山吹


室町時代後期 関東地方で活躍した有名な武将に太田おおた道灌どうかんという人が居た。これはその道灌どおかんが若かったころの話だが・・


急な雨に降られた道灌どおかんが、みのを借りるべくある小屋に入ったところ、若い女が何も言わず山吹の花一枝を差し出したので、道灌どおかんは娘の真意もわからぬまま怒って立ち去った。

**みのとは、かや・すげなどで編んだ、雨や雪を防ぐ外衣のこと**


後でそのことを家臣に話すと、それは、”七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき”という古歌を踏まえたもので、娘は貧乏で道灌様にお貸しするみの一つもございませんということを、山吹に託してそっと告げたのでしょうとさとした。それを聞いた道灌どおかんは自らの無学を恥じ、それ以来和歌に精進しょうじんし、立派な歌人になったと言われている。

娘は”実の一つだに”と、”みの一つだに”を掛けたうえに、それを山吹の一枝で表したと言うのだから、少しばかり出来過ぎた話だ。 


*(クリックで写真に飛び、クリックで戻ります)*

https://kakuyomu.jp/users/minokkun/news/16816927862598841157


まあ、これは知る人ぞ知る有名な話だが・・ 

その山吹が今年は もう咲いていた。標高400mほどの場所にある道の駅の駐車場でのことだ。私はこの道の駅の山掛け蕎麦が食べたくて立ち寄ったのだが、コロナで客足が減り、蕎麦屋は当分の間休業らしい。 せっかく来たのに食べる物が無いとは まさに身の一つだに無きぞ悲しきである。


山吹は北海道から九州まで見られる落葉性の低木で、万葉集の歌に詠まれるほど古くから日本人に愛されてきた植物だ。低山や丘陵地などで見かけたり、庭木として栽培されたりしている。春に咲かせる鮮やかな黄色い花は、一度みると忘れられないほど印象的だ。

・・七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき・・


https://kakuyomu.jp/users/minokkun/news/16816927862598841157

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