第3話

「如月~。今日日直出来るか?」

「え?けど俺明日ですよ?」

「いや~、今日の担当の生徒、学校休んじゃって日直無理だから。頼めるか?」

「出来る限りやりたくありません!」

「じゃあ二日連続でいいか?」

「喜んでやらせていただきます」




♡♡♡




「はあ~、ていうか日誌って何書けばいいんだよ…」

「あれ?湊くん、今日日直でしたっけ?」

「いや、今日の日直の人休んだらしいから、俺がやってる。だから明日はやらなくていいらしい」

「そうだったんですか」


そう言うと前の席に人がいないことをいいことに、前の席に座り振り返って談笑しようとする周。


今は放課後、日直といっても日誌を書き先生に出すことぐらいしかすることはない。各教科の手伝いとかは、ちゃんと係の人がやってくれているし。


「最後の行まで1日の感想書かなきゃいけないって、そんなに色濃い日常過ごしてないけどな~」

「確かに書くことあまり多くないですよね」

「じゃあ周はどうやって書いたんだ?」


参考がてら聞くと何とか思い出そうとする周。こういう姿も華になるから男子にモテるんだろうね。


「授業のことだったり、休み時間のこととかですかね」

「周のやつ見てもいい?」

「良いですよ」


たま~に一、二行書かずに出したりする生徒がいたり、おんなじ内容を言い方変えて書いたりしている人がいるけど、優等生(?)の周はそんなことしないだろう。


そう思いつつ、前のページを開き周が日直をやった日を探す。うわ、先生ちゃんと全員にコメント返してる。意外と真面目なんだよな、あのせんせい。


「あっ、あった。じゃあ参考にさせてもらいますかね」

「参考になるかはわかりませんけど…」


さてさて、それでは感想を読ませてもらいますかね。


「えーと、『今日は一日中湊くんと過ごしました』、まあ日常のことも書かないと埋まらないよな」

「なかなか埋まりませんよね」

「その次が、『湊くんが教科書を忘れたので、一緒に教科書を見ました』、あれ?また俺?『体育のバスケで湊くんが隅でサボってました』って、俺のことしか書いてないじゃん!」

「いや~、思い返したら私、湊くんとずっと過ごしていたので!」


というか俺の体育の過ごし方まで書かれてるし!あれはサボりじゃなくて休憩だから!


「それにしても俺のこと書きすぎだろ!先生もコメントに困って『如月のことはよくわかったから、授業のことについて、もっと知りたいな』って書いてんじゃねーか!」

「私の日常について、感想を書きました!」

「悪意がない分質が悪いんだろうな…」


周のを参考にしようとしたが、一切参考にならなかった。また一から考え直しじゃねーか!


何とか今日1日のことを思い出そうとしていると、


「湊くんも私のこと書いてみれば良いんじゃないですか?」

「なんで俺も周のこと書かなきゃいけないんだよ」

「湊くんに私以外の友達いましたか?」

「いや!い……ないわ、周以外の友達」


何でだろう。ただ日誌を書きたいだけなのに、ものすごく悲しい気持ちになってきた。


「けど、やり直しさせられないかな~」

「大丈夫だと思いますよ?私もやり直しさせられませんでしたし」

「…まあ、何も書かないよりかはましか」


俺はそう言い、シャーペンを動かす。周の文章に似せようとしたが、美少女に文章を直され続け、終わったのは五時が過ぎたくらいだった。


というか、俺がものすごく周のこと好きみたいな文章にさせられたけど、大丈夫だよな?周さん?


ようやくOKをもらい日誌を出したが、当たり前のようにやり直しを食らったし、何だったら次の日も日直やらされました。


優等生にしか許されないこともあるんだなと、良い教訓(?)を学ばさせてもらいました!周、許さんからな~!!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る