俺のラブコメ論を隣の美少女が自分の体を使って否定してくる!
@1ya12ma2to
第1話
『ね、ねえ!きょ、今日さ、一緒にお弁当食べない?』
『お、俺でいいんだったら食べよう、一緒に…』
そこで二人はお互いに恥ずかしくなり、顔を背けてしまう、なかなか素直に慣れない二人の両片想いラブコメ。
うむ、今日も俺の妄想ラブコメは絶好調である。
そんなことを考えながら、俺は自分の席で一人ラブコメを妄想している。
あ、勘違いしないでほしい。俺は決してヤバイやつではない。ただ他の人よりラブコメを愛しすぎた結果、読むにあきたらず、自分で考えてしまうくらいのラブコメ中毒者なだけである。
朝、静かな教室の1番後ろの席で一人妄想に耽っているのは俺、如月 湊。
だが、そんな平和な、静かな俺の日常に一旦終わりが告げられる。
「湊くん、また変なこと考えてましたね?廊下からもニマニマした顔が丸わかりでしたよ?」
「変なとはなんだ変なとは!俺はごく普通に妄想ラブコメに興じていただけだ!」
「ごく普通の高校生はラブコメを妄想したりしないような気がしますけどね…」
俺に話しかけてきたこの美少女の名前は、周 風花(決して彼女ではない) 。吸い込まれそうになるほど綺麗な黒の眼、朝日でキラキラと輝くほど手入れが行き届いた美しい銀髪、この世の全てのものより柔らかそうな、少し血気づいた唇、誰もが羨む、そして触りたくなる完璧なプロポーションといった、完璧すぎる美少女。
天は二物を与えずとは言うが、俺や他の人の分まであげてませんか神様?
こんな美少女とラブコメ世界ではモブみたいなポジションの俺が関わっている理由は、単純に中学からの同級生である。
当時から美少女だった周は、今はどんな人とも話せるスーパーコミュ強であるが、昔はどちらかといえば口下手なほうであった。
どんどん人と関わるうちに慣れていったのか、俺だけではなく他の人たちとも関わるようになり、みるみるうちに今の周 風花が出来上がった。
当時(唯一?)の友達である俺はいまだに、他の人とはあまり話せないというのに…。弟子が巣だっていく悲しみに似た感情を感じることもあったが、今はそんなことは感じない。
とまあ、周の紹介はこんなものでいいだろう。この紹介を聞いて周を悪く思う人はいないはず。
だがそんな美少女に、俺は苦言を呈したいことがある。それは……
「湊くん、私のこの前話した考えは認めてもらえましたか?」
「ふん!誰が認めるか!ラブコメ好き100人に聞いたら100人全員が否定すると思うぞ!」
「ど、どうしてですか!そんな暴論私が認めません!」
「暴論じゃない!これは世の理である!」
読者の方々、少し置いてきぼりにしてしまってすまない。
順を追って説明すると、この前話した考えというのは、『モブとヒロインは付き合うこともある』、というものだった。
『モブとヒロインは付き合わない』というラブコメ論のもと、日々妄想ラブコメを頭のなかで考えている俺にとっては暴論でしかなかった。
俺と周の熾烈な言い争いは1日では収まらず、通話をしながらお互いの意見を言い合った(うるさすぎて怒られたのはここだけの秘密)。
結局お互い一歩も引かないまま今に至る。
「どうして頑なに認めてくれないんですか?」
「じゃあ逆に聞くけど、俺と周が付き合う可能性があると思うか?」
俺は一つの説としてこの説明をしようとした。だから周の何を傷つけたか分からないが、周は涙目で、
「な、無いんですか?可能性?」
俺の考えのまま発言するのであれば、ここは無い、とはっきり言わなければいけない。
だが、周は美少女。それプラス涙目上目遣い。こんな聞かれ方をされてしまうと……
「な、無いとは言いきれないけど?」
「はい!言質取りました~!」
「な?!」
彼女を泣かせないために発言したはずが、それも作戦の内だったらしい。周が手に持っているスマホからは俺が先程発言したばっかりの『な、無いとは言いきれないけど?』がずっとリピートされていた。
「いやお前その手は卑怯だろ!」
「自分が欲しいものに対して、私は貪欲なことを忘れていましたね、湊くん!」
「ほ、欲しいもののためだったら嘘もつけるというのか……」
あの頃の純粋な周を返してほしい。自分の発言に後悔していると、
「誰も嘘とは言ってませんけどね」
「?何か言ったか?」
「いいえ!」
小声でなにかを言っていた気がしたが、問い返すとはぐらかされてしまった。解せぬ。
続けて、勝ち誇った顔で、
「いつかその考えが間違っていたって認めさせてあげるので、覚悟してくださいね?」
と言った。
何だか嫌な予感が拭えないが、なんやかんやいって、この美少女には敵わない。
これは俺の考えを完全に否定され、最終的にモブとヒロインが付き合うまでの物語である。
♡♡♡
「ま~たイチャついてるよあの二人。俺が後押しして付き合わせようかな」
「余計なことすると殺すぞ」
「怖っ!」
この学校の近くのコンビニでは、よくブラックコーヒーが売れるとかなんとか。
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