第4話

「は~~、体育だるすぎないですか?周さん」

「いえ、私は体動かすのは好きですから」

「じゃあ俺の分まで運動してきてくれ。俺はサボるから」

「だめです!この試合が終わったら出るんですよ!」


今は四時間目。ちょうど、お腹が空いてくる時間帯に体育があるという鬼畜っぷり。それに加えて、この時間帯に運動すると、午後までの体力が残らないため、できる限り動きたくない。


そんなこんなで出る試合を最後にしてもらい、最低限運動しようと試みたが、ちょうど試合が終わった周に捕まるという、もしかしたら試合より面倒くさいことが起きてしまった。


ちなみに今日は男女混合でバスケをしているからか、心なしか男子が張り切っている。一部生徒は俺のことを睨んできているが、あえて無視している。俺って案外策士かも?


まあ、お目当ての生徒はもちろん周。男子が思い切りアピールしまくっているが、周はそちらを見ること無く、俺との会話に集中してしまっている。男子連中、申し訳ない。


というか、最初の頃と比べてクラスの人の視線が、暖かくなった気がする。それに比べて他クラスのやつの生徒は怖いけど。


単純に言うと、サボっているところを周に見つかった、ていうこと。


「湊くん、バスケ苦手でしたっけ?」

「バスケに限らず、運動は嫌い。ていうか、周はバスケできるのか?」

「人並みには出来ると思いますけど」


そういえば運動神経抜群だった。噂によると、周と部活のエースが対決したら良い勝負になった、と聞いたことがある。ちなみに、周は経験のないスポーツらしい。


そんなこんなで周と談笑していると、タイマーの音が鳴り、試合終了の合図が出る。


「あ、終わったか。まじでめんどくせ~」

「頑張ってください!応援してますから!」

「お前に応援されると、視線がきつくなるんだよ…」


周に無理やり背中を押され、試合に出させられる。というか周さん、気軽に触らないでください!男子の視線で体に穴が開きそうです!


「あ、お前は周さんの彼女の!」

「え?お前は確か…」


見覚えがあるがなんとなく思い出せない顔。見るからに整っているが、どこか軽薄そうなこいつは……


「あ!ナンパ野郎!」

「野郎は余計だ!野郎は!僕はまだお前を認めてないからな!」

「いやだから俺は…」


否定しようとしたところで、合わせてほしいと言われていたことを思い出す。何となく面倒くさいことしか持ってきてないような気がしてきた。俺にも優等生の一面を見せてほしいです。


「この試合で僕は風花さんを惚れ直させ、僕のものにしてみせる!」

「あいつは誰のもんでもないだろ…」

「僕に取られるのが怖いのか!腰抜けめ!」

「何でめんどくさいやつとしか関われないんだよ…」


と、出きる限り冷静に返してはいるが、結構内心イラッとしている。一言ぐらい言ってやるか。


「ていうか、自分のものにして見せるとか言ってるけど、そもそもバスケできるのか?」

「ふん!僕はバスケ部の次期エースだぞ!出来ないはずがない」

「ふーん。次期エース、ね」


さすがにあいつよりは上手くないだろ、うわ、あいつの顔思い出したら吐き気してきた。


俺は運動が嫌い。だが、出来ないとは言ってない。特にバスケに関しては、無理やり外に連れられてやらされた。あの日々を思い出すと寒気がする。


ピーッと返しの合図が鳴る。お互いに礼をし、試合を開始する。


「僕を楽しませてくれよ?」

「はいはい。いーからあっち行け」


審判によってスローインがされ、試合が開始する。それなりに本気出して、ここらで諦めさせておくか。




♡♡♡



結論、めっちゃ本気出しました。途中から手加減するのがめんどくさくなって、こてんぱんにしてしまいました。


そのせいか、クラスのバスケ部はめちゃくちゃ勧誘してくるし、余った時間も試合させられるし、ナンパ野郎も諦めないしで、良いことひとつもありませんでした。


解放されたころには授業が終わり、クラスに戻ると周が、労りの声を掛けてくれた。


「頑張りましたねー、周くん」

「本気出そうと思った過去の自分を、思い切り殴りたいです」

「というかバスケ出来るじゃないですか。バスケ部の人よりも上手いと思いますよ?」

「ありがと。ありがたく受け取っておく」


伏せていた顔をあげると、褒めてくれた言動の裏腹に、どこか複雑そうな顔をしている周。


「?どうした周?」

「いや、湊くんの評価が上がるのは嬉しいんですけど、その分ライバルも増えそうで…」

「ライバル?俺はバスケ部には入らないぞ?」

「…今はそれで良いです」


周の言動の意味はよくわからなかったが、詮索する体力も残っておらず、スルーした。


久しぶりに体を思い切り動かした気がする。たまには体を動かすのも悪くないのかもな。


「周くん、さっきのバスケの試合の影響で、他のクラスからも勧誘が来ていましたよ?」

「…」


……前言撤回。もう二度と本気で運動しないと、心に決めた。ちなみに勧誘は寝たふりで全部無視しました。

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俺のラブコメ論を隣の美少女が自分の体を使って否定してくる! @1ya12ma2to

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