第4話:自問自答
王歴327年2月6日:南大魔境・クリスティアン視点
ディーターが俺を苦しめようと止めを刺さなかったのは運がよかった。
お陰で何とか生き延びる事ができた。
だが、大きな問題が起きてしまった。
「さて、クリスティアンの頃の感情が希薄になってしまったが、どうする?
クリスティアン時代の恨みを晴らすべきか、前世の価値観で動くべきか?」
1度死んでしまった影響なのか、前世の記憶を思い出してしまったのだ。
「クリスティアンとしての恨み辛みよりも、若返った身体で好きに生きたい気持ちの方がとても強いんだよな」
前世の終盤が独居老人だったから、独り言を口にするクセがついてしまっている。
「クリスティアンはまじめだったから、この世界でやれる魔力鍛錬は全部やっていたし、武芸も学問も習得できるモノは全部学び終わっている。
俺の若い頃とは大違いだな」
だが、努力家のクリスティアンも、俺が知っている前世のアニメやラノベの魔力増幅法は試していない。
煮詰めて魔力を濃くする方法は試した事がない。
煮詰めた魔力を圧縮してムリヤリ魔力器官に蓄える事も試していない。
「全部やれるか、おもしろいな」
魔力ではなく、魔力器官自体を圧力釜のような丈夫なモノだと想像した事がない。
魔力器官の中が亜空間で、無限に魔力を蓄えられると想像した事がない。
「ここまでできてしまうと、ちょっと怖くなるな。
だが何よりも恐ろしいのは、俺が生き延びている事だ」
俺は毒をもつスライム、蜘蛛、蛇を生きたまま食わされた。
クリスティアンの常識では、その状態で生き延びられるはずがない。
意識がなくなる前にヒールスライムを食べたが、あの程度で全ての毒を解毒できるはずがないのだ。
「なによりもおかしいのは、斬り落とされたはずの両手両足がある事だ」
奇跡的な確率で、あのヒールスライムに複数の解毒能力があったとしても、斬り落とされた両手両足の再生させるような治癒力があるはずがない。
他人の手足を再生できるような奇跡の治癒力を持つのは、伝説の聖女だけだ。
「何か理由があるとすれば、『悪食』のスキルしかないよな」
前代未聞のスキルが『悪食』だ。
本来なら史上初めてのスキルは国をあげてどのような能力なのか調べるのだが、今回はバーバラのバカが暴走したので調べられなかった。
だからどのような能力があって、どのような制限があるのか全くわかっていない。
「厳しい発動条件があると思うが、本来なら死ぬような状況で生き残れている。
それどころか、失ったはずの四肢を治癒もしくは再生させる事ができている。
キッチリと検証していきたいが、その前にここを生きて出ないといけないな」
ギャオオオオオ!
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