第2話
「風花ちゃん?僕と付き合ってくれない?」
「え?ええっと…」
ラブコメでは定番の告白シーン。展開の最初に持ってきても良し、最終回に感動の終わりに持ってきても良しの、読者と物語が1番盛り上がるところでもある。
まあ片方があまり乗り気じゃないところだけ、俺の知ってるラブコメと違うんだけどね。
「あの、難破さん。何度もお断りしていると思うんですけど…」
「僕と付き合ってくれるその瞬間まで、僕は絶対に諦めないよ!」
ヒロインはもちろん周 風花。異論無し。それに対して、主人公?は難破 翔(なんぱ かける)。美人な女子に見境無くナンパをする軽薄ごみくそ野郎である。
ナンパ野郎はいつも通り、というかここ最近ずっと周にアピールし続けている。
ことごとく周は否定し続けているが、諦めの悪いことでも有名なナンパ野郎は簡単には諦めない。
かといって俺が首を突っ込むこともないので、今日は一人で帰ろう。じゃあな周。口は明日聞いてやる。
「私に彼氏がいるといっても諦めませんか?」
「え!」
「えっ」
あぶないあぶない。そそくさと帰ろうとしていたのに振り返るところだった。
冷静に考えれば周に彼氏がいないことは大体わかるだろう。ていうか彼氏いたら俺と関わっていられないだろうし。
そんなことを考えながら再び足を動かそうとした。
だが、さっきまで感じなかった隣に誰かがいる気配と猛烈な嫌な予感。
「この人が私の彼氏です!」
「えっ?」
「「「え~!!」」」
今度はナンパ野郎だけじゃなくて、クラスの全員にも驚きの声が上がる。
はあ~~~。いつになったら俺の平穏な時間は帰ってくるのでしょうか?
♡♡♡
自分の席に座り、向かい合うようにナンパ野郎が座る。爆弾投下した張本人は、肩と肩がぶつかるくらいの距離で俺のとなりに座っている。近づけば近づくほどナンパ(以下略)の視線が険しくなるのであまり近づかないでもらえますか?周さん?
「で、俺はなんでここにいるのでしょうか?」
「それは君が僕の愛しの風花さんの彼氏だからだよ!」
「いや俺はそんなんじゃ…」
一切関係ないことを伝えようとすると服をつままれ、「話を合わせてください!」と周に叱られる。
「どこでどうやって付き合えたのどっちから告白したのどこまでことは進んでいるの?!」
「あの落ち着いてください!」
暴走しかけのナンパを、なんとか落ち着かせもう一度質問させる。
「聞きたいことは一つずつにしてください」
う~んと頭を悩ませるナンパ。というかナチュラルに呼び捨てしているかもしれないけど、俺とナンパに関わりはない。
「本当に君たちは付き合っているのかい?」
「はい!付き合ってます!」
「は、はい。つ、付き合ってます……」
そう答えるがなかなか認めようとしないナンパ。だが、付き合っている証拠がないかわりに付き合っていない証拠もない。これで終わりだよし早く帰ろう帰ろうそうしよう。
「じゃ、じゃあキスしてみてよ!キ~ス!キ~ス!キ~ス!」
「えぇ…、なにいってんのこいつ」
「き、キスですか?!」
一人は頭おかしくなったように同じ言葉しか発しないし、もう一人はその単語で何を想像しているのか耳まで真っ赤だし、対して彼氏(仮)の俺は早く帰りたいで状況がごちゃごちゃになっている。
「どうしたの?!出来ないの?!彼氏彼女なのに!」
「いや全国のカップル全員がキスしているというわけではないですからね?」
「で、出来ます!」
「はい?なにいってるの周さん?」
暴走しているのは一人じゃなかったみたいだ。ていうか、結構ヤバイこと言ってない?
「落ち着け周。ここは初々しいカップルを演じよう。そういうほうが説得力あるんだから」
「というかいつもしてます!」
「いや本当になに言ってるの周さん?!」
いやマジでヤバイことになっている。俺のファーストキスと周のファーストキスの重さは違う。こんなところで使わせるわけにはいかないのに、本人はもうする気満々だし!
「じゃあ僕の前でしてみなよ!そしたら諦めるからさ!」
「いやお前はどんな立場なんだよ……」
いきなりガシッ!と肩を捕まれ、周と向き合うような姿勢にさせられる。というか本当にヤバイかも、何か周の目が獲物をとらえようとしている獣の目をしているんだが!
周に捕まれているのもあるし、だんだんこっちに迫ってくるためもう逃げられなくなっている。
距離が20cm、10cmと近づいてきて本当に覚悟しなくいけなくなってる。周のお父さんお母さん本当にごめんなさい。腹を切ってお詫びします。そしてお母さん、僕は一歩大人になります。
整った顔立ちが、すぐ目の前まで来ている。このままキスしてしまうんだな、と思った次の瞬間、
「早く帰れよ~お前ら。というか難破、お前部活は?」
「あっ、そ、そうだ!急がないと!」
見回りに来た先生の声に救われる。ナンパは足早に教室を出ていった。二度とクラスに来んな!
いつの間にか捕まれていた肩は解放され、暴走していた本人のほうを見ると、今までの行動を思い出していたのか、さっきと比にならないくらい、赤くなっていた。そんな美少女に俺は一言。
「周さん」
「は、はい」
「三日間近づくの禁止」
「え~~!!」
三日間で許してしまうのは、俺の弱さなんでしょうか、神様?
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