第5話:大山猫系獣人

王歴327年2月6日:南大魔境・クリスティアン視点


 ギャオオオオオ!

 ブッモオオオオオ!

 ミャオオオオオ!


 オーク族だ、オーク族とキャト族の争いだ。


「ここはあたしたちのナワバリだよ、さっさと出て行きな」


「じゃかましいわ!

 今日からこの一帯は俺たちオーク族のナワバリだ!」


 ゴオオオオオ!


 オーク族がとんでもない勢いで大こん棒を振り回してやがる。

 キャット族は上手く逃げているが、少し押されている。

 あの姿形から判断すると、恐らく大山猫系の二足歩行獣人だな。


「これでも喰らいな!」


 上手い、素早い動きと鋭い爪で頸動脈を掻き切った。


「その程度でオーク族が死ぬかよ!」


 バカな、俺の知っているオーク族とは強さが違うぞ。

 やはり本や伝聞の情報にはウソや間違いが混じっているのだな。

 うのみにして戦っていたら、俺は死んでいた。


「だったら、もう1発喰らいな!」


「何度やっても、てめえら程度の爪で俺たちホブオークが斃されるわけねえだろ!」


「だったらこれでどうだい!」


 上手い、鮮やかすぎて目を奪われる。

 右手の爪でホブオークの左頸動脈を掻き切った後で、左足の爪で同じ場所を掻き切りやがった。


「グッガァ」


 なんだと、掻き切られた左頸動脈を無視して、大山猫獣人の脚を折りやがった。

 

「「「「「ニコーレ」」」」」


 周囲で他のオークと戦っていて大山猫獣人が一斉に動揺している。

 毛色と雰囲気から考えると、血族のようだな。

 このまま見て見ぬふりをして逃げるべきか、助けに入るべきか?


「ブッモオオオオオ!」


 雄しかいない、他種族の女を拉致して子供を産ますオーク族の味方はできない。

 獣人であろうと、女性が襲われているのを見て見ぬふりをするのは恥だ。

 クリスティアンの時なら見逃せただろうが、今の俺には絶対にできない。


「ギャッ、ブッモオオオオオ!」


 剣はもちろん槍も弓もないが、幸い手頃な石はたくさん拾っておいた。

 クリスティアンが投擲を学んでいてくれて助かった。

 どんなスキルを神から授かっても大丈夫なように、何でも学んでいたからな……


「ギャッ、ブッモオオオオオ!」

「そいつを殺せ、ホモサピエンスの雄などこの場で喰い殺してしまえ!」


「じゃかましいわ!

 オークかホブオークか知らないが、人間様がブタごときに負けるわけねえだろう!

 ブタはブタらしく、泥場でノミとりでもしてやがれ!」


 4体のオークの片目を潰してやったが、全く平気な顔をしてかかってきやがる。

 クリスティアンの投擲は、命中精度はいいのだが、オークを即死させるだけの力がないようだ。


「ホモサピエンス、これでお前は終わりだ!」


 このままだと大こん棒に頭を叩き潰されて死んでしまう。

『悪食』スキル、俺の足を引っ張るだけではなく少しは役に立つところを証明しろ!

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