々気になるところはありますね。分かりやすい(指摘しやすい)のは序盤の箇所です。「社会が大きく変容し、僕の向かうべき先は無限にあるように感じられる。実際は選択肢はそれほどないのに、僕はその理屈の上での無限に圧倒され、動けないままでいるのだ」 主人公が大学三年生ということを素直に考えると、ここで言う「社会の変容」を直に経験したと言える年齢ではないでしょう。「働き方が多様化したこの社会では」や「能力次第でどんな職業にも就けるこの社会では」などの表現を検討しても良いかと思います。 「実際は選択肢は」は「実際の選択肢は」の誤植だと思いますが、「現実的な選択肢は」や「僕の手が届く選択肢は」といった表現の方が的確な気もします。 「その理屈の上での無限に圧倒され」は「上での」の「の」が不要ですが、そもそも「その理屈の上で」が表現としてぎこちない印象です。 ということで、多少の調整を加えながら、僕が書くなら、「能力次第でどんな職業にも就けるこの社会では、僕の前にも無限の可能性があるように感じられる。実際に手が届く選択肢なんてそう多くないのに、僕は無限の不確かさに圧倒され、動けないままでいるのだ」 といったところでしょうか。これはこれでぎこちない気がしますが、何かの参考にしていただければと思います。不確かさは「寄る辺なさ」、「僕の前にも無限の可能性がある」は「僕の前に無限の闇が広がっている」といった表現にしても良いかもしれませんね。 「罵倒」が長くなってきたので、とりあえずここまでとさせていただきます。 何か分かりにくい点があれば、遠慮なくおっしゃってください。この応援コメントに追記という形で書かせていただくつもりです。
自主企画「罵倒されたい作品」にご参加くださり、ありがとうございます。
企画の趣旨に則り、「罵倒」させていただきます。
まずタイトルですが、「世界」では漠然としすぎているように思います。キャッチコピーに「多様な世界」、紹介文には「様々な世界を描いた短編集」とありますが、そういうことは星新一のショートショートにも芥川龍之介の全集にもそれ以外の誰かの小説にも言えることです。
言葉を選ばずに申しますと、春雷さんがこの作品をどんな短編集だと捉えているのか、どんな読者にこれを届けたいとお考えなのか、さっぱり分かりません。春雷さんの作風も力量も知らない人が『世界』というタイトルと紹介文を見ても、何の興味も引かれないと思います。たとえばの話、内容は分からないにしても「人間と世界」や「僕と世界」、「いつか来るかもしれない未来」、「隙間時間で読めるブラックユーモア短編集」などのタイトルでも、「世界」だけよりはマシでしょう。短編の中に「これだ!」という自信作があるならそのタイトルを持ってくるという手もあります。とにかく、もう少し具体性のあるイメージ(もっと言えば春雷さんのセンスを感じさせてくれるフレーズ)を提示しないと、もったいないと思います。
で、本作『僕の旅』なのですが、これもタイトルに悩んだのかなという印象です。たしかに本文中にそういう比喩は出てきますが、他にも比喩があってぶつかっている状態ですし、タイトルとしては微妙というのが率直なところです。
身も蓋もないようですが、人生を旅にたとえた場合、ほとんどあらゆる物語について「僕(=主人公)の旅」と言ってしまえるわけで、「世界」というタイトルと同じように、物語を象徴するフレーズとしては決定打に欠けている感じがします。
内容については、まあ楽しく読めたと言って良いでしょうか。
評価を渋りたくなるのは、畳み方がやや唐突な印象だからです。たしかに、物語は緊張感があって退屈しませんし、最後にそれが緩和されて読後感も悪くないのですが、「友達の知り合い」という、近いんだか遠いんだか分からない人間が窮地を救ってくれるという展開は、どうにも評価に迷います。ぜいたくを言えば、彼は主人公が進路に迷って「屈んで」いた間に接点があった人物で、彼に殺されると思っていた主人公は「ああ、たしかに自分は彼に恨まれていても仕方ないことをしたからな……」と思うものの、逆に助けられて驚く、といった具合の展開があれば、主人公の悩みと事件が交差して、よりすっきりしたかもしれません。
文章についてまず申し上げたいのは、自主企画の概要欄に書いた様式は守っていただきたいというこ
とです。
「やる?何をですか?」
「頭が真っ白になった。殺し?その単語の響きはどこまでも恐ろしく、僕の胸を締め上げた」
「一度友達でも誘って店に来ないかい?僕を通してくれれば安くするよ」
など、「?」の後に1マス空白を作るべきです。
Web小説では読者が書き手の技量を信用していませんので、様式を守り損ねて「あ、この人は基本も押さえてないな」とネガティブなイメージを抱かれることはあっても、「この人には信念があるんだな」などのポジティブなイメージを持ってもらえることはありません。つまり、様式を守らないでいることには損しかありません。作品を愛しているなら、修正をご検討ください。
文章については全体的にぎこちないと言うほどではないですが、所々気になるところはありますね。分かりやすい(指摘しやすい)のは序盤の箇所です。
「社会が大きく変容し、僕の向かうべき先は無限にあるように感じられる。実際は選択肢はそれほどないのに、僕はその理屈の上での無限に圧倒され、動けないままでいるのだ」
主人公が大学三年生ということを素直に考えると、ここで言う「社会の変容」を直に経験したと言える年齢ではないでしょう。「働き方が多様化したこの社会では」や「能力次第でどんな職業にも就けるこの社会では」などの表現を検討しても良いかと思います。
「実際は選択肢は」は「実際の選択肢は」の誤植だと思いますが、「現実的な選択肢は」や「僕の手が届く選択肢は」といった表現の方が的確な気もします。
「その理屈の上での無限に圧倒され」は「上での」の「の」が不要ですが、そもそも「その理屈の上で」が表現としてぎこちない印象です。
ということで、多少の調整を加えながら、僕が書くなら、
「能力次第でどんな職業にも就けるこの社会では、僕の前にも無限の可能性があるように感じられる。実際に手が届く選択肢なんてそう多くないのに、僕は無限の不確かさに圧倒され、動けないままでいるのだ」
といったところでしょうか。これはこれでぎこちない気がしますが、何かの参考にしていただければと思います。不確かさは「寄る辺なさ」、「僕の前にも無限の可能性がある」は「僕の前に無限の闇が広がっている」といった表現にしても良いかもしれませんね。
「罵倒」が長くなってきたので、とりあえずここまでとさせていただきます。
何か分かりにくい点があれば、遠慮なくおっしゃってください。この応援コメントに追記という形で書かせていただくつもりです。